「フェイクグリーン」ブームの仕掛け人・日下部有香が語る「インテリア雑貨」としての可能性

壁面緑化や植栽で商業施設を彩ってきた人工観葉植物(フェイクグリーン)に近年、異変が起きている。

プロ仕様の花材ツールは切り花を選ぶように、誰でも気軽に1本単位で購入できるようになり、フェイクをグリーンの1ジャンルとしてインテリアに取り入れる人が増殖中。

その仕掛け人、フェイクグリーン専門店「いなざうるす屋」オーナー日下部有香氏に話をうかがった。

デコレーション花材は、いかにしてインドアグリーンへと浸透していったのか? 知れば知るほどおもしろい、フェイクグリーンの世界。インテリアをもっと自由にするヒントがここにある。

フェイク≠にせもの
正確には「インテリア雑貨」です

©YUJI IMAI

──ここ数年、インテリアショップを中心に「フェイクグリーン」を扱う店が増えているように感じます。インドアグリーンにフェイクを選ぶ人が増えている証拠だと思うのですが。

 

フェイクグリーンに対する意識は変わりつつあります。ホームセンターや100円均一ショップなども含めて全体的に質が上がり、いいものが買えるようになってきましたよね。

「造花」ってことで敬遠していた人たちも観葉植物のようにグリーンを主体にして自分の家に取り入れてみよう、というキッカケが増えてきたんだと思います。

 

──もとはプロ仕様のデコレーション花材だったわけですよね。それをなぜ、インテリアに持ち込んでみようと?

 

私、本当はリアルな植物がめちゃくちゃ好きなんです(笑)。だけどすぐ枯らしてしまう。植物に囲まれた生活に憧れがあるのに上手く育てられない。そんなジレンマを解消してくれたのがフェイクグリーンでした。

雑貨屋でたまたま目にした1本を部屋に飾ってみたんです。枯らす心配もない。仕事でヘトヘトになって帰ってきた夜でも、部屋に入るとグリーンが目に飛び込んでくる。たったそれだけで心が満たされていきました。

 

──つまり、フェイクがリアルの代わりをしてくれたんだ。

 

そう。充足感を味わえた。

フェイクで飾った部屋に友人たちを招くと、とても反響がよかったんです。そんな部屋の様子をブログでアップするようになってから、徐々にのめり込むようになっていきました。そうして、2013年に「いなざうるす屋」をスタートすることに。

 

──当時まだフェイクグリーンは一般的ではなかったんじゃないですか?

 

“人工観葉植物”という呼び名で販売している通販はありましたが、多くは店舗装飾用だったり、贈答用としてのものだったように記憶しています。インテリアツールという感覚はまだほとんどありませんでしたね。

 

──ここ数年で「フェイク」に対する人々の意識に変化を感じる?

 

「フェイクってにせものでしょ?」といった反応も、正直まだあると思います。ですが、フェイクグリーンのイベントを通して、実際に手に触れていただける。そういった会場や講演などの機会をいただくたび、お客さんにはこう伝えているんです。

フェイクグリーンは「インテリア雑貨」としての位置付けですよって。

 

──フェイクグリーンは「フェイク」にあらず?

 

本物の植物ではないわけですから「にせもの」と言われるのは仕方ない。ですが、そもそもが「雑貨」としての位置付け。リアルに取って代わるという話しではなく、リアルでは適わない魅力がフェイクグリーンにはあります。生きている植物とフェイクグリーンを同じ視点で語る必要って、そもそもないんじゃないでしょうか。

 

──花材ではなく「雑貨」という認識とは、意外でした。

 

インテリア雑貨の1ジャンルだと捉えています。だって、そのくらいの位置付けの方がもっと気軽に、自由にインテリアに取り入れられると思いません?

インドアグリーンをすべてフェイクに置き換えよう、という話ではありません。リアルな植物と上手く使い分けてグリーンを楽しむ。日照の問題だったり、育てるのが難しい……そんなときにフェイクを取り入れると、インテリアの自由度がさらに広がるはずです。

自然界に存在しない植物も
フェイクならでは

©YUJI IMAI

──ところで、フェイクグリーンのなかに聞いたことのない植物名のものがありますよね。

 

そうそう。フェイクには本物には当てはまらない植物が数多く存在します。それらしいんだけど、じつはフェイクが生み出した植物っていう(笑)。メーカーさんや問屋さんで「これ、何のフェイクですか?」と聞いても、ルーツがはっきりしないものがたくさんあるみたいですからね。

 

──聞いたことあるようなそれっぽいグリーン……絶妙ですね。ディフォルメもありなんだ。

 

多肉にしてもサボテンにしても、もちろん大半は本物に寄せてつくられたものですが、なかにはこうしたリアルでは存在しないグリーンもある。そこがまたいいんです。そういった曖昧さというかフランクな部分も、私がフェイクを「雑貨」と呼んでいる理由です。

 

フェイクっぽさはすべて隠す!
それがフェイクの飾り方

©YUJI IMAI

葉の光沢感や斑の雰囲気はリアルそのもの。

──初めてフェイクグリーンを買うとき、どういうところをポイントに選べばいいのでしょう?簡単なアドバイスをください。

 

葉っぱの裏側はどうしてもフェイクっぽさが残っていたりします。こういった部分をみなさん気にされますが、そこを隠すように飾ればいいんです。逆に表側を見ると、葉につやつやと光沢感があるものがあります。たとえばモンステラやゴムの木などがそう。これは、きちんとリアルな葉を再現してつくっている証拠です。

ただ、一概に光沢感があればいいというものでもありません。リアルな植物をどこまで追求しているかもチェックポイントですね。

また、「枝もの」には茎や葉にワイヤーが通っているものが多いので、それらを選べば曲げたりねじったりとアレンジが効くのでオススメです。

 

──飾るときのコツなどあれば教えてください。

 

買ったばかりのフェイクは、葉も茎もしゅっと真っすぐ整っているものがほとんど。これをそのまま飾ってしまっては、いつまでたってもフェイクらしさが抜けません。葉を広げ、茎をねじ曲げ、自分で表情をつくっていくんです。いかにリアルに近づけていくかが腕の見せどころですから。

多かれ少なかれ、どんなフェイクにだって“にせものっぽさ”はあります。だけど、見せたくない部分は飾り方ひとつで隠せる。こういった効果的な見せかたやテクニックを知らない方が、じつは意外と多いんです。そこをもっと知って欲しい!

 

──効果的な見せかたとは、具体的にどんなところ?

 

たとえば、どんなフェイクの葉にも表と裏があります。きれに葉脈まで再現された葉の表側に比べると、裏って意外とチープなつくりに見えてしまうもの。でも、フェイクにおいてはこれでOK。なぜかといえば、裏側は見えないように工夫をすればいいわけですから。

 

──要するに、見えない部分はどうでもいい、と?

 

大げさに言えば、どうでもいいです(笑)。部屋に飾ってみて自分の視線に入ってくる角度でいちばんバシッといい具合にハマっていれば、見えていない部分に関してはどうでもいいっていうことです。

せっかくお気に入りのフェイクを買っても、こうした工夫なく飾っては「やっぱりフェイクはにせもの」で終わってしまいます。フェイクグリーンの特性を理解しながら、最大限に見せてあげないとモッタイナイ!

 

──ということは、買ってきた後が肝心なんですね。

 

いや、もうホントーにそうです! ワイヤーが入っている部分は曲げる、広げる、暴れさせる。そうやって自分の好きなように表情をつくってあげたり、色味や葉っぱの違うかたちのものを組み合わせたり、遠近感を出したり。フェイクしかできないケアをすることでリアルっぽさを出す。そこがおもしろいんですよ。

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──長さのあるものの場合はどうでしょう?

 

目線より高い位置から垂らすのがポイントです。水やりの必要もないんですから、大胆に。

ダイニングテーブルで食事をするとき、目線は自然と部屋の上の方になりますよね。そこに入れてあげるんです。アイビーやモス、シュガーバインなどつる性のフェイクは、高い位置にレイアウトしてみてください。長いつるを活かして、意図的に目に入る高い場所に配置する。

 

──ほんのちょっとのアイデアがフェイクを生かす。奥が深いですね。

 

ほかにも、我が家ではフェイクの近くにあえて剥製チックな動物を飾っています。どちらもフェイクなんですが、カモフラージュ効果とでも言うのか、よりグリーンも動物も本物っぽく見えてくるんですよね。

あれこれ飾ってみて、試行錯誤のなかからそういった発見に出会うのがまた楽しいんです。フェイクを使ったインテリアなら、誰にでもできる。こういう気軽さがあります。

©YUJI IMAI

──今更ですけど、「フェイクグリーン」という呼び方に抵抗感はないんですか?

 

私の中では、まったくありません。むしろ、「フェイクグリーン」という言葉に内在するネガティブな印象をなくしていきたいと思っています。

「フェイクファー」や「フェイクレザー」って、世間的にも認知されているファッションにおいて確立したジャンルじゃないですか。フェイクグリーンもそれと同じ感覚で考えてもいいんじゃないでしょうか。

 

──日下部さんの“フェイク愛”がビシビシ伝わってきます!洋服のコーディネートと同じで、結局フェイクは楽しんだもの勝ちなところがありますね。

 

植物が育てられなくても、フェイクを使うことでインテリアを自在に彩ることができる。それによって暮らしがより充実してきます。そうすると、毎日がもっと楽しくなる。

だからフェイクグリーンには、インドアグリーンとしてたくさんの可能性があるんだと思います。

日下部有香

フェイクグリーン専門店「いなざうるす屋」オーナー。飾る場所、飾る人ごとに個性が出るフェイクグリーンを雑貨感覚で使うことを提唱している。イベント出店やワークショップも精力的に行う。HP:いなざうるす屋、Instagram:@inazaurusu_ya

Top image: © YUJI IMAI
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