坂田ミギーの水曜連載「ミレニなのでアル」第二回【恋愛(というか失恋)編】
一週間のなかで、きっといちばん憂鬱な水曜日に読んでほしい、クリエイティブディレクター・坂田ミギーの水曜連載。数々の広告賞を受賞しながら「アラサー・独身・彼氏なし」の身の上に絶望して世界一周の旅に出た彼女が感じた、知った、気づいた、アレやコレ──。
「失恋」して「死にたい」なんて......
平安時代の貴族かよ、と
先日、30歳の誕生日を迎えた女性をお祝いしていたら「結婚したいけど、恋ができない」と、真剣な表情で相談されたんですよ。なんで恋ができないのか聞いてみると「前の彼氏が忘れられない。彼には新しい彼女がいるのに、私は次の人が見つからない。死にたい」のだそう。
なかなかの「よくある話」ですね。私も同じ症状を患ったことがあるので、よくわかります。
しかしながら、こういうときに「それなりの人だったら、誰でもいいから付き合ってみる」という対症療法はおすすめできません。
「それなりの人」と65点くらいの満足度で付き合っていると、別れるにも一緒になるにも決め手に欠けるので、ずるずると何年も延命措置しつづけて、時間を無駄にするパターンに突入しがちです。新しい恋が運び込まれそうになっても、病床に延命処置している「65点」が横たわっていると、心とフットワークが重くなるのでやめておきましょう。
では、こういう症状になったとき、どうしたらいいのか。せっかくひとりでいる時間ができたのだから、「魂のレベルアップに努める」のがいいのではないかと思います(わー、急にスピリチュアル!)。
まわりにいる、いい感じのカップルや夫婦をよく見てみましょう。
じーっと観察していると、彼ら・彼女らは「同じレベルの人間同士」ということがよくわかります。ことわざに「破れ鍋に綴じ蓋」という言葉がありますが、これは「どんな人にもふさわしい伴侶がいる」という意味です。似通った人、つまり同じレベルの人間同士が、よき伴侶になりやすいというのが私の考えです。
この場合の「レベル」は、顔面偏差値や保有資産額といったハード面のスペックだけに基づくものではありません。むしろ性格や頭の良さ、人徳、立ち振る舞いなどのソフト面こそが重要となる人間としての総合的なレベルです。
すてきな人は、すてきな人と結ばれますし、しょうもない人は、しょうもない人と一緒になるのです。まわりに思い当たる人はいませんか? あなたの場合はどうでしょうか?
自分の経験を振り返ってみても、私が小生意気で性格のわるいアバ◯レ糞ビッ◯(ひどい)だったときは、当時の恋人たちも、そのレベル相応の人々ばかりでした。
まぐれですてきな人とお付き合いできても、自分のレベルが相手のレベルとあわないので、結局はお別れすることになってしまうのです。
つまり、もしあなたがすてきな人と一緒にいたいと思うのであれば、家で缶チューハイの500ml缶を飲んで寝ている場合ではなく、レベルアップが必要なわけです。それは単純な「自分磨き★」として、外見をきれいにすればいいだけの話ではありません。
自分の力でしっかり立てているか。どんな相手にも敬意をもって接することができているか。困った人がいたとき、迷わず助けになれるか。大切なものを、大切にできているか。
内面から、魂のレベル上げをしてこそ、すてきな人にふさわしい相手となれるのです。
ひとりでいられる時間は貴重です。むやみに「それなりの人」と、一時的にさびしさを紛らわすより、まずは自分のレベルアップのために動いてみてください。そのレベル上げは、どんなことがあっても誰にも奪われない、一生の財産になりますから。
そうすれば、元恋人との別れがどんなにつらくても、いつか「あの人と一緒にならなくてよかった」と思えるときがきます。むしろ「あのとき別れてくれてありがとう」とすら言いたくなるはずです。
レベルアップしたあなたにふさわしいすてきな伴侶は、きっとこの地球上に存在します。
失恋で死にたいと歌うのは、平安時代まででいいです。痛いのは、いまだけ。大丈夫。
最後に。人を愛することに善悪はありません。
けれど、日本社会において不倫はハイリスク、ノーリターン。だから、かしこいみなさんはやめておきましょう。約束だぞ。
1982年、福岡出身。広告制作会社、「博報堂ケトル」を経て独立。デジタル、雑誌、イベントやCMなどの垣根を越えたキャンペーンのプランニングやディレクションを担当。数々の話題の広告を手がけ、フランス、アメリカ、シンガポール、タイなどの由緒ある広告賞を受賞する日本を代表するクリエイターのひとり。
『旅がなければ死んでいた』
アラサー・独身・彼氏なしの三重苦を背負った女が、仕事と恋愛に疲れて家を引き払い住所不定となり、
バックパックひとつで世界を旅するノンフィクションストーリー。
著:坂田ミギー 発行:KKベストセラーズ