パワハラ相手は「合法的」にぶっとばせ/坂田ミギーの水曜連載「ミレニなのでアル」第十四回
一週間のなかで、きっといちばん憂鬱な水曜日に読んでほしい、クリエイティブディレクター・坂田ミギーの水曜連載。数々の広告賞を受賞しながら「アラサー・独身・彼氏なし」の身の上に絶望して世界一周の旅に出た彼女が感じた、知った、気づいた、アレやコレ──。
セクハラ、パワハラ、モラハラ......
そんな輩は合法的に成敗じゃ!
ハラスメントに遭わずに生きていくことはむずかしい。年齢、性別問わず、ふとしたときに突然、ハラスメントはやってきます。
どんなことでも嫌がらせはダメです。
「自分がされて嫌なことはしない」「相手の気持ちを考えましょう」って、幼稚園生でも知っています。ということは、ハラスメントしちゃう人は幼稚園生未満かな?
……もうね、しこまたハラスメントされまくって生きてきたわけですよ。パワハラも、セクハラも。相手はそんな悪意あってやってるわけじゃないって、わかっています。だからこそ、許しがたい。
無邪気に他人を傷つけてんじゃねーぞ!(怒っているとき真顔になりがち)
基本的に、ハラスメントは地位や権力が強い立場の人がします。なので弱い立場の人間は、被害を言い出しにくいんですよ。
だって、告発した場合、発注者と受注者の関係だったら「仕事がなくなってしまうかも」と考えるし、上司と部下の関係だったら「ここに居づらくなってしまうかも」と考えます。
例によって、わたしもいろんな被害に遭ったものの告発しなかったことのほうが多いです。「自分が我慢する」や「自衛する」を選択すれば、風波が立たなくていいですから。正しさは、ときに人を救わない。
かなしいことです。
でも、あるときから「なんでダメなことをしている人間が大手を振って歩いているのに、こっちが自衛したり我慢したりしなきゃならんのだ。ふざけんなー!」と思うようになり、明らかなハラスメントには「大人の戦い方」で応戦するようになりました。殴り合いしても仕方ないですからね。
こういうときは弁護士さんに頼むのがいちばんですよ。合法的に、社会的に、一発殴り返してやりましょう。
その一例として。少し前、おどろきのパワハラに遭ったんです。見積もり出して、数ヵ月間チームで作業して、もうすぐ納品!の時期になってから、大企業の発注者B氏から、ひどい態度で「やっぱりあの見積もり高いわ。半額しか払わない」と言われました。
えーーっ! マンガだったら目ん玉ビヨーンと飛び出るくらいにビックリですよ。このご時世に、まだこんなやべぇ生物いるの?
※発注後の値切りは、下請法で禁止されています。
周囲に聴き取りをしたところ、これまでもB氏は同様のパワハラ値切りを繰り返してきた人間であることが発覚。「なんで野放しになってんだよ!」と思いつつも、もうこれは、わたしの番で駆逐しておかなきゃいけないと決意しました。
B氏が所属する会社からは、いくつかお仕事をもらっていたので、揉め事を起こすとお仕事を失う可能性もあります。
でも、自分がやるしかない。だって、放っておいたら、また被害者が出るじゃないですか。
覚悟を決めて、証拠のメールやら経緯書やらを用意して、弁護士さんに相談し、手はずを完璧に整えたのちに、B氏の上司に「御社B氏に下請法違反の懐疑があります。弁護士と相談し、然るべき措置を取らせてもらうことにしました」と連絡。
幸いB氏の上司は話が通じる相手だったため、訴訟問題にする前に解決できました。
結果、見積もり通りの金額を支払ってもらえ(当然ですけど)、B氏からの謝罪、B氏を担当から外してもらうことで決着。以降、B氏の姿を見かけることはありません。めでたし、めでたし。
ハラスメントには毅然とした態度で「社会的に一発殴り返す」。これができれば、いちばんいいと思っています。
でも、無理をする必要はありません。戦えるパワーが自分にあるときだけ、戦えばいいです。もし立ち向かえずに受け流してしまっても、あなたがわるいわけではないのです。わるいのは、ハラスメントをする人であって、あなたではないのだから。
B氏のようなパワハラは、ドーピングと一緒です。自分の実力以上の成果を得るために、まわりを不正に酷使するから。「パワハラしたからこそ」の成果だということは、しっかり隠蔽して、ちゃっかり手柄を自分のものにします。クリーンでも、公正でもない。そういうところもドーピングと同じだと思っています。
2020年、スポーツマンシップに感動するであろうこの年。たとえスポーツはできなくても、社会人として最低限、パワハラ・ドーピングには手を染めず、公正にやっていきたいものです。
関わる人たちが全員しあわせになれるような、そんなお仕事ができるようになりたいと思っている今日このごろ。
そのためにも、これからもハラスメント人間は、全力で成敗していくぜ!(合法的に)
1982年、福岡出身。広告制作会社、「博報堂ケトル」を経て独立。デジタル、雑誌、イベントやCMなどの垣根を越えたキャンペーンのプランニングやディレクションを担当。数々の話題の広告を手がけ、フランス、アメリカ、シンガポール、タイなどの由緒ある広告賞を受賞する日本を代表するクリエイターのひとり。
『旅がなければ死んでいた』
アラサー・独身・彼氏なしの三重苦を背負った女が、
仕事と恋愛に疲れて家を引き払い住所不定となり、
バックパックひとつで世界を旅するノンフィクションストーリー。
著:坂田ミギー 発行:KKベストセラーズ