坂田ミギーの水曜連載「ミレニなのでアル」第五回【見た目編】

一週間のなかで、きっといちばん憂鬱な水曜日に読んでほしい、クリエイティブディレクター・坂田ミギーの水曜連載。数々の広告賞を受賞しながら「アラサー・独身・彼氏なし」の身の上に絶望して世界一周の旅に出た彼女が感じた、知った、気づいた、アレやコレ──。

「呪いの魔術」じゃなく
「祝福の魔法」を......

容姿、気になりますよね。わたしもです。

この前、試着室で「この服、太って見えるなぁ」と思っていたら、じつは「太って見える」ではなく、実際に太っているだけだったのです。ああ怖い! 稲川淳二さんの怪談話よりも現実が怖い!

このごろ企業も著名人もメディアも「自分の美しさに自信を持ちなさい」と声高に叫んでいますけど、わたしのように「自分が美しい」と思えたことのない人間にとって、その強要はキツいです。このわたしの、どこを美しいと思えと?(鏡を拳で叩き割りながら)

洗顔料で知られる「ダヴ」が2017年におこなった調査によると、日本の10~17歳の女性の93%が「容姿に自信がない」と回答しています。もし調査対象者が20~30代になったからといって、この大部分が「容姿に自信!」に変わるとは到底思えません。

日本人女性の多くが、容姿に悩んだ経験があるのではないでしょうか。

なんで自分は容姿に自信がないのかなぁと考えてみたところ……学生時代にスクールカースト上位の女子たちから「かわいくもないのにオシャレしやがって」と難癖をつけられたり、成人してからもグループ内に同じ名前の女性がいたとき「かわいくないほうの◯◯」と呼ばれていたりといった、とるにたらない小さな「呪い」が無限にあるせいなんですね。

わたしは世界一周旅行を機にブログをはじめたのですが、つい最近まで顔出しはしていませんでした。

理由は単純で、わたしの顔面よりも、旅の中身を見てほしかったからです。いままでの経験から、顔写真を載せれば「うわっキモい顔w」とか「ブサいのに調子のんな」と言われることが目に見えていましたし。

いままで現実世界でも散々言われてきたのに、インターネット品評会に顔出しなんてしたら、もうどんなこと書かれるか……ろくなことにならないのだけはわかっていました。

なのに、ブログの書籍化が決まったとき、担当編集者から「顔出ししたほうが売れるはず」と説得され、意を決して顔写真を公開。そのおかげでメディアに取り上げてもらったり、イベントに出演させていただいたりしていますが、案の定、外見に対する誹謗中傷が出てきたんですよ。

ほらもう、なんなの、この世界。

この歳まで、ずっと「お前の容姿はダメ」と呪われつづけているのに、「自分の美しさに自信」なんて思えないですよ。そんな超合金メンタル、もちあわせてないです。

みんなね、他人の外見をとやかく言いすぎ。

心のなかでなにを思っても自由だけど、それを口に出したり、ネットに書き込んだりするのはよくありません。

著名人のSNSに「太った」「痩せすぎ」「老けた」「劣化した」とか書き込む人々を見かけますが、あれは超ダサいです。なんでダサいかって「自分は他人の外見をとやかくいってもいい立場」だと勘違いしていることが丸見えだからです。そんなことが許される立場の人なんて、この地球上にいませんからね。

どんだけえらいんだよ。悪魔かよ。悪魔だってもっと品格ある言い方するぞ。

あなたもかつて、容姿について呪いの言葉をかけられたことがあると思います。だからといって、あなたも同じように誰かに呪いをかけるのはやめませんか。そんな「呪い」にあふれた世界、生きづらいじゃないですか。

どうせなら「祝福」しましょうよ。

これから誰かの外見について話すときは、ポジティブに。そして、先天的のものには言及せず、本人の意志や努力によって後天的に身についた美しさについて、積極的にほめてください。

たとえば、鼻の高さや顔の大きさ(先天的)には触れず、ファッションのセンスや所作の美しさ(後天的)をほめてみる。それはお相手が選んで獲得したものなので「祝福」にできますから。

こうしてみんなが祝福しあう世界になれば、きっと誰しもが「自分の美しさに自信」をもてるようになるはずです。

そんなわけで、きょうもおたがい適度に「祝福」しあいましょう!

坂田ミギー/クリエイティブディレクター

1982年、福岡出身。広告制作会社、「博報堂ケトル」を経て独立。デジタル、雑誌、イベントやCMなどの垣根を越えたキャンペーンのプランニングやディレクションを担当。数々の話題の広告を手がけ、フランス、アメリカ、シンガポール、タイなどの由緒ある広告賞を受賞する日本を代表するクリエイターのひとり。

©2019 NEW STANDARD

『旅がなければ死んでいた』
アラサー・独身・彼氏なしの三重苦を背負った女が、
仕事と恋愛に疲れて家を引き払い住所不定となり、
バックパックひとつで世界を旅するノンフィクションストーリー。
著:坂田ミギー 発行:KKベストセラーズ

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