100年後の「住まい」とは。佐々木俊尚の「#しなきゃなんてない」を聞いてみた

「もっと世の中の枠や当たり前に捉われず生きたい」という想いは、多かれ少なかれ誰もが感じたことのあるものではないだろうか。

現在、Twitter上では著名人から一般ユーザーまで、さまざまなスタイルの「#しなきゃなんてない」が投稿されている。

株式会社LIFULLの呼びかけにより始まったこの一連の投稿は、誰もが無限の可能性のなかから、自分の生きたいLIFEを実現できる世の中を目指して、人々のリアルな声から表面化していない社会課題を抽出し、ステークホルダーと協力しながら解決に向けて取り組もうという同社の取組みだ。

呼びかけ開始から一週間弱で、4000件以上の投稿やリツイート、いいねなどの反響が生まれている。

 

ジャーナリストの佐々木俊尚も、こんなふうに既成概念へのギモンを抱き「#しなきゃなんてない」を投稿したひとりだ。

東京・長野・福井の3つの土地で多拠点暮らしをしている理由や、「決まった家に住まなきゃいけない」という、我々日本人にとって “当たり前” のような暮らしの考え方について聞いた。

「家はひとつじゃなきゃいけない」
なんてない

——「多拠点暮らし」とは、具体的にどんなライフスタイルなんですか?

佐々木:月の2週間は東京にいて、1週間は長野の軽井沢、残りの1週間を福井の美浜町っていうところで過ごしてます。テレビとかラジオとか、東京じゃないとできない仕事も残っているので。

軽井沢にも拠点を持つようになって、9年ですね。アウトレットのあたりは賑わってるんだけど、道1本入ると使われてない別荘も多くて、とにかく静か。家にいても誰も来ないから、原稿を書いたりすることが多いかな(笑)。デッキがあるから、そこでアウトドア用の椅子に座って仕事してます。

福井では、美浜町役場と関係人口を増やす取り組みをしたり、NPOをやってる友人と空き家対策について連動したりと、わりかし忙しい。多拠点活動アドバイザーなんていう肩書きももらったりしてね。

 

——そもそも、多拠点暮らしを始めたきっかけは2011年の震災だったとか。

佐々木:それまでは、200平米くらいある東京の家に、妻と犬しかいないっていうめちゃくちゃ無駄な暮らしをしてたんですが(笑)、家がひとつしかないことに不安を感じたんです。震災のあとで、ちょうど首都直下地震も話題になっていた頃で。

仕事部屋もなかったので、緊急避難できる場所として札幌、伊豆、仙台とかいろいろ探しました。だけど犬がいるから飛行機はつらい。結果的に、災害が少なくて、東京からのアクセスもいいから移住者も多い軽井沢にしたんです。東京24区って言われるくらい別荘族も多いし、調べてみると賃貸もけっこうありました。

 

——福井へはどういうきっかけで?

佐々木:福井って首都圏からの交通の便が良くないから、起業率が高いんですよね。若者が街を出ずに、地元で独立することが多い。取材で何度か足を運ぶうちに友人が増えたり、妻も陶芸の仕事で通ってたから、毎回ホテルに泊まるより、安い家賃で住めるならそちらのほうがいいんじゃないかと。

いま住んでいるのは、海まで30mくらいにある築110年の古民家をリノベした物件なんですけど、「クリエイター イン レジデンス」っていう行政の空き家利活用プログラムで住まわせてもらっているので、無料なんです。

 

「定住するのが常識」
なんてない

——いわゆる拠点すら持たない、アドレスホッパー的な暮らし方はどう思いますか?

佐々木:中心人物になってる市橋正太郎くんともわりと仲良くしてるんだけど、彼らから感じる “進化” がおもしろいなって。「家を持たない暮らし」自体は高木新平くんあたりから始まって、7〜8年くらい前からやってることだと思うんだけど、当時は「さすがに半年やるとつらいっす」というような感じだった(笑)。

でも、市橋くんとかは「全然、大丈夫っす」と。昔より圧倒的に身体的にも心理的にも抵抗が下がってきてるよね。ゲストハウスやコワーキングスペースのインフラも整ってきたし、Wi-Fiや電源もある。コストも下がってきた。

 

——そういうスタイルに憧れる人にとって、経済的な理由がネックになるケースはありますか?

佐々木:やっぱり仕事によりますね。ただ、リモートワークやワーケーションがうまくできない理由に「会議があるから」ってのはよく聞く話(笑)。ただこれも、ARでその人が浮かんで見えるようになったり、もう少しテクノロジーが進化したら変わってくるんじゃないかな。あとは、副業禁止規定とかね。

 

——「移動生活を求めるのは人間の本能」という見方も?

佐々木:もともと人類は移動生活者だったわけで、アフリカ大陸を出てから世界をグルっと旅してきた民族の末裔が我々です。だから、アドレスホッパーはむしろ本能に近いんじゃないかな。

家の話でいうと、ヨーロッパとかは特にそうなんだけど、近代は公共住宅が中心だったんです。国や自治体が住まいを用意して、賃貸する。

ただ日本の場合は、戦後焼け野原になってしまって、住宅難になった。とはいえ国家予算は重工業を優先しないといけない。その結果「申しわけないけど、住宅は自分たちでどうにかしてくれ」と。それが “持ち家神話” になっていくんです。

クルマを買って、イエを買って、サラリーマンの人生が完成する。それがリーマンショックと震災を経て、だいぶマインドセットが変わってきた。同じ頃、世界的に見てもアメリカではタイニーハウスムーブメントが起きてたりね。

 

——「移動の時代」へと入っていくわけですね。

佐々木:SNSが普及したことの意味は大きい。あとはLCCの存在。それによってオーバーツーリズムのようなマイナス面もあるんだけど、それだけ人が自由に行き来できるようになった。

ヨーロッパの移民難民の問題には、もちろんシリアも関係しているけど、みんながスマホを持っていて、母国の人と連絡を取りながら移動して、仕事を探しているような状況でもある。移動のハードルが下がってきたんだよね。

国内でも、昔は少し田舎に引っ越しただけで「都落ち」みたいな言い方をされたけど、Facebookでずっと繋がれるし、むしろ地方への移住を求める若い世代が増えているような状況だからね。

 

——とくにSNSネイティブの世代はナチュラルですよね。

佐々木:どちらかというと、将来的には「移住より移動だ」って思ってるんです。まだ時間はかかるだろうけど、どこかに定住するっていう考え方がもはや終わりつつあるんじゃないかな、と。

僕のような「定住×3」ですらなく、100年後には、移動しながら暮らすのが当たり前になるんじゃないかな。

 

——なるほど。今日は貴重なお話をありがとうございました。

自身も「決まった家に住まなきゃ、なんてない」という想いで多拠点生活をされている佐々木俊尚。話を聞いていく上で、モビリティのような既成概念に捉われない生き方や暮らし方がよりリアルに感じられた。

 

さらに彼以外にも、ハッシュタグ「#しなきゃなんてない」では、さまざまな意見が投稿されている。

 

西村創一朗さん(複業研究家/HRマーケター)

 

ENOさん(フォトグラファー)

 

駒下純兵さん(ラブグラフ代表)

 

—— 自分の価値観と、社会の価値観との間に「違和感」を感じることはないだろうか。それをあなたの「#しなきゃなんてない」としてTweetしてみてほしい。それが社会を変える力になるかもしれない。

→詳しくはコチラ
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