【保存版】アルジェリアの道ばたから。「羊肉の煮込み、クスクス添え」のつくり方ー佐々木俊尚
エッセイストの玉村豊男さんが書いた『料理の四面体』という本に、アルジェリアをヒッチハイクしていて若者たちに食事に誘われるシーンが出てくる。
若者たちは道ばたで料理をしている。炭火のコンロにアルミの鍋をかけて、オリーブ油をどぼどぼ注ぎ、ニンニクを小刀で削ってたっぷり一個分を油の中に落とす。そしてぶつ切りにした骨つきの子羊肉を無造作に鍋に放り込むのだ。本から少し引用しよう。
「青年はその全部を放り込んだあと、鍋ごと揺さぶってオリーブ油を均等に肉片にからめながら炒めた。そして肉の表面に焦げめのついたころ、真っ赤な唐辛子の粉をかなりの量、上からバサバサと振りかけた。これは乾燥させた赤唐辛子を臼で挽いて細粉にした、あちらの市場でよく売られているもののようであった。独特の香気のあるこの調味料はアルジェリア料理に欠かせない。そしてもう一度鍋を揺すってよく混ぜ合わせると、次のさきの袋からよく熟した真っ赤なトマトを三つ四つ取り出し、ヘタは手でもぎとって小川に捨て、トマトはそのまま鍋の上で手で握り潰した。褐色の指の間から真っ赤なトマトの汁がほとばしり落ちて羊肉を染める」 (『料理の四面体』中公文庫)
この煮込み料理がとても美味しそうなので、普通に手に入る食材で似たようなものをつくってみた。使った食材は羊のラム肉とジャガイモ、タマネギ、ニンニク、トマト。今回は生のトマトを湯むきしたけれど、ホールトマト缶でもかまわない。そしてスパイスはクミンシードとチリペッパー。それから付け合わせに、クスクスも買ってきた。
【用意する具材】・羊のラム肉・ジャガイモ・タマネギ・ニンニク・トマト・クミンシード・チリペッパー・クスクス・オリーブ油・塩
まずニンニクを潰して、クミンシード、オリーブ油と一緒に鍋で弱火で炒める。ジュクジュク言ってきたら、ラム肉を加え、スライスしたタマネギも加え、皮をむいてひとくち大にしたジャガイモも加え、さらに炒める。油がまわったら、トマトを潰して加えて煮込む。水は要らない。最後にチリペッパーと塩を振って味つけしてできあがり。
クスクスは顆粒ぐらいの大きさのパスタで、北アフリカあたりではご飯やパンのかわりによく食べられている。乾燥食品なので長期保存できるし、作るのも超簡単なので、常備しておくととても便利。小さな鍋にクスクスを入れ、同じ分量の熱湯を注ぎ、オリーブ油を少し垂らして、蓋をしておくだけ。10分ぐらい放置すると、軽くておいしいクスクスがもうできている。
クスクスを深めのお椀に入れて、羊の煮込みを豪快に盛りつけて、ガッツリ食おう。羊とトマトはとってもよく合う。