ミュージアムグッズ愛好家・大澤夏美さんの「絶対的お気に入りのペン」5選
もちろん「かわいいだけ」で買ったっていい。
でもこの記事を読み終わる頃、きっと「かわいい」のひとつ向こうへ視点がいくはず!
お気に入りのミュージアムグッズのペンとともに、博物館とそれの奥深い関係性について語ってくれたのは、ミュージアムグッズ愛好家の大澤夏美さん。
「博物館の “財産”とされる展示品や収蔵品、そして建築。これらを知り尽くし、どうにか伝えたいという気持ちがちゃんとグッズに反映されているか。その点に着目して5つ選んでみました」
なるほど。すでに着眼点が違います。それでは大澤さん、偏愛たっぷりのミュージアムグッズ・ジャーニーに連れてって!
札幌在住。大学時代はメディアデザインを専攻、修士論文もミュージアムグッズについて論じちゃった筋金入り!ミュージアムグッズを紹介しているnoteも更新中。(https://note.com/momonoke)
01.
三菱一号館美術館の「ペインター色鉛筆」
これぞ伝え方の妙!
作家のストーリーを「たった6色で」教えてくれる色鉛筆
一見、ただの色鉛筆のセットに見えますよね?違うんですよ。
コンセプトは、この美術館に収蔵品があったり展示されたことなどがある9人の作家を選び「彼らの “色”というものを6色の色鉛筆で表現する」というもの。100色の色鉛筆の中から、作家のことをよく知っている学芸員さんが色を選んでいるんです。モネだったらこの色、ボナールだったらこの色、と。
つまりここでいう“色”というのは、そのままの意味でもありつつ作家の特性やイメージのこと。6色をもちいて、たとえばゴッホのセットからは「南仏のあの時代の色を表しているんだな」と感じさせてくれます。その作家の作品や時代背景を心得た学芸員さんが、伝えたいイメージをこの色鉛筆セットに集約させているんですよ。作家のストーリーを、学芸員さんと自分が「6色の色鉛筆だけ」で共有することができる。この伝え方、めちゃくちゃロマンチックだと思いませんか?
02.
日本科学未来館の「問いかける鉛筆」
遠い遠い未来のことを思って
今自分がいる場所をちょっと考えさせてくれる鉛筆
名の通り「科学技術の観点から世界の未来を考え、語り合う」というコンセプトを持ち、わたしたちの未来はどうなっていくのか?ということを展示や収蔵品でつねに問いかけている博物館です。館長は、宇宙飛行士であり科学者の毛利衛さん。
六角鉛筆のすべての面に「問い」が書かれているこの鉛筆。「人はどうして宇宙にあこがれるんだろう?」「どんなに親しい人にも知られたくないことがあるのは、なぜだろう?」など、本質的なことを自分に問いかけてくれます。いわゆるバトル鉛筆(懐かしい!)のシステムでちょっと転がしてみると、あれ?私なんでこんなことで悩んでいるんだっけ?といい意味で自分の小ささに改めて気づいたりして。
私のやっていることは誰かに届いているのかな?みんなのハッピーに繋がっているのかな?と、未来を思い浮かべながらちょっと考えさせてくれる鉛筆なんです。
03.
国立民族学博物館の「トーテムポール鉛筆」
文化を残すってどういうこと?
そんなことを誰かと考えるきっかけになる鉛筆
鉛筆とはいえ侮れません。民族学や文化人類学などに関する収蔵品を集めている博物館なので、小さいながらトーテムポールの表現が正確なんです。ちゃんと学術的につくられていて、これも文化を正確に伝えるためのひとつの媒体であることがよくわかる一本(台紙の羽を切って鉛筆にはめるとよりリアルなトーテムポールに!)。
もちろんちゃんと実物も収蔵されていて、それを観て少数民族の暮らしや彼らとの共生することついて考えたり、どうやって文化を残していくか?そもそも“残す”ってなんだ?などの議論が生まれたりして......。ひとつの文化を鉛筆に落とし込んで、みんなで考えるきっかけにしようと思いが伝わってきます。
ちなみにこちら、かれこれ10年前にはもう売っていたのでなかなかのロングセラーです(笑)。
04.
横須賀美術館の「ピクトグラムボールペン」
きたる2020年、
日本のミュージアムは世界の人々をどう迎える?
それを自分なりに読み解いていくボールペン
金沢21世紀美術館や青森県立美術館ができたあたりからでしょうか。ブランドイメージを博物館や美術館の分野に取り入れていくことについて考えさせられるようになりました。館内のピクトグラムやサイン計画が重要視されてきて、収蔵品や展示品だけではなくロゴマークなどのサインも、博物館の財産であることが認識されつつあります。
横須賀美術館もそういったメッセージを体現しています。建築はもちろん、海に面していてとても素敵な美術館なのですが、とくに推したいのは館内のピクトグラムをプリントしたボールペン。ちょうどこれからオリンピックを迎えるというタイミングもありますし「自分たちの美術館、博物館は、これからどうやって多様な来館者にひらいていくのか?」という問いがサイン計画だけではなくグッズにまで落とし込まれていて。それを自分なりに読み解いていくのがまた面白いんですよね......(笑)。
05.
伊丹市昆虫館の「鉛筆」
学芸員さんのプライド、
そして最上級の「愛」を見せつけられる鉛筆
この昆虫館すごいですよ。温室に蝶が放されていてオオゴマダラ(日本に生息している蝶の中で最も大きいとされている種!)が不意に指の上に乗ってきたりするところなんです。そこに売っている、昆虫の写真がプリントされた一見シンプルな鉛筆。
なにが普通じゃないかというとこの昆虫たちの写真、学芸員さんが自分で写真を撮っているんです。被写体になっている昆虫のキマった角度から「うちの昆虫はここがカッコいいから見てくれ!」という彼らの愛が伝わってきませんか? 写真の撮り方からめちゃくちゃ伝わってきますよね。プリントされているのが鉛筆なので、実際はめちゃくちゃ小さい。細部全然わからなくない?っていうくらいに小さい(泣)。
でもですね、展示で昆虫を観たあとはなぜかわかるようになるんですよ。ここがアレでこうなっているんだよねと。その瞬間、学芸員さんと昆虫たちへの愛を分かち合えた充足感につつまれるんです(笑)。