なぜかみんなハマってる「大人の塗り絵」おすすめ本まとめ
大人たちが、夜な夜な塗り絵を楽しんでいる。
あの浅田真央ちゃんだって、ハマっている。
それが、「大人の塗り絵」だ。
いや多分昼間に楽しんでいる大人だってたくさんいるけれど、とにかくこれだけのロングブームとなるからには、それなりの秘密があるはず。その秘密を、定番ばかりじゃない、独自の視点で選んだおすすめの塗り絵本と合わせて紹介してみようと思う。
例年よりおうち時間が増えるこの夏、クーラーの効いた涼し〜い室内で出来ること何かないかな?と探していた皆さま。それはこのマスクいらずのアクティビティ、「大人の塗り絵」かもしれません。
ところで、
「大人の塗り絵」って何?
①子どもの塗り絵より下絵が細かい
大人の塗り絵、「大人」とつくからには「子どもの塗り絵」にはない特徴がいくつかある。まずは、その下絵の繊細さ。世界の名画や、花や動植物などが組み合わされた複雑なデザインのもの、風景、曼荼羅など、子どもが塗るには少々難儀なものも多い。
しかし、大人用にも単純な線で描かれた比較的初心者向けの塗り絵もあるし、大人だからといって、子ども用の塗り絵をやってはいけないというルールもない。
シンプルな絵を、グラデーションのようにもうワンテクニック加えて塗ってみる、という楽しみ方も出来るので、そういった意味では「大人の塗り絵」は、初心者向けから上級者向けまで幅広く選選べる、というのが特徴かも。
②テーマがオトナ向け
レベルとともに、テーマにも非常に幅がある、大人の塗り絵。その世界感は、子どもの頃にはきっと理解できなかったよなぁと思うものも多い。
記事の後半でも紹介するが、例えば「数学塗り絵」。ボロノイ図、フラクタル、多面体、ベン図などを塗り塗り。そうして数学が持つ卓越した美を探求していくうちに、洞察力と想像力が培われます……と聞いても、5歳の頃なら「???」だ。
他にも、世界の「建築物」や「民族衣装」、「浮世絵」や「日本画」、極め付けは「ホラー」なんてテーマのものも。ページをめくるたびに船がタコのお化けに飲み込まれたり、ピエロやゾンビがでかでかと描かれている塗り絵は、子どもの頃に出会っていたら絶対夢でうなされていたと思う。
一方子どもの塗り絵といえば、一番に思い浮かぶのが「キャラクターもの」だ。しかし大人向けのキャラクター塗り絵もある。ドラえもんのような漫画・アニメキャラクターやサンリオ、ディズニーのキャラクターの塗り絵は、そもそも年齢に関係なく楽しめるが、大人用として、キャラクターが動植物や複雑なデザインと組み合わされた下絵を塗って楽しむものもあるのだ。
なぜ、みんなハマってる?
(そのメリットとは?)
①ストレス解消になる
忙しい大人たちがハマるからには、何らかのメリットがあるのでは?と損得を考えてしまう、悲しい哉それが大人ってもの。そんな訳で、大人の塗り絵をするといいことって何だろう?
まずは、ストレス解消効果があること。黙々と塗っていると作業に没頭することができるので、瞑想に近い状態になるとも言われており、日頃抱えている雑念を取っ払って心を安定させることが出来る。たくさんの色を使って塗ることで、自然とカラーセラピーの効果も得られるのだとか。絵柄が複雑なため、完成させた時の達成感や満足度もとっても高い。自己肯定感も高まるのかも?
②自律神経が整う
自律神経とは、緊張を司る「交感神経」と、リラックスを司る「副交感神経」の二つから成り、私たちの体のさまざまな器官に働いて健やかに保つ役割を担っているもの。
しかしそのバランスが崩れると、イライラしたり、逆に無気力になったり、体だけでなく心にまで不調をきたすようになってしまう。気温や気圧の変化にも影響されやすいので、特に季節の変わり目や、梅雨の時期には乱れやすいと言われている。
最近では、セルフケアの重要性もうたわれるようになってきたこの自律神経、じつは呼吸と密接に関係しており、大人の塗り絵は、没頭しているうちに呼吸が安定してくるので、自律神経も整うと言われているのだ。
おうち時間の暇つぶしに最高
天気が悪い日や、暑さ・寒さが厳しい時、そして、おうちで過ごす時間が増えた今、大人の塗り絵は暇つぶしにもってこいのアクティビティだ。
老若男女、好きな下絵と、色鉛筆やペンなどの色を塗るためのもの、この2点さえあればいつでもどこでも始められる。
色を変えたりグラデーションにしてみたり、筆で伸ばして水彩画のようにしてみたり、塗り方も無限にあるので、同じ下絵をコピーすれば何度でも楽しむことができる。
そして、飽きたらそこでやめればいい。
塗り絵は基本、一人で楽しむもの。やりたいと思った時にはじめて、気まぐれにやめたって誰にも文句を言われない気軽さもまた、魅力の一つかもしれない。
おすすめ「大人の塗り絵」7選
\目ん玉飛び出てギャー!/
1.『The Beauty of Horror Vol. 1』
ゾンビ、ピエロ、ガイコツ、お化け、タコ、ヘビ、コウモリ。
なんてワードが気になる人はこの塗り絵がおすすめ。なんでも巷では、手が震えると評判の塗り絵なのだそうだ。確かに一見「こんな塗り絵まであるのか!」と驚くけれど、グロテスクな下絵もしばらく眺めているうち、その芸術性の高さに感動すら覚えるはず。
額に斧を振り下ろされたゾンビ、落ちた首を持ってブランコする少女、鳥に目ん玉を食べられる生首……。ページをめくる瞬間、次は何が出てくるかな、とちょっとドキドキするのも楽しい。
が、子どもが見たら絶対夢でうなされる(か、夜一人でトイレに行けなくなる)内容だから、くれぐれも「大人だけ」で楽しんでほしいと思う。それも、できれば夜に……。
\猫、猫、猫、たまにおじさん/
2.『にゃんコロリアージュ』
猫好きで、自身も猫飼いのイラストレーター・クラミサヨさんの塗り絵は、アニメチックだったり、写実的だったり、いろんなテイストの塗り絵があって飽きないし、猫だけでなくテグーやカワウソ、魚、鳥、ロバ、ブタ、宇宙人から謎のおじさんまで、たくさんのキャラクターがそこかしこに現れてとにかく楽しい。
大体、「おじさん」の塗り絵なんてのが存在したこと自体に驚く。そして癒される。
ページ後半には、黒い紙に白い線で下絵が描かれている「黒ぬり絵」なるものが付いているのも見逃せない。黒い紙なので、ミルキーなかわいい色で塗ったり、淡い色の色鉛筆も使うことができる。つまりは「猫を白に」塗ることもできるのだ!(日本全国の白猫マニアの皆さん、これは事件です)
巻末に付いている下絵の解説も、絵本を読んでいるようなほっこりした気持ちになっておすすめ。
\塗ってるうちに、数学好きに!?/
3.『世界一美しい 数学塗り絵』
タイトルだけでは、その良さが一番伝わりにくいのがこの「数学塗り絵」かもしれない。
「数学」って聞いただけでアレルギー起こしちゃいますって人も少なくないけど、じつはそんな人こそ、数学の捉え方が変わって楽しめる一冊かも。
ボロノイ図、フラクタル、多面体、ベン図など、載っているデザインをとにかく難しいことは考えずに塗って楽しめばいい。そうしているうちに、それらに潜んでいる数学的な秘密が明らかになるのだとか。
秘密が明らかに……そう思うと、人生で初めて目にするような奇妙なデザインも、ワクワクしながら塗り進められる。
なんでも、私たちの目に映るあらゆるものには形と色があり、それらを正確かつ完璧に表現するのに一番適した表現方法は「数学」という言語を使うことなのだという。波だって、泡だって、花のタネだって、数学で表現できるのだ。
かの有名なレオナルド・ダ・ヴィンチも、芸術を志す若者に「数学の中にこそ物ごとを扱う真理が含まれている」と言い、芸術家になる基礎として数学を学ぶことを勧めたという話もあるらしいぞ。
数学も、アートなんだな。
\じつは猫好きが最高に楽しめる/
4.『国芳ぬりえワンダーランド』
歌川国芳といえば、江戸時代後半に活躍した浮世絵師。そんな彼の作品が詰まった一冊なのだから、当然浮世絵好きの人におすすめ……と言いたいところだが、じつは「猫好き」の人にはもっとおすすめしたい。
国芳は、無類の猫好きだったのだ。たくさんの猫と暮らし、懐に子猫を入れながら絵を書いていたという話もあって、本を開くまでわからなかったのだが、作品の中にも猫がそこかしこに登場する。東海道五十三次の宿場町でさえ、猫の姿で表現してしまう。
もちろん他にも妖怪や歴史物、謎かけ遊びのような不思議な絵など、浮世絵の常識をひっくり返すような作品ばかりで、眺めているだけでも楽しい。
実際塗ってみると、浮世絵は想像以上に塗りやすいなぁ!と感動する。
木版画の技法上、限られた線と色でさまざまな表現が工夫されている浮世絵は、じつは塗り絵のモチーフにはぴったりなのだとか。
\日常の中の“かわいい”がいっぱい/
5.『パリの小さなひみつ』
「色のないモノトーンのパリに、あなたが息を吹き込んでくれませんか?」
……といったような語りから始まるこの塗り絵は、パリのファッションやライフスタイルの中にあるモチーフが下絵になっているのだけど、とにかくセレクトがどれもかわいくて、パリで自ら雑貨ブランドを展開している著者の塗り絵だけあるなぁという感じ。
下絵の線が他の塗り絵本と比べてラフなのも、デザイン画のようでかっこいいし、普通の塗り絵本では出会えないような独特のモチーフがたくさん出てくるのもグッとくる(例えばブラとパンツの塗り絵とか、香水瓶とかクラシックカーとか)。
美しい建物の脇のおしゃれな通りを散歩して、アンティークショップで掘り出し物を探したり、街角のビストロで休憩したり、テラスから夕暮れ時のエッフェル塔を眺めたり……塗り絵に没頭しながらパリジェンヌの日常を擬似体験できる一冊。
\今ならこんな世界旅行/
6.『民族衣装のぬり絵ブック』
お次はハンガリー、ポーランド、ジョージア、トルコ、インド、中国など世界各国の民族衣装を楽しむ塗り絵なのだが、これがなかなかマニアック。
民族衣装だけではなく、その民族衣装を着る(着ていた)人たちが暮らす国や地域で使われているであろう小物や植物なども一緒に描かれていたり、巻末にはその民族衣装が作られた歴史的な背景や、彼らの暮らしぶりなどについての読み物もあって、いろいろな国や時代にワープしたような気分になれる。歴史や地理が好きな人にもおすすめしたくなる内容だ。
もちろんファッション好きにも。今の時代と場所に暮らしているだけでは到底思いつかないような柄や形の衣装が、次から次に現れる。眺めているうちに、流行りの洋服なんて画一的でつまらないものだなぁ、なーんて思ってしまうかも。
\カニと魚を塗りまくったその先に/
7.『海の楽園』
最後は言わずと知れた、大人の塗り絵ブームの魁的存在、ジョハンナ・バスフォードさんの塗り絵シリーズから、こちらをご紹介。
深い海の中の不思議な世界に、波間に遊ぶ人魚のように、ゆら〜ゆら〜と潜り込んで楽しむというコンセプトを持った塗り絵なのだが、絵の中に「ダイヤ」や「壺」、「鍵」、「魔法のランプ」などの海賊の落し物を探すというもう一つの楽しみ方もある。
登場するモチーフは、魚の大群や、海の生き物で構成された曼荼羅のようなもの、海中の楽園都市、さまざまなデザインの貝やクラゲ、人魚など。言うまでもないないが、「海の中」の塗り絵なので、なんだか涼しい気分にもなってくる。
個人的には、いろいろなデザインの「カニ」を塗りまくるページが最高であった。カニって、アートだな。
とにかく、塗れば気分は海の中。
暑い季節には、特にこの塗り絵は外せない!