ストレス覚悟の「大人の塗り絵」は、ちょっとヘビーな題材がポイント

すきま時間にどこでもできて、手軽で、しあがりの美しさに心も癒される。単純作業なのにどっぷりハマる没入感からか、「大人の塗り絵」が世界的な人気となったのは周知の事実。

でフツー塗り絵といえば、ペン画に合わせて、好きな色を好きな場所に塗っていくことでデザインしていくもの。けれど、この一冊はちょっと勝手が違うようだ。

塗ることで見えてくる
「気候変動」の現実

Climate Change Coloring Book」、これはカラーリングをしながら気候変動によって変わりゆく世界の現状を知る塗り絵ブック。なんだか学習教材のようだけど、制作者の意図はあくまで塗り絵だそう。

40ページ、20以上のアクティビティは、読むこと、塗ることの両面から気候変動の実態を知ることが目的だ。

そのための情報ソース(海洋大気局、環境保護庁、NASA、国立雪氷データセンターなど)も、すべてアメリカ各研究機関の最新のデータを元にしているというから、やっぱり、これだけでも教材として十分成立するではないか。

北極海氷の縮小化

北極海の氷面積が20年前に比べどれだけ減少しているかを、インドの国土とサイズを比較しながら示したもの。

温室効果ガスの排出量比較

アメリカ各都市の人口密度に比例して増え続けているのが、日常生活における温室効果ガスの排出量。そのレベルをペンの色を変えて示していく。

世界的な森林伐採

こちらは、過去四半世紀あまりで世界からどのくらいのスピードで森林が消え去っていったのかをイメージさせる塗り絵。円形に描かれた20のサッカー場を1分間でできるだけ早く塗りつぶしていくというもの。

温暖化がもたらす海面上昇、氷土面積の減少や、大気汚染の現状を塗り分けていく。だけど、目の前のカラフルなノートとは対照的にきっと現実を色で表すならば、モノトーンなんじゃないだろうか。

これではせっかくの気分転換も、逆に気が滅入ってしまう?な懸念も見越してのことだろう、そこにはちゃんと前向きな未来予想図も。悪影響だけでなく、気候変動を食い止める解決策にも焦点を当てたコンテンツが用意されているようだ。

本質的な問題を
ジブンゴト化するための塗り絵

政治レベルにおける科学的合意と、人々の共通認識のあいだには、まだまだ大きなギャップがある」こう主張するのは、制作者Brian Foo。彼はアメリカ自然史博物館でビジュアルデザインを担当する専属アーテイストでもある。

自然環境の変化を示したチャートや文献は、情報を収集するには役立つ。が、そこから一歩踏み込んで吸収し、根底にある問題を自分の中に落とし込むための施策。ブームが定着した「大人の塗り絵」に目をつけ、それを融合させたのがおもしろい。

言うまでもなく、本は100%再生紙、野菜ベースの無害なインクを使用したエコフレンドリーなプロダクトだ。最後にコレ販売予定だというから、興味があれば、ぜひKickstarterへ。

Licensed material used with permission by Brian Foo
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。