バンクシーの『Love is in the Bin』が、自身最高額で落札された意味

言わずもがな、現代におけるもっとも有名なアーティストであるバンクシー

なかでも、彼の代表作である『風船と少女』が、2018年のオークションでの落札直後にシュレッダーにかけられたのは有名な話。

半分が裁断された『風船と少女』は『愛はごみ箱の中に』と改題され、話題性とともに更なる価値を生んで、美術史に名を残すこととなった。

さて、少し前の話になるが去る10月14日に『愛はごみ箱の中に』がサザビーズにて再競売にかけられ、開始10分で落札された。

その額、じつに1858万ポンド。日本円にして約29億円という、バンクシー作品史上最高の価格となった。

ちなみに、それまで最高額だったのはシュレッダーにかけられた際の『風船と少女』で、当時の落札額は104万2000ポンド。

金額だけ見れば、その差は歴然。

「美術史においてライブ・オークション中に作られた初の作品」となり、新たな価値を持つ“介入芸術”のまったく新しい姿となったことがわかる。

そう、この作品は「壊された」のではなく「作られた」もの、と捉えられているのだ。

オークションに出品されることを想定して破壊したがために、更なる価値を持ってオークションに出品されるとは何とも皮肉な話だが、バンクシーはこの様子に「破壊の衝動は創造の衝動でもある」というピカソの名言を添えていることからも、本人の思惑通りと捉えることもできる。

真相は謎であり、サザビーズが「バンクシーは同じことを繰り返さない」と語る通り、再びこの形で作品が誕生することもなさそう。

アーティストが行うすべての行動がアートとみなされる節は賛否両論だが、それも含めて芸術の可能性は広がり続けているということ。

バンクシーはじめ来年もその先も、新しい創作の形が見れることに期待したい。

Top image: © Jack Taylor/Getty Images
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。