「世界一周した偉大なマゼラン」の影に隠れた「無名の英雄」
何気ない一日に思えるような日が、世界のどこかでは特別な記念日だったり、大切な一日だったりするものです。
それを知ることが、もしかしたら何かの役に立つかもしれない。何かを始めるきっかけを与えてくれるかもしれない……。
アナタの何気ない今日という一日に、新しい意味や価値を与えてくれる。そんな世界のどこかの「今日」を探訪してみませんか?
太平洋記念日
地球は、丸い。
「何を今さら」と思うでしょうが、冷静になって考えてみてください。宇宙に飛び出して地球を見下ろす術も、Google Earthもない時代、真っ直ぐに伸びる地平線や水平線をみて、それが大きな球体の一部であることを誰が想像できたでしょうか(※)。
さて、今日11月28日は、ポルトガル出身のスペインの冒険家であるフェルディナンド・マゼランが、艦隊を率いて、大西洋から南米大陸の南にある海峡(マゼラン海峡)を超えて太平洋へと到達した日を記念する「太平洋記念日」です。
1519年8月にスペインはアンダルシア州セビリアの港を出発した5隻のマゼラン艦隊は、西へ西へと航路をとり、約15ヵ月をかけて太平洋へ。その後、アフリカ大陸の南端を通過して、1522年9月、出発に地に帰港しました。
これにより、かつては哲学的な発想による仮説でしかなかった「地球球体説」が史上はじめて立証されることに。
世界一周を完遂した際、出発時は5隻だった船は途中離脱や沈没などにより1隻に、そして250名以上いたとされる乗組員はわずか15名ほどになっていました。そんな痛みを乗り越えて世界一周をはたした一行ですが、そのなかに指揮官を務めたフェルディナンド・マゼランの姿がなかったことをご存知でしょうか?
じつはマゼラン、立ち寄ったフィリピン・マクタン島で現地の住民にキリスト教への改宗を迫ったことで争いとなり、1521年4月に殺害されており、スペイン帰港時にはほかの乗組員が指揮をとっていたのです。
ポルトガル人でありながらスペイン王を説得して艦隊を任されたマゼランは、たしかに歴史にその名を残すに相応しい人物。
しかし、世界周航をはたした際の艦隊の指揮官は、おそらく多くの人に耳馴染みのないであろう「フアン・セバスティアン・エルカーノ」なる人物であり、正しくは「地球が丸いことを証明したのはエルカーノ艦隊である」ということを覚えてあげておいてください、今日だけは......。
※紀元前より地球球体説は一部の哲学者の間で唱えられていたが、あくまでも当時の説は哲学、天文学などから推測された仮説の域を超えていなかった。