530万円で買える、完全に陸空両用の「空飛ぶクルマ」
日常生活で空を飛ぶ未来は、かなり現実味を帯びている。
今やあの「ヒョンデ」が空飛ぶバスを発表し、日本企業からも日用の航空機が販売されるなど、近場への移動手段として「空」を目指すのは目新しいことではない。
メディアに多く触れているであろう読者の皆さんにとって、これらの「eVTOL」は見慣れたものとなりつつあると思う。
ただ、今回紹介する「Alef」社の発表は、それでも驚くに違いない。
アメリカのスタートアップ「Alef Aeronautics」がシリコンバレーで発表した、「Model A」なる機体。
一見、少し前衛的なだけの四輪車に見えるが、ホイールとは別に8機のプロペラが搭載されており、空を飛ぶことができるeVTOLなのだ。
そう、路上走行も空中飛行も可能な、文字通りの「空を飛ぶクルマ」が開発されたというわけ。
200マイル(およそ320キロ)の走行距離と、110マイル(180キロ)の航行距離が想定されており、もし実現すれば陸空とも実用的。
2025年には「通勤用途」として実機を発売予定。価格は30万ドル(4500万円ほど)ということで、まずはシリコンバレーの富裕層を顧客にしたいようだ。
披露されたModel Aのプロトタイプは、今後数ヶ月のうちにテストフライトが開始されるとのこと。
さらにAlef社は、より安価なモデルである「Model Z」を生産し、2030年には3万5千ドルで発売する計画も発表した(日本円にしておよそ530万円)。
ニュース(≒富裕層のお遊び)としては新鮮さを失いつつあるeVTOLも、これほど手の届きそうな価格となると、いよいよ身近に感じてこないだろうか。
さて、ここで問題となるのは「民間人が日常的に街の上空を飛び回る」ビジョンを打ち出している国や法律は、今のところないという点。
多くの人が購入できる可能性が見えてきたいま、現実の問題としてこれらを議論する必要に迫られている。
想像してみてほしい。街を歩いて空を見上げると、車のように雑多な鋼鉄の物体が往来している光景を。便利かもしれないが、その景色にもの悲しさを覚えるのは筆者だけではないはず。
ただ、景観を守るなんて倫理観よりも「利便性」を重視するであろうシリコンバレーのことだ。
近い将来、アメリカの空は現在のフィクションが語るところの“ディストピア”になっているかもしれない──。