アジアの「漢字」のコト
私は大学では中国語を勉強し、その後台湾に1年間留学をしていた。
自分が育った東京の次に長い期間を過ごしたこの地はやはり特別で、私の中では“第2の故郷”ともいえるような思い入れのある場所。
台湾での思い出話についても山ほど書きたいことがあるのだが、今回は台湾で話されている言葉と漢字のコトを書きたいと思う。
なぜかといえば、私が台湾に留学していたことを言うと、「あれ、じゃあ台湾語を喋れるの?」と言われることが非常に多いから。
台湾で公用語とされているのは、「台湾華語」という中国語。
これは、中国本土の公用語である普通話ととても近い言葉。だが、微妙な表現や発音が少し違う。例えるのも野暮な話だが、これはアメリカ英語とイギリス英語くらいの違いだ。
前述の台湾語という言葉は、別の言葉として存在していているのだが、台湾人みんなが話せるわけではない。
これは台湾の原住民たちが話していた言葉で、今は台湾人口の74.5%が話している。
ちなみに台湾語は話し言葉で、文字はない。当て字が使用されている。日本で言えば「沖縄語」と近いだろうか。
そして、中国本土の中国語と台湾の中国語が近いと言ったが、使われている漢字が全然違う。私たちからすると、ちょっと難しい繁体字という漢字が使われている。
「亀・楽園・骨」を例にとってみるとこんな具合だ。
龜のなんと画数の多いことか……。威厳はあるけど、授業の事を考えるとちょっと面倒だな……。
僕が地味に好きなのは「骨」という字。何故か、簡体字だと中の┏が逆側になる。その経緯を教えてくれ。
台湾で使われている漢字は、もっとも歴史のある漢字だ。
中国では、識字率の向上を理由に1950年代に簡体字政策が行われ、漢字が大きく簡略化されている。(香港では未だに繁体字が使われているなど、ちょっと複雑)
ここ日本のことをいうと、漢字が中国から輸入された後、明治時代から続いた文字改革で一部の漢字が簡略化されたらしい。この文字改革以前でいうと、例えば福沢諭吉の名著『学問のすゝめ』は、当時『學問ノスヽメ』との表記で発表されている。
ちなみに中国本土には、七大言葉がある。香港で使われている広東語、上海で使われている上海語などなど。
私も少し勉強してみたことがあるが、同じ漢字を使うが言葉はほぼ違うと言って良いほど違う。また、少数民族の言語を含めれば中国国内で80種もの言葉があるらしい。だから、普通話という共通言語を生み出したワケだ。
ちなみに中国と国境を接するベトナムや韓国にも漢字の影響はある。両国とも今は漢字は使用されていないが、漢字が基になっている言葉がたくさんある。
と、つらつら漢字のことを書いてはみたが、これはまだまだ氷山の一角。アジアと漢字の歴史を辿ると、本当に奥深いので、興味のある方はいろいろ調べてみたらおもしろい。
私は言語学者ではないので、世界中の国の言葉について知っているわけではない。ただ、日本と親交が深く、日常で接する機会も多い隣国の言葉のことを知っておくのは大切なことだと思う。
それぞれの人にとって大切な母国語。人によっては、マイクロアグレッションとも受け取られかねないので、ある程度の知識は持っておいて損はないと思う。
「おやつなトピック」って?
Z世代のインターンから、この道うん十年のベテラン編集者まで、TABI LABO“ナカの人”がリレー形式で担当するコラムです。