「ジン・トニック」の知らなかった世界
andymoriというバンドの楽曲『クラブナイト』に、「クラブナイトへおいでよ〜ジントニックで踊ろうよ〜」という歌詞がでてくる。
というのも、この曲を好んで聴いていた大学生の時期と、人生で初めて“クラブ”というものに足を踏み入れた時期が奇しくも同じで、私にとって「ジン・トニック」というカクテルは、つい最近まで“クラブの味”と脳が認識するようになっていた。
私は、そもそも体質的にお酒に強いわけではないので、お酒に対して大きな関心がない。質の高いハイボールや日本酒なんかは飲む機会があったが、日頃からバーなどとは無縁の私は「ジン・トニック」というカクテルがもつ、奥深い世界を知ることはなかった。
そう、このお店を訪れるまでは……。
シンガポールで取材をしていたとき、仕事終わりでメディア関係者の知り合いに誘われて、彼が気になっていたクラフト・ジンの蒸留所に行くことになった。
連れて行かれたのは、シンガポール中心部から少し離れたところに店舗を構える「BRASS LION DISTILLERY」というお店だ。このお店は1F部分が、オリジナル・ジンの蒸留所になっており、2F部分ではそのジンを使って作られたカクテルを楽しむことができる。
店内に入ると、お酒に詳しい知り合いが、早速取り扱っているメニューとオススメの飲み方を聞いている。席に戻ってくると、どうやら、このお店には「オリジナル・ジン」の奥深さを体験できる6種類のテイスティングセットがあるらしい。
せっかく来たので、全部試してみたいし、まずはこれを頼んでみた。
そもそもジンというお酒について、全く知識がなかったのだが、醸造の過程で「ジュニパーベリー」というスパイスで風味付けをすれば、「ジン」と名乗ることができるらしい。
逆に言えば、それ以外には大きな制限はないので、ジンはとても自由度が高いお酒なのだ。
そんな特性を利用して「BRASS LION DISTILLERY」では、シンガポールで伝統的に用いられてきたハーブや柑橘系、スパイスを取り入れてジンが造られている。
ベースとなるスピリッツには、ジュニパーベリーとコリアンダーシードをベースに、ジンジャーの花やレモングラスなど22種もの植物が使用されているらしい。
今回オーダーしたテイスティングセットでは、まずジンのみが注がれたグラスが供されて、それを少し試飲した後で、それぞれに合ったトニックウォーターを入れて飲むことができる。
中には、「バタフライピー」を原料にして造られた青いジンもあって、それにトニックウォーターを入れると酸性に反応してピンクに色が変化するという、視覚的におもしろいカクテルも。
他にも、チョコレートテイストが特徴的なジンから、柚子をフレーバーにしたトニックウォーターまで用意があって、ここには書ききれないほど、すべてが驚きに溢れる個性的な「ジン・トニック」だった。
ちなみに、バーの奥にはクラフト・ジン作りを実際に体験することができるスクールもあって、少し見学をさせてもらえた。
香水作りとも少し似ていて、メインのフレーバーから、香り、そして後味まで自分好みに作ることができるのだが、今回は時間の都合上行くことができなかった。
最後は、それぞれお気に入りの「ジン・トニック」を再注文して、心地良く酔いながらお店を後に。
味の繊細な変化があまりにもおもしろいので、ついつい色々頼んでしまったが、アルコール度数はもちろん高いので、お店に訪れ際にはくれぐれも飲み過ぎにご注意を。
『BRASS LION DISTILLERY』
【住所】40 Alexandra Terrace, Singapore 119933
【営業時間】火曜〜金曜 17:00〜23:30、土曜 14:00〜23:30、日曜 13:00〜19:00
【スクール】週末のみ(要予約)
【公式サイト】https://brassliondistillery.com/
「おやつなトピック」って?
Z世代のインターンから、この道うん十年のベテラン編集者まで、TABI LABO“ナカの人”がリレー形式で担当するコラムです。