米博物館、「先住民展示施設」の閉鎖を発表

5月19日、アメリカ・コロラド州の「デンバー自然博物館」が北米インディアン文化館の閉鎖を発表した。

閉鎖の理由について、同館はTwitter上で「我々は先住民の文化や歴史を尊重するために、展示方法やプログラムの見直しを約束します」と説明。

追って公開された声明では、

「この展示室では、先住民があたかも過去にしか存在しないもののように展示しており、主権国家による不適切な呼称を用いているうえ、許可なしに彼らの持ち物を展示しています。これは北米の先住民を傷つける内容であり、人種差別的な意識を助長してしまうことになるのです。」

と語り、欧米中心主義的な展示の撤廃を表明した。

© DenverMuseumNS/Twitter

多様性の意識が広がり、主権国家による差別や制圧の歴史が見直されている昨今、展示内容を見直す博物館や資料館は増えてきている。

肝心なのは、同館の閉鎖は「デンバー・アメリカン・インディアン委員会」と共同して決定されたということ。

第三者だけで“保護”するような対応は、必ずしもマイノリティの人々にとって嬉しいこととは限らない。

過剰な批判や対応は、差別や蹂躙(じゅうりん)を含めて事実としての彼らの歴史を隠すことになりかねないし、その善悪を判断するのはあくまでも当事者たちの権利だ。

だからこそ、今回のデンバー自然博物館のように、当事者たる先住民の子孫たちの意見を汲み、彼らと協働して改善に努めることは、多様性を認める社会のために重要なのではないだろうか。

「私たちが何者であるかを正しく描写し、伝えることが重要です」。同委員会のメンバーであるDonna Chrisjohnはこうコメントを残した。

「なぜ私たちだけが、研究対象として博物館に展示されているのでしょう?私たちは博物館の所持品ではないし、彼らの科学の被験者でもありません。せっかく科学の話をするなら、先住民が築いた数学や天文学について触れれば良いのでは?」

博物館の問題点は「展示すること」自体よりも、第三者的目線から先住民に「研究対象のような」扱いをしていたことだったようだ。

さまざまな社会問題を解決するにあたり、これは注目すべき点と言える。資料館や美術館等で、より彼らの文化に忠実な展示が展開されることを期待したい。

Top image: © Jamilya Khalilulina/Shutterstock.com
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。