ヴィーガンの「母乳」は、赤ちゃんにとって健康的なのか?
2019年以降、欧州では食習慣をヴィーガンへと切り替える人が急増。この4年間でじつに2倍にまで増えているそうだ。
ヴィーガンへと傾倒する理由はさまざまだが、基本、植物性食品のみから栄養素を摂取する彼らにとって、必要な栄養素の偏りが生じるという懸念は以前から考えられてきた。
そして、たとえばこんな疑問も。「ヴィーガンの母親の母乳は、雑食性の食事をする母親のそれと比較して、栄養価が低いのではないか……」。
先日、「欧州小児栄養消化器肝臓学会(ESPGHAN)」の年次総会において、この問いに対する答えが発表された。
結論:ヴィーガンの母たちの母乳は、栄養素レベルに影響は出ない。
そもそも妊娠中の女性たちには、さまざまな栄養素の積極的な摂取が推奨されている。なかでも母乳に必須と考えられているのが「カルニチン」と「ビタミンB2」。これらは動物性食品に高い濃度で含まれるもの。
だが、研究を主導したアムステルダム大学医療センターの報告によれば、ヴィーガン食を実施する母親自体のカルニチン濃度は低下していたものの、彼女たちから出る母乳のカルニチン濃度には変化がなかったという。
同様にこれまでビタミンB2も酵素の重要な因子のひとつと考えられており、乳児におけるビタミンB2の大幅な不足は、貧血や神経系に悪影響を及ぼす可能性があると示唆されてきた。が、こちらも今回の研究のみをみれば、母親のヴィーガン食がこれら2つの重要な栄養素に与える影響は、以前より考えられていた示唆ほどには重要ではないという判断のようだ。
もちろん、これはヴィーガンの母親たちの母乳に対する研究であり、彼らの栄養素のすべてを示したものではない。
それでも、ライフスタイルの選択肢が増える現代におけるこうした研究結果は、本人たちのこれまでの疑問や不安を解消するだけでなく、母乳を必要とする赤ちゃんのための“ドナーミルク”を提供する人たちにとっても、影響を及ぼすことになるはずだ。