恋に悩めるあなたへ。タツノオトシゴに学ぶ「恋愛の本質」
タツノオトシゴは、海の中で最も“ロマンチックな生き物”のひとつかもしれない。
パートナーと体を寄せ合うとハートのような形ができることから、しばしば「恋愛」と結びつけてイメージされるが、それ、意外と理にかなっているのかも。なぜなら、彼らが「ハート型」を作る相手は、生涯でたったひとりだからだ。
そんなタツノオトシゴの恋愛にまつわる話をご紹介。
1日の始まりに「愛のダンス」を
朝、まず彼らはお互いに近づくと、鼻を優しくこすり合わせ挨拶をするのだとか。
誘惑的なクリック音を立てて、優雅に前後に揺れ、まるで水中の音楽に合わせているかのように踊り、抱きしめ合う……時を忘れるかのように、充実したひとときを共に過ごすという。
この「愛のダンス」は 、パートナーとのコミュニケーションでありながら、相手を誘惑する手段にもなりうるらしい。そのため、毎朝の練習が交尾前の「求愛行動」の質を上げ、交尾の成功率を高めるとも考えられている。
浮気なんて論外
実は全哺乳類のうち、永続的なパートナーシップを築いているのはわずか3% 。両生類、爬虫類、魚類ではさらに少数なのだとか。
そんな中、タツノオトシゴは一夫一婦制を断固として貫く、非常にめずらしい生き物といわれている。
この一途な習性には、広大な海の中で同じ種のパートナーを見つけるのが難しいという環境的条件が関係している。そのため、より刺激的な恋愛を求めて冒険をするよりも、出会ったパートナーを「運命の相手」と考えるのだ。
タツノオトシゴの恋愛に関する研究をまとめた『NAUTILS』の記事によると、「パートナーの一方が網に引っかかっても、もう一方はそれを置き去りにせず、自発的に追いかけて捕獲される」なんて話も。
実は、オスが妊娠するって知ってた?
彼らの珍しい習性はほかにも。それは「タツノオトシゴの世界では、妊娠するのはオス」だということ。
彼らの受精がどのように行われているのかについて、完全には解明されていない。ただ、複雑な方法で受精が行われている可能性が非常に高く、そのために多くのエネルギーと時間をかけることを惜しまないようだ。
さらに行為後もメスのタツノオトシゴは忠実で、パートナーが出産して再び妊娠する準備が整うまでは再び交尾しないという。
動物学教授のウィリアム・ホルト氏によると、「オスの育児嚢は数秒後に再び閉じて、それ以上卵を移すことができなくなる」のだそう。複数のオスがメスの卵を受精させることも、複数のメスが卵を袋に移すことも不可能なのだ。
もちろん、必ずしもすべてのタツノオトシゴが忠実とは言い切れず、浮気をする種も存在するのだが。
タツノオトシゴみたいな恋愛も、ありじゃない?
刺激的な恋を探し続けるか、安定した一途な恋愛を求めるか。
議論は大きく分かれそう。とはいえ、一度決めた相手に愛情を注ぐという「恋愛の本質」を、タツノオトシゴは捉えているのかも?
人間の知らないところでこんなにロマンチックな恋愛が繰り広げられていたなんて。なんだか尊い……!