「ジャパニーズポップを盛り上げろ!」── 現役大学生と「ALFA MUSIC」による新たなプロモーション戦略とは?

SNSや動画&音楽配信サービスなどを通じて世界的なムーブメントと呼ばれるようになって久しい「シティポップ」などに代表される「ジャパニーズポップ」という日本発祥の音楽ジャンル。

そんな世界規模で熱い支持を受けるシーンのブームを、ここ日本でさらに加速させるため、ジャパニーズポップの殿堂「ALFA MUSIC」と現代ユースカルチャーを牽引するZ世代が手を組みました。

「+ALFA CAMP」──。

話題の音楽レーベルと大学生たちが挑む、新たなプロモーション戦略とは?

世界中のZ世代が夢中になる
音楽ジャンル「ジャパニーズポップ」とは?

1970年代〜80年代に海外のロックサウンドやジャズ、ファンクをはじめとするソウルミュージックなどの影響を受けて日本で誕生&発展した音楽ジャンル、シティポップ

世界中で巻き起こった80年代のリバイバルブームや、YouTubeをはじめとする動画投稿サイト、SoundCloud、Bandcampといった音楽系SNS、各種ストリーミングサービスなどの影響で、そのキャッチーで耳に残りやすいメロディーや関連するアートワークが大ブームとなり、近年、発祥の地である日本のポップミュージックが再注目されています。

荒井由美(松任谷由美)YMO(Yellow Magic Orchestra)戸川純吉田美奈子など、往年&熱狂的な音楽ファンならずとも、そのシーンを代表するアーティスト名やその楽曲をきっと誰もが耳にしたことはあるはず。

そもそも、音楽は耳や目で楽しむもの。文章による説明はこれくらいにして、ジャパニーズポップの魅力を肌で感じたいなら「ALFA MUSIC YouTube Channel」へ。

音楽レーベル✖️現役大学生による
「+ALFA CAMP」

「あなたの生活に『ALFA MUSIC』を“プラス”したくなるアイデアを募集」──。

そんなキャッチコピーのもと実施されたのが「+ALFA CAMP」です。

都内の複数の大学から学生の参加者/チームを募集したのが2023年5月。

応募総数184案のなかから4ヵ月の企画立案期間を経て、第一次審査を通過した10の大学生/チームがメンターである「ALFA MUSIC」のスタッフとともに約1.5ヵ月をかけてアイデアをブラッシュアップ。

そして、2024年2月、都内某所で開催されたプレゼン大会では「ALFA MUSIC」のスタッフだけでなく、「電通」のコピーライター・阿部広太郎さんらが審査員を務めるという、長期間&高濃度なプロジェクト、それが「+ALFA CAMP」なのです。

参加した大学生たちが語る
「私たちの『+ALFA CAMP』」

184の応募案のなかからそのアイデアが認められ、ジャパニーズポップシーンを牽引する「ALFA MUSIC」への最終プレゼンを実現した、10大学21名の大学生たち。

今回は、そのなかから栄えあるグランプリや準グランプリを獲得したチーム、記憶に残るプレゼンでその場を沸かせた参加者を招聘し、「私たちの『+ALFA CAMP』」と題して対談企画を開催しました。

ジャパニーズポップの殿堂とZ世代が手を組んだ「+ALFA CAMP」で大学生たちが得た気づき、そしてシーンの未来とは──?

「ジャパニーズポップの知識?
......激浅でした(笑)」

──自己紹介をお願いします。まずは、中央大学のおふたりから。

 

中央大学・山本裕希乃さん(以下、中央・山本さん)はい、中央大学、国際経営学部3年の山本裕希乃と申します。専攻は広告マーケティングで、模擬CMを作ったりキャッチコピー作ってみたり、そういうクリエイティブなこともしています。

あと、最近はまっていることは「ポケモンスリープ」っていう、ポケモンを育てるゲームに熱中しています。

 

中央大学・岩下晶太さん(以下、中央・岩下さん)同じく中央大学、国際経営学部3年の岩下晶太です。選考は同じでゼミ広告マーケティングを学んでいます。今は英語の勉強に熱中しています。

<左>中央大学・山本さん <右>中央大学・岩下さん

──では、続いて上智大学のおふたり、お願いします。

 

上智大学・萩原希安さん(以下、上智・萩原さん):上智大学、経済学部経営学科の萩原希安と申します。3年生です。専攻はマーケティングで、最近はまっていることはダンス。もうサークルは引退してしまったんですけど、今は後輩を応援するスタンスでダンスに接しています。

 

上智大学・染谷太一朗さん(以下、上智・染谷さん):上智大学の染谷太一朗です。経済学部の経営学科で、専攻はマーケティングです。

最近はヒマしているんですけど、もともとはミスターコンの運営をしていました。

<左>上智大学・萩原さん <右>上智大学・染谷さん

──では最後に、青山学院大学のおふたりもお願いします。

 

青山学院大学・宮川万里さん(以下、青学・宮川さん)青山学院大学の経営学部で、ブランドコミュニケーションをやっているゼミに所属しております、宮川万里と申します。

最近頑張っていることは就活と言わなければいけないと思うのですけど、バイトにいってご飯を食べて寝て遊んでを繰り返しています(笑)

 

青山学院大学・腰越遥さん(以下、青学・腰越さん):腰越です。私も経営学科なんですけど、ゼミではマーケティングを学んでます。

最近はまっていることは、いろんなバンドのライブにいくことです。

<左>青学・宮川さん <右>青学・腰越さん

──そもそも、みなさんはシティポップに代表されるジャパニーズポップという音楽ジャンルやシーンに興味が?

 

青学・腰越さん:正直、興味をもつタイミングもあんまりなくて、知識は激浅でした(笑)

 

青学・宮川さん:私はお絵かきやデザインをするので、シティポップというと大瀧詠一さんのアルバムのジャケットのイメージが強かったんですけど、音楽そのものはあまり聴いたことがなかったです。

 

上智・染谷さん:自分も耳にしたことはあっても「その定義は?」って聞かれてもわからないくらいのレベル。今ってTikTokとか観てると聴き慣れてるものしか出てこないから、シティポップと出会うきっかけもあまりなくて。

 

中央・山本さん:イメージは......「昭和の曲」かな。

 

一同:(笑)

 

中央・山本さん:でも、聴いてみたら「あ、ユーミンなんだ」とか。

 

上智・萩原さん:イメージとしては「シティポップ/ジャパニーズポップ=音楽通の人が聴いてる」かな。ダンスをやっているので、音楽は全般的によく聴くんですけど、「+ALFA CAMP」のオリエンテーションに参加したときに、もちろん知ってる曲もあったんですけど、ほとんどが「......なんだ、この曲は」って。

 

中央・岩下さん:じつはシティポップという言葉を知ったのが今年の8月くらいで「シティでポップって......テイラー・スウィフトみたいな感じ?」とか(笑)。でも、聴いてみるとジャンルを意識してはいなかったんですが、耳にしたことのある曲も少なくなくて。

 

上智・萩原さん:自分、ピアノとギターをやってるんですけど、海外のYouTuberで「このコード進行がやばい!メロディがいい!」みたいなチャンネルがあって、そこで昔のシティポップとかジャパニーズポップがピックアップされているのは目にしたことはあって。

「日本のシティポップは海外でも人気なんだな」っていう理解はしていましたね。

「フィジカルなコミュケーションが
必要な時代だと思います、今は」

──それでは、最終プレゼンで発表した施策のアイデアを各大学ごとに簡単にご紹介いただけますか?

 

青学・宮川さん:はい、青学、いきます。

 

──グランプリを獲得したチームですね。よろしくお願いします。

 

青学・宮川さん:私たちは「エモいってアルファミュージック展」という企画を考えました。

そもそもの発想の起点としては、今の若い人が感じる「エモい」っていう時代感と「ALFA MUSIC」の全盛期が同じなんじゃないかって思っていて。それを没入体験できる展示会という形式で展開できないかと考えました。

青学・宮川さん展示の内容としては主にふたつあって、ひとつはジャパニーズポップ全盛のエモい時代の演出をしたブースで音楽が聴けたり写真を撮れたりというブース。もうひとつはシティポップをはじめとするこのジャンルの魅力でもあるアートワークにフォーカスしたブースです。

あとはグッズを販売して持ち帰ってもらったり、展示会場をまわることで自分だけのプレイリストを作れることで追体験をしてもらったり。

今の時代、いちばん大事なのは“口コミ”だと思うので、きてくれた人たちが「ALFA MUSICってエモいよね」「エモいといえばALFA MUSICだよね」って連想して伝播するような流れが作れればいいなって。

──プレゼンでは展示会の模擬パンフレットを配るなど非常に印象深かかったです。では、次、上智大学チーム、お願いできますか?

 

上智・萩原さん:僕たちのアイデアは「TUNE TIME TRAVEL」というタイトルなんですが、「ALFA MUSIC」の音楽に興味をもってもらうために、聴覚と視覚、そして踊りを通じて体感できるリミックスコンテストとダンスバトルのふたつを掛け合わせた企画を考えました。

──ダンスサークルに所属しているチームならではのアイデアですね。

 

上智・萩原さん:ダンスバトルってYouTubeとかTikTokにも動画としてアップしやすいし、シティポップをリミックスする人がいればダンスで表現する人もいて、それを楽しむ観客の人もいて......このサイクルが回ってくればジャパニーズポップや「ALFA MUSIC」が永続的にどんどん盛り上がっていくんじゃないかなって考えました。

 

上智・染谷さん:どんなジャパニーズポップでも、リミックスすることでさらに多くの人に利用されるようになると思うんです。

リミックスしたり踊ったり、視覚的に楽しんだり......新しい楽しみ方の提案につながるアイデアだと思っています。

──では、準グランプリを獲得した中央大学のアイデアを教えてください。

 

中央・山本さん:私たちは“地雷系女子”をターゲットにした「地雷プリクラ」というものを企画しました。

企画を考えるにあたって、最初にターゲットであるZ世代のニーズから考えはじめたんですが、私たち自身を考察したり、友だちと会話していくなかで「コロナがあったから思い出に残る体験が少ないよね」と。

そこで“仲間との体験”をテーマに「体験×音楽を満たすのは何かな?」と考えたときにプリクラを思いつきました。最近のプリクラは音楽つきで動画編集もできて......「これしかない」と。

──なるほど。ちなみに“地雷”のアイデアはどこから?

 

中央・山本さん:「ALFA MUSIC」のことを調べるなかで戸川純さんを見つけてしまって......。

戸川さんのビジュアルとか歌詞とかマインドとか、生い立ちも含めて、話題の地雷系女子に似ているなって。

 

青学・宮川さん:プレゼンのときの衣装がかわいすぎました。

 

一同:(笑)

──みなさんのアイデアには「体験」や「参加」などフィジカルなコミュニケーションが数多く盛り込まれているように感じますが......。

 

青学・腰越さん私はライブによくいくので(コロナの影響で)「声出しができなくなる環境ってあるんだ」と思ったときに、マスクなしで人と会えるとか、日常のありがたみをすごく強く感じます。

そんなZ世代の感覚が盛り込まれているのかもしれないですよね。

 

中央・岩下さん:僕はもともとも一人の時間が楽しめるタイプではあるんですけど、人と会って話す、顔を合わせて会話する機会が減った時期は、やっぱり気分も上がらずで......。

 

青学・宮川さん:一方で、みんながZoomなんかも普通に使えるようになって、オンラインありきの生活がスタンダードになったのはすごい変化ですよね。

以前なら友だちとのLINEの通話がマックスだったかもしれないけど、新しい選択肢がすごく増えて、フィジカルなコミュニケーションとデジタルツールの活用を併用しないと人に想いを伝えることはできない時代だなって思います。

「時代がジャパニーズポップに追いついた──
そう思います」

──「+ALFA CAMP」に参加して得た学びや気づきは?

 

上智・染谷さん:人にものを伝えることの難しさですね。

僕たちにとってダンスは日常のものだけど、触れたことのない人が大半だと思うんです。そういう尖ったジャンルで共通の認識をもってもらうのは簡単じゃないなって。

上智・萩原さん相手にわかりやすい文章や表現を選ぶことの重要性にあらためて気づきましたね。

 

中央・山本さん:私は、ビジネスにおいてデータや根拠がどれだけ大切かを学びました。

最初に「音楽だしプリクラじゃない?」みたいにポンって出たアイデアをメンターの方に提案したんですけど「これに全部、根拠をつけろ」と、「根拠をつけないと社会で納得は得られないよ」って。

 

中央・岩下さん:ほかの大学の方との交流もあって、たとえばダンスやリミックスのことなんかはまったく未知の世界だったんですが、新しい世界を知ることができたのは貴重な体験でした。“差”ではないんですけど、自分にないものをもっている人との出会いには刺激を受けましたね。

青学・腰越さん:それぞれのチームから出てきたアイデアがひとつも被っていないことが「すごいな」って。

 

上智・萩原さん:あ、それ、自分も感じました。

青学・腰越さん:ですよね。同じ大学生、同じZ世代でもこんなにいろんな視点があるんだなっていうことをおもしろいと感じたし、つねにアンテナを高くいろいろな情報をキャッチし続けることの重要性にあらためて気づきました。

 

青学・宮川さん:あと、みんな、プレゼンがうますぎる。

 

上智・萩原さん:......グランプリ獲ったチームがそれ言う?

 

一同:(笑)

 

──では「+ALFA CAMP」に参加したことでシティポップをはじめとするジャパニーズポップに対しての印象の変化などがあれば教えてください。

 

上智・萩原さん:魅力、再発見できました。

中央大学の「地雷プリクラ」のアイデアを聞いたときにも思ったんですが、戸川さんの『好き好き大好き』の歌詞はすごく尖ってるし、『君に、胸キュン。』(YMO)っていうフレーズだったりは僕たちの世代にはすごく新鮮だったり。

このジャンルを聴くようになってから、今の曲って、こういう系統が流行ったらこう、こういうリズムが人気ならこうって、あんまり幅がないように感じたりもして......。

一曲一曲にキャラクラーがあって、すごくおもしろい音楽だと思います。

青学・宮川さん:「+ALFA CAMP」に参加して「ALFA MUSIC」の曲を余すことなく聴きまくって、今ではメジャーどころの曲はほぼサビを歌える状況になりました(笑)。

何度も聴いたことも理由ではあるんですが、ジャパニーズポップには人の記憶に残る何かがあると感じています。

その魅力やおもしろさを、周りに人たちにどう伝えていくか──。これからも考えていきたいなって思います。

青学・腰越さん:知れば知るほど、おもしろい音楽だなって。音楽としてはもちろん、アートワークも魅力的だし、歌手の人たちの個性も強いし、深掘りする要素がいっぱいのジャンルだと思っています。

最初、知識も興味も激浅だったとかいって、ごめんなさい(笑)

 

中央・岩下さん:そもそもシティポップとかジャパニーズポップについてまったく知らない自分が「+ALFA CAMP」に参加して、70年代とか80年代とか、リアルタイムでは聴いていないのになぜか馴染むというか......不思議な音楽だなって思います。

 

上智・染谷さん:「ALFA MUSIC」の音楽って、すごく昔に流行った曲なのに、ただ消費されるだけじゃなく、アイデア次第では未来にもしっかり伝えていける魅力がいっぱいの懐の深い音楽だと思います。

中央・山本さん:今、時代がジャパニーズポップに追いついてきたんだって思います。

戸川純さんの曲の歌詞にあるような、感情を剥き出しにした強烈な言葉って、コンプライアンスだったり社会の風潮だったり時代性だったりで、今の若い人たちが言いたいのに口に出せない言葉になっている気がして......。

だからこそ、現代の人たちはこの音楽ジャンルを求めているし、これからも必要とされる音楽として盛り上がり続けるんじゃないかなって思います。

大学生とのセッションによってみえた
レーベルと「+ALFA CAMP」の未来とは?

ジャパニーズポップの魅力をZ世代に発信しようと新たな試みに挑んだ「+ALFA CAMP」に参加した大学生たちと「ALFA MUSIC」。

レーベル初となるチャレンジを通じて「+ALFA CAMP」を主導した「株式会社ソニー・ミュージックパブリッシング」のマーケティング・プロモーション部の石毛克利さんが描いた、「ALFA MUSIC」、そしてシーンの未来とは?

「ALFA MUSIC」は1969年に発足して、
2024年で55年になります。

 

レーベルや楽曲を愛してくださっている往年のファンの方々には
感謝しかありませんが、若い世代...... Z世代やα世代と呼ばれる方々にも
「ALFA MUSIC」のカルチャーの魅力を伝えたい──。

 

そう考えたときに「宣伝会議」さんとのご縁もあって
スタートさせたのが「+ALFA CAMP」です。

 

開催してみて感じたのは、現代の大学生たちの優秀さ。

 

学生たちにとっても我々にとっても初の試みであり、
壮大な失敗を迎える結末も覚悟はしていたんですが、
小さなつまずきはありながらも
「ALFA MUSIC」のメンターとそれぞれがワンチームになって
企画をブラッシュアップし、提案に落とし込んでいく様子には
未来の可能性が溢れていました。

そして、今後の「ALFA MUSIC」の魅力を世の中に発信するための
さまざまな示唆も得られたと感じています。

 

最終のプレゼン大会の終了後に
関係者と学生たちの懇親会を開催したのですが、
学生たちは誰ひとりとして帰らず参加してくれました。

 

そして、そこで交わされていた会話の内容は
「ALFA MUSIC」やジャパニーズポップの未来についてでした。

 

それがすべてを物語っているように感じています。

 

ジャパニーズポップという音楽やシーンが
世代や立ち場を超えて
愛される未来──。

 

「ALFA MUSIC」は、今後も「+ALFA CAMP」を通じて
シーンの魅力と若い世代の可能性を発信していきたいと思います。