【NASA】磁力で浮く「月面列車」プロジェクト
2030年代の持続可能な月面基地の運用に向け、NASAが月面初の鉄道システムの構築を始めたらしい。
鉄道といっても、月面に線路を敷き詰めるというわけではない。線路の代わりとなるのは、どうやら浮遊式のレール。
貨物輸送ロボットが
レーン上を浮遊移動
NASAは、月面基地の運用のためには耐久性があり長寿命のロボット輸送システムが必要不可欠であると考えている。これまで月面車による輸送が行われてはきたが、より効率的でサステイナブルな方法を見出すなかで辿り着いたのが「FLOAT(Flexible Levitation on a Track)」と呼ばれる輸送システムだ。
FLOATシステムは、3層(グラファイト層、フレックス回路層、そしてオプションの薄膜太陽パネル層)の柔軟なフィルムトラック上に浮遊する、非駆動型磁気ロボットを使用するらしい。
このうちのひとつグラファイトは炭素からなる元素鉱物で、えんぴつの芯や新幹線のパンタグラフなどにも使用されている。また、磁気をかけると反発する性質がある。この反磁性を活かしてレール上のロボットを浮かせて移動させるというのが、簡単に説明するとFLOATの原理だ。
1日100トン、
移動距離は数キロにも
ところで、FLOATロボットには動く部品がなく、車輪、脚、軌道を備えておらず、軌道上をただ浮遊するのみ。FLOAT自体の軌道も従来の鉄道や道路とは異なり、月面で大掛かりな建設を必要とせず、直接レゴリス(月の表面に存在する堆積物)の上に展開することが可能なようなので、月面に穴を開けたり鉄杭を埋め込んだりする必要もないそうだ。
また、NASAの発表によるとFLOATは秒速0.5メートルを超える速度で移動可能なんだとか。それでも月面輸送においては速い方だそう。1日あたり100トンの荷物を数キロ先まで運ぶ輸送システムの構築により、より簡易的に月面での輸送が可能となるようだ。
現在、FLOATプロジェクトはフェーズ2進んでおり、月面での運用を目指して地球上で小型のロボットとトラックの設計、製造、テストが行われている最中。これらのプロトタイプは月面環境を模した環境でテストされ、温度、放射線、充電、月の土壌シミュラントによる汚染などの環境要因が性能と耐久性に与える影響を調査していく予定だという。
そう遠くない未来、月面に張り巡らされたFLOATレーンを望遠鏡でも確認できる日がくるかもしれない。