再生プラスチックで「第二の人生」を演出。いま注目のデザインカンパニー
開催が目前に迫るパリオリンピック2024でも謳われている、「脱プラスチック」。マイボトルの持参などでプラスチックのReduce(削減)を広く呼びかけている。
いっぽうで、Recycle(再生)に力を入れている企業もまた、多数存在する。なかでもイギリス、ウェールズの「Smile Plastics」は、100%プラスチックのパネルや製品を製造。これがおもしろい。
プラスチック素材との新しい向き合いかた
「Smile Plastics」の哲学
「Smile Plastics」が他の企業と一線を画するのは、そのフィロソフィーにある。製品のすべては100%プラスチック素材でできており、製造工場では、プラスチックシートを24時間365日生産することができ、年間3000トンものプラスチック廃棄物を転用しているそうだ。
そうして生み出されたプロダクトは、使用後にはすべてそのまま現地でリサイクルも可能。同社による「買い戻し制度」もあるというのが、実にユニーク。それだけではない。Smile Plasticsの低温生産プロセスでは、プラスチックの熱劣化を防ぐだけでなく、従来の70%のエネルギーでリサイクルできるといった利点も。
「過去、私たちがプラスチックに依存し、いまも依存し続けているのであれば、リサイクルによってこの素材を将来の生活へと循環させ、建築環境に適切に組み込む義務が私たちにはある」
共同創設者Rosalie McMillan氏は、Smile Plasticsの想いをそう「Dezeen」の取材に応えている。そのメッセージや彼らが生み出す製品からは、まるで「プラスチックとともに生きていく」という、ある種の“覚悟”を感じずにはいられない。
デザインに落とし込むのは
プラスチックとして生まれた“痕跡”
ところで、「Smile Plastics」のプロダクトが従来のリサイクルプラスチック製品と違う点はどこにあるのか。
それは、製造工程においてすべてを溶かし合わせ一色の製品をつくるという発想とは正反対の部分。プラスチックとして生み出された、その“歴史”をデイザインのなかに落とし込むデザインと技術にある。以前の姿を物語る、その痕跡こそ、Smile Plasticsのパネルの美しさの根源と言えるのかもしれない。
銀色の斑点は、過去「ヨーグルトのフタ」だったかもしれないし、バーコードの断片は「製品包装の一部」だったことを想起させる。Smile Plasticsでは、消費前および消費後の廃プラスチックを色、ポリマーの種類、グレード、素材の特性ごとに分類し、画家のようにそれらを選んで組み合わせ、独特の表面パターンをつく出すという、気の遠くなるような工程を経て製造されている。
まるで天然石のような落ち着いたものから、アパレルをより華やかに見せる色調のものまで。自在に操る遊び心は、もはやアートの領域。リサイクルプラスチックであることを、製品自体が祝福しているかのようなデザインに。
Smile Plasticsに、再生プラスチックの新たな未来をみた。