【悲報】史上最高の大統領像、異常高温にドロドロと溶ける……
今年6月の末、全米各地で「猛暑警報」が発令された。西海岸に位置するラスベガスでは最高気温が連日40度を超え、災害級の酷暑が人々を襲った。
だが、こうした異常高温に苦しむのは、我々人間だけではなかったようだ。
史上最高の大統領
異常高温の前に崩れる
まずは上のInstagramを見ていただきたい。
アーティストSandy Williamsが制作した、第16代米大統領エイブラハム・リンカーンの蝋人形。重量はじつに1400キログラム近くあるらしい。今年2月、ワシントンDCのギャリソン小学校の敷地内に設置されたリンカーン像。この場所は、南北戦争時代に、かつて奴隷とされたアフリカ系アメリカ人のための難民キャンプがあり、彼らの歴史に関心を持ってもらうことを意図した作品だった。
が、温暖化による異常高温の餌食となってしまう。
使用された蝋の凝固点は約62度だったにも関わらず、6月末の暑さは、“史上最高の大統領”と称えられる偉人をドロドロにしてしまった。
うだるような暑さに思わずのけぞるリンカーン。
最後には頭部がもげてしまい、無惨にも首からワイヤーが突き出た状態に。変わり果てた姿となった作品にメディア『My Modern Met』は、制作者のSandyのこんな言葉を紹介している。
「以前、温暖化が悪化して周囲の熱で彫刻が溶けてしまうようなことになったら、この作品は環境アートになるだろうと冗談を言っていましたが……まさか、それが今年の夏になるとは」。
「人民の人民による人民のための政治」、現代でも語り継がれるゲティスバーグ演説で聴衆に訴えたリンカーン。彼はこんな言葉も遺している。
私のことはどうでもいい、真実こそがすべてだ。
頭部を失い全身ドロドロに溶けてしまった蝋人形は、皮肉にも危機的状況にある気候変動を言い得ているように思えてならない。
アンコントローラブルでも
それを楽しむのがアート
Sandyは自身のInstagramで、頭のないリンカーンの像が小学校に設置されていることについて疑問が寄せられたことを報告。さらに、作品を支援する非営利団体「Cultural DC」は、当初の撤去予定日である9月30日より1週間早く、小学校の夏休みが終わる直前の8月26日に作品を撤去することを決めたそうだ。
『Intelligencer』の取材にSandyはこうも語った。不安でもあるが、もっともおもしろいことは何が起こるかまったくわからないということ。そして、それが完全にコントロールの範囲外であることだと。
温暖化の影響が及ぼした「溶けるリンカーン事件」。もっとも楽しんでいるのは作者本人なのかもしれない。