気候変動により「少女が結婚を強制される確率」が上がる──衝撃の事実が判明

気候変動が社会問題を助長し、児童婚を促進している

極端な気候変動が引き起こす悪影響の一つに、多くの人が意識していないものがある。米オハイオ州立大学が発表した最近の研究で、驚くべき事実が明らかになった。

それは、「極端な気象が、低・中所得国での子ども(特に少女)の若年結婚を増加させている」ということ。

国際学術誌『International Social Work』に掲載されたこの論文は、1990年から2022年の間に発表された20の研究を対象に、気候変動と児童婚の関係性を調査したもの。

いわく、世界的に見ると、じつに5人に1人の女の子が18歳未満で結婚しており、低所得および中所得国ではその割合が40%にまで上るという。

研究チームは、気候変動が進むことで悪化する可能性を危惧している。

様々な社会問題が深刻化し、児童婚を促進

にわかには信じがたい相関関係に思えるが、直接的な理由として、以下のような要因が挙げられている。

  1. 経済的負担の軽減:急激な気候変動が引き起こす災害(洪水、乾燥、サイクロンなど)は、被災地域における家庭の経済的負担を高めている。食糧不安や失業、住居の喪失などが起きることで、家庭は娘の結婚によってその負担を減らそうと考える場合がある。
  2. 労働力の必要性:特定の地域では、災害が労働力を必要とする状況を作り出すことがある。例えば、乾燥が水源や家畜に影響を与えた場合、食糧と水を求めて長距離を移動する必要が出てくる。このような場合、家庭は追加の労働力として若い花嫁を求めることがある。
  3. 性的暴力からの保護:気候変動によって地域社会が破壊され、人々が一時的な避難所やキャンプに移動する状況下では、若い女性が性的暴力や嫌がらせにさらされるリスクが高まる可能性が高い。このような背景があると、家庭は娘を保護する手段として早婚を選ぶことがある。

以上のような要因が、気候変動が引き起こす経済的および社会的ストレスと結びつき、子どもの早婚を促進する直接的な理由とされている。

ただし、気候変動が直接結婚を増加させるというわけではなく、すでに極端な気候や環境が存在する地域において、社会的問題が悪化することで児童婚を促進するという流れのようだ。

たとえば、酷暑で有名なバングラデシュでは、30日以上続く熱波があった年に、11~14歳の女子が50%、15~17歳の女子が30%も早婚する確率が上がっていたという。

地域の風習も影響か

研究では、地域の風習もまたこの問題に影響を与えていることが明らかにされた。

例えば、アフリカやベトナムなどの地域で一般的な「花嫁価格(新郎側が新婦側に支払う金額)」があり、このような地域では天候の極端化と女子の早婚が関連していた。

これは、先述したように気候変動によって家計が困窮した際に、娘を嫁に出すことで花嫁価格によってその負担を軽減しようとする例だ。

経済的に安定した先進国から見ると凄まじい人権侵害に思えるが、風習も含め、困窮する現地からすれば、女性は(たとえ自分の娘であっても)大きな儲けを生む“貴重な資源”と見なされているのかも知れない。

児童婚を止めるカギは「教育」

Doherty氏によれば、この問題を防ぐ鍵となるは「教育」。教育を受けた女子は早婚する確率が低く、親の教育水準が上がるとその傾向が強まるという。

高水準の教育を受けた女性は、就職や出世の機会に恵まれる可能性が高く、経済的自立につながる。女性自身が経済的に自立していれば、家庭の財政的負担を軽減する選択肢として「自らの収入」が生じるので、早婚から遠ざかるのだ。

そもそも、教育を受けた女子は「自分自身の価値や権利」についてより深く認識している。この自覚が、自分の人生に対する決定を下す際の選択肢を広げ、自ら働いて生き抜く方法を後押しする。

また、そもそも女性が高水準の教育を受けられる環境においては、女性が社会的に受け入れられやすく、その声が重視される可能性が高くなる。これが家庭内外での女性の影響力を高め、早婚に対する社会的な圧力を減らす可能性にもつながる。

親の教育水準についても、同様のメカニズムが働くことが考えられる。

このように、教育は、女子自身やその親、さらに社会全体にポジティブな影響を与えられる、児童結婚のリスクを減らす上で重要な要素だ。

いま、私たちにできることは?

研究チームは、早婚を防ぐためには法的な対策が必要だと指摘している。

ただし、それよりも重要なのは、女性に教育と財政的自立を提供すること。これは根本的には「ジェンダー間の不平等」が助長された結果であり、教育によってその差を埋めることで解決が期待できる。

また、高所得国でも同様の課題が起きている可能性があるが、それに関する研究は現時点では不足している。この点についても、今後更なる調査が求められる。

さて、では我々にできることはあるか?

現地の教育水準の向上に直接貢献することは難しいかもしれないが、忘れてはいけないのが、これを助長しているのが「気候変動」だということ。日頃から地球への負担を減らす意識を持つことは、誰でもすぐにできるはず。

しかも、その目的は地球の未来や生態系といった曖昧な対象ではない。世界の多くの地域の少年少女のためだ。そう思えば、少しは当該地域の人々の社会的負担が減るように意識が向くのではないだろうか。

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