3週間でTikTokを完全ジャックした、新トレンド「demure」を知ってるか?

今夏、SNSをアシッドグリーン一色に染めたトレンド「Brat Summer」は、どうやら秋の訪れとともに泡沫に消えていくようだ。来る「Demure Autumn」によって──。

「brat」を一掃した
新ワード「demure」とは?

brat」トレンドの特徴が大胆さや粗野さにあるいっぽう、「demure」はその真逆に位置する考え方。控えめでいて上品。シンプルで落ち着いたライフスタイルやファッションを指す言葉だ。

トレンドの発端となったのは、Jools Lebronさんが8月2日にTikTokへ投稿した以下の動画。

© joolieannie/ TikTok

「私が職場でどんなメイクをしているか知ってる?凄くdemure。とてもマインドフル」

自身のdemureっぷりを語るJoolsさん。動画は電光石火の大バズりをきめ、公開から3週間たらずで1000万回以上の再生。またたく間に170万人のフォロワーを有するインフルエンサーとなった。

「demureを“生き様”」と捉える彼女は、他の動画でこうdemureを表現してみせた。

「トゥーマッチなことはしない、適度にやるだけ。やりすぎないけど、やらなさすぎることもない。地下に潜ることはしないけど、上に行き過ぎることもしない。私は、ただ身分相応の場所にいる……。そういうマインドがdemure」

言葉の意味を逸脱し、
皮肉る「demure」な振る舞い

現在、ハッシュタグ「#demure」をTikTokで検索すると、24万件以上の投稿にヒットする。試しに検索してみてほしい。Joolsさんに倣えとするユーザーたちの“demure的振る舞い”に出会うはず。

職場で控えめな服装をする、飛行機を降りる時に辛抱強く待つことができる、美しくドーナツを食べることができる、etc……demureな例は多岐にわたる。

が、こうしたdemure的振る舞いがホントなのかは、実のところ怪しい。というのも、多くの人がかなりふざける形でトレンドに乗じているからだ。

例えばコレとか。

© _angelomarasigan / TikTok

コレなんかも。

@betches Very demure, very mindful inspired by @Joolslebron @Bryan Russell Smith #demure #mindful #demuremindful #worklife #officelife ♬ original sound - Betches
© betches / TikTok

確かに話し方こそ控えめで、落ち着いてはいるが……だいぶクセが強く、くだらない。

さもありなん、「demure」はもともと慎ましい女性を称賛するときに使われてきた歴史があり、伝統的な女性らしさを象徴する言葉としての意味がある。demureな振る舞いを真面目ぶって紹介することで、「demure」という単語そのものや、女性に対する伝統的なイメージを揶揄する。

THE PINNACLE GAZETTE』も示唆するように、いかにもZ世代らしいトレンドで、静かな反骨心を映しているように思えなくもない。

相反する「brat」と「demure」
共通するZ的価値観

有名セレブにとどまらず、果てはホワイトハウスまでも「Demure」に乗っかっているところをみると、季節はすでに「Brat Summer」から「Demure Autumn」へ切り替わったとみて間違いなさそう。けれど、カウンターパートとして紹介される両トレンドの根底には、共通するZ的価値観があるようにも思えてならない。

「無秩序vs秩序」と対立しているようにみえて、どちらも(前世代が作り出した)規範に挑戦する風潮があり、個人がトレンドワードを好きに解釈&表現する広まり方は、かなり近しいものを感じてしまう。

暴れまわるような派手さであれ、クセのある自制心であれ――季節が変われどZが貫きたいのは、自由でとらわれない自分の在り方だ。

Top image: © iStock.com/Roman Kulinskiy
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