RTD市場、成長鈍化の先に待つ未来。ハードセルツァーブーム終焉、主役交代は?
コンビニやスーパーを中心に、わずか数年で定番化した「RTD(Ready to Drink)」。従来の缶チューハイにとどまらずハイボールやレモンサワー、ハードセルツァーなど多種多様なアルコール飲料が楽しめる現代。
ところが、世界的な調査機関である「IWSR」が発表した最新レポートによると、いまRTD市場にある変化の波が訪れているという。
ハードセルツァー失速
RTD市場に訪れた転換点
数年前までRTD市場の成長を牽引していたのは、アメリカ発の低アルコール飲料「ハードセルツァー」だった。しかし、近年の市場は新たな局面を迎えている。
「IWSR」が発表した予測では、ハードセルツァーの市場シェアは2027年までに11%減少し、その一方でプレミアムなRTDカクテルやロング缶の需要が高まっているという。それを裏付けるかのように、2022年にはプレミアム以上の価格帯のRTDが、世界の7つの市場で2桁成長を記録しているのだ。
酒類市場調査会社IWSRの「RTDs Strategic Study 2023」によると、RTD市場全体の成長率は鈍化している。2022年から2027年にかけての予測成長率は12%に下方修正され、昨年発表された予測値の半分となった。
背景にあるのは、米国におけるハードセルツァーブームの終焉だ。IWSRは、ここ数年の成長鈍化の要因として、米国でのハードセルツァー人気衰退を挙げている。事実、ハードセルツァーを除いたRTD市場は、同期間で5%の成長が見込まれている。
この変化は、私たち消費者が手軽さだけでなく「品質」や「個性」を求めるように変化したことを示していると言えるのかもしれない。近年のRTD市場の進化は、味やアルコール度数の多様化だけにとどまらない。同社の調査によると、RTDを選ぶ際に「アルコール度数」を重視する消費者は全体のわずか3分の1程度。ブランドよりも重視する人が少ないという結果が出ている。
また、近年では健康志向の高まりから、低アルコール・低カロリー・低糖質を謳ったRTDや、素材や製法にこだわったクラフト系のRTDも続々と登場。環境問題への意識の高まりを受け、環境に配慮したパッケージや原材料を使用したサステナブルなRTDも見かけるようになった。
自分だけの「お酒の体験」
IWSRのRTD部門責任者であるSusie Goldspink氏は、「成長は鈍化しているものの、カクテルやロング缶、そして消費者に寄り添った価値観を提供するプレミアムプラス製品にはまだチャンスがある。RTDのベース、アルコール度数、フレーバーなど、消費者が重視するポイントを押さえることが重要だ」と述べている。
かつては画一的であったRTD市場は、消費者のニーズの多様化、そしてメーカーの飽くなき探求心によって、今まさに変革期を迎えている。
「とりあえず◯◯で!」という時代は終わりを告げ、今後は自分自身の好みやライフスタイルに合わせて、多様な選択肢の中から「お酒の体験」を選ぶ時代に変化していくのだろう。
👀GenZ's Eye👀
たしかに陳列棚を覗くたびに試したことのない種類のRTDを見かけるし、おっ?となりますよね。少し高くてもとりあえず試したくなる気持ち、わかります。これが「お酒2.0」の世界か……。