スーパーヒーローは、劇中だけでなく「現実世界」も救う救世主だった
スパイダーマンの葛藤や、アイアンマンの自己犠牲。勧善懲悪の痛快なストーリー展開で、観るものを魅了するスーパーヒーロー映画だが、時には目を覆いたくなるような暴力描写も少なくない。
じつは最近の研究により、スーパーヒーロー映画には私たち人間に与える“隠れた力”があることが判明した。
スーパーヒーロー映画がもたらす
心の変化
「New York Post」によれば、スーパーヒーロー映画は人間の「向社会的行動」を促進する可能性があることが判明。向社会的行動とは、他者や社会全体に利益をもたらす行動のこと。言い換えれば、スーパーヒーロー映画を観ると、人の心がよりよい行動へと導かれる可能性があるというわけだ。
ブラジルで行われたある実験では、200人の参加者を2つのグループに分け、一方には『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』にて、バットマンが武装した悪者から捕らわれた女性を救出するショートビデオを、もう一方には色とりどりの形状がさまざまなパターンを形成するビデオを視聴させた。
その後「情動的共感」「認知的共感」「連想的共感」に基づき、参加者の共感レベルを測定。すると、前者のシーンを観た参加者は高い連想的共感を示したという。つまり、誰かを救うために暴力を振るうバットマンに共感したことが科学的に証明されたわけだ。
要因として、フィクションを通して登場人物に感情移入するとき、私たちが「共感」という心の“筋肉”を鍛えていることが考えられている。「共感」は他者の感情を理解し、共有する能力であり、優しさや思いやりの根底にはこの力が大きく影響している。
近年の脳科学の研究では、「共感」は後天的に育むことができる能力だと分かってきたため、日々の生活の中で共感力を高めるトレーニングとして、フィクション体験は有効な手段となるかもしれない。
エンタメを通して問いかける
私たち自身の「正義」
近年のスーパーヒーロー映画では、ヒーロー自身の葛藤や成長にも焦点が当てられている。絶対的な力で悪を倒すのではなく、葛藤しながらも、倫理観に基づいた行動を選択する姿が描かれるものも多い。たとえば、2016年公開の映画『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』では、ヒーローの存在意義や行動規範をめぐり、アベンジャーズのメンバーが対立する姿が描かれている。これは、私たちが現実世界で直面する倫理的な課題とも重なる部分があるだろう。
スーパーヒーロー映画は、私たちに「正義とは何か」「倫理的な行動とは何か」を問いかける。そして、その問いは現実社会における課題解決へのヒントを与えてくれるかもしれない。
スクリーンの中のヒーローは、非現実的な存在かもしれないが、彼らの行動原理や葛藤は、私たち自身の心に深く響く。もう一度作品を観直し、私たち自身の「正義」について改めて考えてみてはどうだろう。
👀GenZ's Eye👀
もちろん共感はするし正義感でいっぱいになるけど、それは映画館を出れば1時間くらいでほとんどなくなる。現実世界で「正義感」や「倫理的な行動」を落とし込むのって思ってるより難しいんだよな……。