プラスチックを「分解」することができる細菌、発見される

レジ袋の有料化やマイボトルの普及。世界中でプラスチックごみを減らす「脱プラスチック」の動きがますます加速している。しかし、地球規模で課題として残り続けるのが、海洋プラスチックごみ問題だ。

その解決策として今、世界中で注目を集めているのが、プラスチックを分解する技術。そして、その鍵を握るのが、なんと私たちのごく身近に存在する「細菌」かもしれない。

発見! プラスチックを「食べる」驚きの生物

科学ニュースサイト「The Byte」によると、ある特定の細菌が、ペットボトルや衣料品などに使われる一般的なプラスチックの一種であるPETを分解し、自身の栄養源として利用できることが最新の研究で明らかになったという。

この細菌は「コマモナス・テストステロニ(Comamonas testosteroni)」と呼ばれ、以前からプラスチック分解能力を持つ可能性が示唆されていたものの、そのメカニズムは謎に包まれていた。ところが今回、ノースウェスタン大学のLudmilla Aristilde准教授率いる研究チームが遺伝子編集技術を用いることで、ついにその全貌を解明したらしい。

細菌がプラスチックを分解する
驚きのメカニズム

一体どのようにして、コマモナス・テストステロニはプラスチックを分解しているのだろうか?「The Byte」が紹介する研究チームの報告によると、そのプロセスは驚くべきものだった。

まず、細菌はまるで「噛み砕く」ように、プラスチックを微細な粒子へと分解していく。そして、特殊な酵素を巧みに使い、その微粒子をさらに小さな構成要素へと分解し、自らの栄養源として吸収するというのだ。まるでSF映画に登場する地球外生命体のような、驚異的な能力と言えるだろう。

「この細菌が、プラスチック分解という複雑なプロセスを単独で実行できることに驚愕しました。そして、プラスチックを分解する重要な酵素を特定できたことも大きな成果。この酵素を最適化し、活用することで、環境中のプラスチックを除去できる可能性があります」。と、Aristilde准教授は、今回の発見に大きな期待を寄せる。

細菌が切り開く持続可能な社会

PETは世界の固形廃棄物の12%を占め、下水に含まれるマイクロプラスチックの最大50%もPETが占めているという報告も。驚くべきことに、コマモナス・テストステロニは、この下水を好む細菌だそう。

下水処理場にこの細菌を活用すれば、海に流れ込むプラスチックごみを大幅に削減できる可能性があると研究チーム。万策尽きた感のあるプラスチックごみ問題に対し、希望が浮かんでくる。もちろん、実用化には乗り越えるべき課題もまだ多い。しかし、今回のコマモナス・テストステロニの発見は、人類にとって地球環境問題解決に向けた大きな一歩であることは間違いないだろう。

もしかしたら、未来の地球を救うのは、私たち人間ではなく小さな細菌なのかもしれない。

👀 GenZ's Eye 👀

科学技術ではなく、自然の力を借りる。私たちが地球にもたらした問題の解決策は、地球自身にあるのかも、と思わせてくれますね。

Top image: © iStock.com/Ake Ngiamsanguan
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。