「あの子変わっちゃった?」美容整形が友情にもたらす光と影
下地を塗って、コンシーラーで気になるところを隠す。アイプチでまぶたを二重にしたらマスカラで目を大きく見せて、シェーディングで鼻は高く。最後にハイライトで顔に凹凸を。
女性の朝は忙しい。なにせ隠さないといけないところも、カタチが変わったように見せなければいけないところも、たくさんあるんだもの。でも、ある人々はこれらを美容整形によって一気に解決する。その後は自信がつくことだろう。そして彼女はある日、友人にこう告白する。「私、整形したの」と。
そのとき、友人の反応はいかに……?
ここに紹介するのは、英ライフスタイルメディア「Dazed」語られた、「整形手術後に友情が崩壊」した人たちの実体験。理想の美を手に入れたとたん、いったい彼らに何が起きたのか?3人の女性のケースから容姿と友情の美容なバランス構造を紐解いていく。
case01:
「嫉妬心」が生み出した
エネルギーヴァンパイア
2023年3月。当時24歳だったコンテンツクリエーターのMaya Rigbyは鼻の整形手術を行った。いわく、「これこそ私が求めていた鼻。この整形は友だちに話すことをためらうようなものではない」と。しかし、2年もの付き合いで、旅行にも行くほどの仲であった彼女の友人たちは変わってしまった。突如Rigbyを嫌がったり、苛立ちを見せるようになったという。
Rigbyは自身のTikTokにて、この友情の崩壊について投稿。「鼻の整形を受ける意図しない特典は、偽の友人を排除することだった」と。友人たちは、彼女の整形に対し理解ができない様子を示すばかりか、初対面の人に対して彼女の鼻を真似て見せることによって整形を示唆したりもするようになったという。
Rigbyの投稿には、同じような経験をしたという多くのコメントが寄せられた。レーザー治療を受けたとたん、友人から誘われなくなったとか、激やせした後、友人から見放されたとか。見た目の変化により友人関係にも変化が現れるようだ。
Rigbyはこの出来事について一つの答えを出した。それは、他者から気力を奪う人間「エネルギーヴァンパイア」の存在だ。
「エネルギーを吸い取るヴァンパイアがいる。友人とは、私たちがベストな状態でないときに、エネルギーを糧にして楽しむもの。だからもし片方が上手くいきはじめると、もはやそのヴァンパイアはなにも欲しいものを得ることができない」。
これは、なにも美容整形後の友人関係だけに言えることではない。恋人ができたとき、仕事がうまくいったときなど。要するに“嫉妬”が破綻をもたらすというのだ。
case02:
容姿の変化が招く不安感
ラスベガス在住、24歳のLoganは、2023年7月に豊胸手術を受けた。すると今までその手術に反対していたある友人は、Loganが彼女を真似て豊胸したとみんなに言いふらし始めた。これは友人の中にあった不安の表出だったのではないかとLoganは推測する。
「もし、あなたが本当にきれいになってしまったら、友人を不安にさせ、その不安を明るみに出させてしまうかもしれません」と彼女は「Dazed」の取材に答えた。友人と容姿を比べ、コンプレックスを抱いている、または友人よりも自分の容姿が優れていると感じている場合、美容整形による友人の変化は受け入れがたいものなのかもしれない。
case03:
美容整形の依存症に陥った友人
Tyler(匿名のため仮名)の友人は、美容整形後運動したり、ご飯を一緒に食べたりする友人を失ってしまった。Tylerはひとり彼女のそばにい続けたが、彼女の方がテイラーから離れていってしまったという。また、Tylerはその友人について、「次にどこの箇所を整形したいのか。それが彼女のすべてになってしまい、数ヵ月に一度しか会えなくなった」と話す。
美容整形の依存性は非常に高く、施術を受けた本人が美容整形のせいで友人から距離をおいてしまうこともあるようだ。
嫉妬と向き合う
「整形手術を通して多くの患者は、自らの容姿に自信を持つようになります。手術は高額で誰にでも受けられるものではないという点も、友人感の経済格差を露わにしてしまうことも。そういった点も嫉妬を生む原因でしょう」。「Dazed」の取材にこう語るのは、ニューヨークの形成外科医Melissa Doftだ。
こうした潜在的な問題を乗り越えるための対応策として、彼女は両者が嫉妬の感情を認め、処理しオープンな会話の必要性を訴える。けれど、嫉妬心が恥ずかしく否定的な感情とみなされていることがこれを阻害しているとも。
セルフエスティームの向上は
「見た目」だけが鍵なのか?
こうした友人間のトラブルが、若い女性の間で発生していることも見逃すことはできない。友人関係に亀裂が入る例として、美容整形後、友人同士で見た目の優劣を争いはじめるといったケースもあるようだ。
美容整形が女性に力を与える存在となったのか、はたまた実現不可能な美の基準を作りあげる最先端となってしまったのか……。若い女性のコンプレックスを煽るかのような美容整形クリニックの過剰広告が問題視されたこともある。SNSの普及により、加工後の容姿のきれいな人を簡単に見つけることができるようになってしまったことも、“整形ブーム”を助長しているようにも思える。
全身を美容整形により変化させることさえ可能な時代において、「あるがままの自分の容姿」を愛するのか、「他人よりも優れた容姿」を選ぶのか。前者が受け入れられない世界線では、みんなが理想の姿になれない限りコンプレックスは解消されないのではないだろうか。嫉妬と自尊心のジレンマの中で、私たちはつねに選択を迫られているのかもしれない。