2024年の食トレンドを表す「今年の⼀⽫®」に輝いた「うなぎ」。その選出理由は……?
あなたが最後にうなぎを食べたのは、いつだろうか? かつては夏のスタミナ食として親しまれてきたうなぎだが、近年では価格高騰や環境問題の影響を受け、食卓に上がる機会は減っている。
そんななか、2024年の食トレンドを象徴する「今年の一皿®」に「うなぎ」が選出されたことは、明るい未来の訪れを示すのか、それとも……。
テクノロジーの進化が支える
「完全養殖」への挑戦
「株式会社ぐるなび」が発表する「今年の一皿®」は、その年の世相を反映し、日本の優れた食文化の更なる発展に貢献することを目的とするものだ。2024年の「うなぎ」選出理由には、完全養殖技術の進歩に加え、「食の持続可能性」への意識の高まりが挙げられている。
しかし、これは単なる人気食材の表彰ではない。その背景には、資源の枯渇や環境問題、そして日本の食文化の未来に対する危機感がある。
うなぎも例外ではない。現在、天然うなぎの減少は深刻で、国際自然保護連合(IUCN)はニホンウナギを絶滅危惧種に指定している。この状況を打破するのが「完全養殖」だ。
近畿大学は、2010年に世界で初めてウナギの完全養殖に成功した。同大学水産研究所の特任教授、田中秀樹氏は「うなぎの食文化を絶やさないための努力を後世のためにも続けていきたい」と語る。完全養殖は天然資源への依存を減らし、環境負荷を低減する、まさに未来への希望と言えるだろう。
伝統と革新の融合
うなぎ職人の世界に新しい風を
うなぎを使った代表的な料理「うなぎの蒲焼き」は、長年の経験と熟練の技によって生み出される日本の伝統食だ。しかし、その後継者不足は深刻で、このままでは技術の断絶も危惧されているという。
「株式会社うなぎ家」代表取締役社長、松井智子氏は「うなぎ職人の高齢化や人材不足が問題。主婦層をターゲットにした育成プログラムを実施している」と語る。伝統を守るためには、技術の継承と同時に女性や若者など、新たな人材を積極的に受け入れる必要があるのだ。
あなたの食卓が、いずれ未来を変える
うなぎは、言わずもがな日本の食の未来を象徴する食材だ。私たち消費者は、毎日の食生活のなかで、環境問題や食文化の持続可能性についてより深く考える必要があるのではないだろうか。
たとえば、「サステナブル・シーフード」認証を取得したうなぎを選ぶことは、責任ある消費活動と言える。また、たまには土用の丑の日以外にもうなぎを食べることで、需要の平準化に貢献できるかもしれない。
こうして2024年の「今年の一皿®」にうなぎが選出されたことは、私たち一人ひとりが未来の食について考え、行動を起こすきっかけを与えてくれていると解釈することもできる。
👀 GenZ's Eye 👀
日本の伝統食材、うなぎ。食材の危機が文化の危機に直結する典型例となる魚です。食材だけでなく、文化もサステナブルに。「今年の一皿®︎」はそんな私たちの課題を表しています。