「性労働=労働」は世界の常識になる?ベルギーの新法が問う働き方改革
ヨーロッパの小国から、従来の価値観を揺さぶるニュースが飛び込んできた。ベルギーでセックスワーカーなど性労働者に健康保険、出産休暇、病気休暇など、他の労働者と同等の雇用上の権利を与える法律が成立。世界初の試みであると「CBS News」が報じた。
社会のタブーに切り込む
ベルギーの挑戦
これまで多くの国で、性産業は社会のタブーとされ、その労働環境は劣悪な場合も少なくなかった。搾取や人権侵害が横行する闇は、看過できない社会問題。「国際労働機関(ILO)」によると、世界には約4200万人の性産業従事者がいると推定されている。その多くが社会保障や法的保護から取り残されているのが現状だ。
ベルギーの新法は、こうした現実を変える第一歩となる可能性を秘めている。「新しい時代の幕開けと言える」と、新法成立を後押しした支援団体「Espace P」のQuentin Deltour氏はCBS Newsの取材に答えている。
「働く権利」は、誰にでも平等なのか?
今回の新法で注目すべきは、性労働を「仕事」として認め、安全で公正な労働環境を保障している点だ。契約条件や労働時間、賃金交渉において、性労働者をより有利な立場に立てるようにした点は画期的と言えるだろう。
しかし、課題はまだ山積みのようで、自営業の性労働者には適用されない点や、違法な性産業の撲滅など、解決すべき問題は残されている。それでもDeltour氏は「職業活動に伴う社会的権利を持たない場合、『市民』としての地位が低い状況が存在することに気づいた」と語り、新法が重要な視点の転換であると強調する。
「尊厳ある労働」を求めて
ベルギーの取り組みは、私たち自身の「あたりまえ」にも疑問を投げかける。仕事とは何か、労働者の権利とは何か。そして「尊厳」とは……。
近年、日本でもフリーランスやギグワーカーなど、新しい働き方が増加している。働き方の多様化が進むいっぽうで、不安定な雇用や社会保障の不足など、新たな課題も浮き彫りになっている。「誰一人取り残さない社会」を実現するために、私たちはどんな未来を描くべきなのか。ベルギーの新法は、労働のあり方、そして個人の尊厳について、改めて深く考えるきっかけを与えてくれるだろう。