傷ついた九谷焼に宿る、美の力。能登半島地震が刻んだ「美」を巡る旅

2024年1月1日、マグニチュード7.6の地震が石川県能登地方を襲った。死者460名(2024年11月時点)を超える未曽有の大災害は、私たちの心に深い傷跡を残した。

その傷跡は、物理的なものだけではない。110年以上続く歴史を持つ九谷焼の窯元「錦山窯」もまた、地震によって多くの作品が被害を受け、伝統と文化の継承という大きな課題に直面している。

壊れゆく姿に、美を見出す感性

「建物こそ無事であったが。かけがえのない歴代の作品が割れてしまったのである。私は、何故かその割れてしまった作品をそのまま丁寧に撮影したくなった。何故だろうか。いまだにその回答には至っていない」

そう語るのは、写真家・蓮井幹生氏。2025年1月18日から東京・南青山にある「YUGEN Gallery」で開催される写真展「朽ちゆく果てにも美は宿る【巡回展】」で、地震で傷ついた錦山窯の作品群を1億画素の超高画素センサーカメラで撮影した作品を展示するという。

レプリカでは表現できない
一期一会の芸術

近年、3Dプリンターやデジタルアーカイブなど、文化財を後世に残すための技術革新が進んでいる。しかし、蓮井氏のレンズが捉えたのは、デジタルデータでは決して再現できない、まさに「一期一会」の瞬間だった。

釉薬の剥がれ、欠けた陶片の一つ一つが、地震のエネルギーと、その土地が歩んできた歴史を雄弁に物語る。それは、自然の脅威に対する畏怖の念とともに、逆境を乗り越えようとする人間の力強さ、そして、壊れゆくものの中にも美を見出す日本人の感性を浮き彫りにする。

過去作品紹介©株式会社ジーン
過去作品紹介©株式会社ジーン
過去作品紹介©株式会社ジーン
過去作品紹介©株式会社ジーン

サステナビリティが叫ばれる今
伝統工芸と私たちの未来

大量生産・大量消費社会において、大量に生産された焼き物は、壊れれば簡単に買い替えられてしまう。しかし、伝統工芸品は違う。職人の手仕事によって一つ一つ丁寧に作り上げられた作品には、作り手の魂が宿り、所有者の人生とともにその価値を高めていく。

作品売上の一部が錦山窯の復興支援に寄付される今回の展示は、単なるチャリティイベントではない。私たちが未来に向けて何を残し、何を伝えていくべきなのかを問いかける、重要なメッセージを含んでいる。

朽ちゆく果てにも美は宿る【巡回展】

<東京>
【期間】2025年1月18日(土)〜2月2日(日)
【開館時間】平日13:00〜19:00 土日祝日13:00〜20:00
※最終日のみ17:00終了※入場は閉場30分前まで※会期中無休
【場所】YUGEN Gallery(東京都港区南青山3-1-31 KD南青山ビル4F)
【在廊日】1月18日(土)、19日(日)、25日(土)、26(日)、2月1日(土)、2日(日)
※変更となる場合がございます。最新情報はギャラリー公式サイトよりご確認ください。
【入場料】無料

<福岡>
【期間】2025年3月8日(土)〜3月23日(日)
【開館時間】11:00〜19:00
※最終日のみ17:00終了※入場は閉場30分前まで
【定休日】火曜日
【場所】YUGEN Gallery FUKUOKA(福岡県福岡市中央区大名2-1-4 ステージ1西通り4F)
【在廊日】未定
【入場料】無料

Top image: © 株式会社ジーン
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