EV車の充電スポットを探す必要がなくなる「自律走行ボット」のデザインコンセプト

電気自動車(EV)が路上を静かに駆け抜ける光景は、もはや珍しいものではなくなった。ガソリンスタンドの代わりに充電ケーブルが目につくようになり、私たちの移動手段が大きな変革期にあることを実感させる。

しかし、その裏側で多くのEVユーザーが共通の課題に直面しているのも事実だ。それは、充電インフラをめぐる煩わしさである。

駐車場を充電スポットに変える『Linki』

こうしたEV普及のボトルネックを解消するかもしれない、一つのデザインコンセプトが注目を集めている。

Yanko Designで紹介された、Yuxuan (Krystal) Zheng氏によるデザインコンセプト『Linki』。これは、充電器が車のもとへ自律的にやってくるという、全く新しい発想の充電システムだという。

コンセプトの中核をなすのは、駐車場内を巡回する小型の自律走行充電ボット。

ユーザーが車を駐車すると、このボットが自動で車両を検知し、充電ポートに接続して充電を開始する。専用の充電スペースを探したり、アプリで空き状況を確認したりする必要はない。

駐車という日常的な行為が、そのまま充電時間になる。まさに、すべての駐車スペースが充電スポットに変わる未来のビジョンだ。

© Krystal Zheng/vimeo

充電待ちのストレスを解消するユーザー中心の設計

Linkiが着目したのは、EVユーザーが抱える切実なストレスだ。

公共の充電器は数が限られ、常に使用中であったり、故障していたりすることも少なくない。デザイナーは、この充電器をめぐる椅子取りゲームのような状況こそが、EV普及を妨げる心理的な障壁になっていると考えた。

そこで、車を充電器に合わせるのではなく、充電器を車に合わせるという逆転の発想が生まれた。このアプローチの利点は、既存の駐車場に大規模な改修工事を施す必要がないこと。

必要に応じてボットの数を増減させるだけで、需要の変化に柔軟に対応できるスケーラビリティも備えている。利便性を最大化し、手間を最小化するという、ユーザー体験を起点とした設計思想がうかがえる。

コンセプトから実装へ。自律型充電ボットの現在地

Linkiはあくまでコンセプト段階だが、同様のアイデアは世界中で現実のものになろうとしている。

例えば、米国のスタートアップEV Safe Chargeが開発した「Ziggy」は、アプリで呼び出すと自律走行で指定の駐車スペースまで移動し、充電サービスを提供する。駐車スペースの予約と充電を同時に行える仕組みだ。

また、Volkswagenも過去に同様の自律型充電ロボットのコンセプトを発表しており、自動車メーカー自身もオンデマンド充電の可能性を模索していることがわかる。

これらの動きは、充電インフラのあり方が、固定設備型から移動・分散型へとシフトしていく未来を示唆しているのかもしれない。

もちろん、ボット自体の充電やメンテナンス、複雑な駐車場での安全な航行制御など、実用化に向けた課題は多い。しかし、その潜在的な価値は計り知れない。

モビリティとエネルギーの未来を描くアイデア

充電とは特定の場所で行うもの、という常識を問い直すLinkiのようなアイデアは、EVの利便性を飛躍的に高める可能性を秘めている。

それは、単に充電の手間を省くだけでなく、EVを選ぶことへの心理的なハードルを下げ、より多くの人々が持続可能なモビリティへ移行するきっかけとなり得るだろう。こうした革新的な発想の積み重ねが、私たちの生活とエネルギーの未来を形作っていくのかもしれない。

Top image: © iStock.com / 3alexd
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