陳列棚は動物の種類でなく福祉で分ける、独スーパーALDIの売り場革命

ドイツの大手ディスカウントスーパー、ALDI SÜDが、消費者の買い物のあり方を変える可能性を秘めた、新しい売り場のコンセプトを導入した。

アニマルウェルフェア(動物福祉)への関心の高まりを背景に、生鮮肉の陳列方法を「動物の種類」ではなく「飼育環境のレベル」で分類するという、小売業界では前例のない試みだ。

「飼育方法」で色分けされる冷蔵コーナー

ALDI SÜDが2025年5月から開始したこの新しい陳列コンセプトは、消費者がより直感的に商品を選べるように設計されている。

これまで一般的だった「鶏肉」「豚肉」「牛肉」といった動物種別の棚割りを廃止。代わりに「Haltungsform(ハルトゥングスフォルム)」と呼ばれる、飼育環境のレベルに応じて商品を分類する。

Haltungsformとは、ドイツの小売業界で広く使われている、動物の飼育環境を4段階で示す表示制度。数字が大きいほど、よりアニマルウェルフェアに配慮した飼育方法であることを意味する。

新しい冷蔵コーナーでは、このHaltungsformに基づき、青、緑、赤の3つのエリアに色分けされるという。

青は従来型の飼育方法(Haltungsform 1, 2)の製品、緑はより高い飼育基準(Haltungsform 3, 4, 5)の製品とひき肉、赤は特売品が並ぶ。

顧客の意識変化が後押しした転換

この大胆な改革の背景には、ALDIが2021年から掲げる「#Haltungswechsel(飼育方法の転換)」という長期的な目標がある。

2030年までに生鮮肉や乳製品などを、高い飼育基準の製品のみに切り替えるという強い意志の表明だ。

同社はすでに飲用乳や七面鳥、牛肉の生肉などで高い飼育基準への移行を完了させており、今回の陳列方法の変更は、その次なる一手と位置づけられる。

プレスリリースによると、アニマルウェルフェア製品に対する顧客の需要は途切れることなく伸び続けているとのこと。消費者の意識の変化が、企業の取り組みを後押ししている格好だ。

業界全体への波及と学術的な注目

この取り組みは、生鮮肉コーナーだけではないらしい。牛乳やソーセージ、チーズなどが並ぶ通常の冷蔵コーナーにおいても、天井からのPOPやマグネットシートを使い、高い飼育基準の製品が目立つように工夫される。

ALDI SÜDのサステナビリティ担当ディレクターであるJulia Adou氏は、プレスリリースの中で「私たちの目標は、顧客が高い飼育基準の製品を簡単かつ一目で探せるようにすること。

そのために新しい道を進む準備はできており、アニマルウェルフェアという共通の目標を同じように断固として実行する競合他社を歓迎する」と述べている。この言葉からは、自社の取り組みが業界全体のスタンダードを変える起爆剤になることへの期待がうかがえる。

また、この売り場変更がもたらす影響については、ボン大学の農業・食品経済市場調査研究グループが独立した研究として調査を行う予定。その社会的意義と注目度の高さを示すものだろう。

今回のALDI SÜDの試みは、消費者が日々の買い物の中で、より意識的に、そして簡単にアニマルウェルフェアに配慮した製品を選べるようにする画期的なアプローチ。

これは単なる商品陳列の変更ではなく、持続可能な消費と生産のあり方を、生産者から小売、そして消費者まで、サプライチェーン全体に問いかけるものだ。この売り場での小さな変化が、業界の大きな変革の第一歩となるかもしれない。

Top image: © ALDI SÜD 2025
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