投資なのに“推せる”ってアリ?「GX」で描く未来のエネルギー
スマートフォンを充電する電気、コンビニのおにぎりを温めるレンジ、冬に部屋を暖めてくれるストーブ──。私たちの暮らしの“あたりまえ”を動かしているエネルギー。そのつくり方や届け方が、いま大きく変わろうとしています。
「グリーントランスフォーメーション(GX)」と呼ばれるこの動きは、再生可能エネルギー(以下、再エネ)を軸に、地域から社会をアップデートしていこうという挑戦。そして、このGXの最前線に、ある“らしくない投資運用会社”がいます。
日本株のプロが挑む、再エネ投資の理由
全国で再エネや水素の事業を展開し、地域とともに未来の社会を描く独立系の投資運用会社「スパークス」。もともとは日本株の運用に強みを持ち、上場企業の分析力やリスク管理力を培ってきました。そのノウハウを再生可能エネルギーやインフラ投資に応用。こうして、ちょっと異色の挑戦が始まったのです。
転機は東日本大震災。エネルギーのあり方が社会全体で問い直されるなか、スパークスは再エネの可能性を徹底的に検証しました。そして2012年、子会社「スパークス・グリーンエナジー&テクノロジー(SGET)」を設立し、ファンド組成を通じて再エネ事業に本格参入。今では全国349か所で発電所を運営しています。
「事業性ありき」──。その結果として地域と連携し、社会に新しい価値を生み出していく。この順序こそがスパークスの特徴。そして投資を通じて現場に入り込み、人や地域と直接つながっていきます。それは、Z世代が抱く「社会とどう関わるか」という問いにも重なるはず。
“数字じゃ見えない未来”、どう掴む?
スパークスが大切にしているのは、「ボトムアップリサーチ」と呼ばれる投資哲学です。現地へ足を運び、景色や感情、課題を“肌感覚”で捉える。そうして積み上げた気づきが、数字には出てこない未来の可能性を照らしていくのだそう。
現場の小さな声やデータを積み上げて投資判断につなげる──それが同社のやり方。株の世界で培った手法をそのまま再エネやインフラ投資に応用し、数字では見えない現場のリアルを投資の材料に変えてきました。
では、なぜ投資運用会社のスパークスがここまで現場にこだわるのか?その理由は、上場株式運用で培ってきた「企業を見る目」と「リスクを測る力」が、GXのような未知の領域にこそ必要だと考えているからです。
財務分析に加え、経営者や現場へのヒアリングを通じて企業価値を見極めてきたスパークスは、その知見をそのまま地域エネルギーやインフラ投資にも応用しています。つまりは数字と感覚、分析と現場、その両方を掛け合わせることで、他のプレイヤーには見えない“未来の兆し”を捉える投資を可能にしているのです。
だから、投資運用会社なのに現地現物主義というギャップが生まれるわけです。
苫小牧発!温泉まで動かす「水素の街」

北海道・苫小牧市では、GXの次なるステージがすでに動き出しています。SGETが2025年に稼働させたのは、グリーン水素をつくる設備。太陽光や廃棄物発電の電力を使い、水を電気分解して水素を生み出す。まさに“エネルギーのアップデート”と呼べる仕組みです。
でも、ポイントは「つくって終わり」じゃないこと。スパークスは「ためる」「はこぶ」「つかう」までを一気通貫で設計しました。生成された水素はトレーラーで運ばれ、温泉施設で燃料電池による温泉の加熱に役立てられたり、施設の電気の供給にも一役買っているんだそう。
想像してみてください。もし、あなたが入る温泉のお湯が水素由来のエネルギーで温められていたら──?そんな未来は、もう実験段階を超えて動き始めているのです。
ただ、水素の利活用には専門知識も欠かせません。そこでスパークスは、地元での技術者育成にも着手。事業を根付かせ、地域と一緒に次世代のエネルギーを育てていく、そんな狙いがあるそう。
この「苫小牧モデル」は環境省の実証事業にも採択され、再エネと廃棄物発電を組み合わせ、年間最大100万Nm³の水素を生み出す計画。ざっくり言えば、“廃棄物と太陽の力で水素をつくり、街で使う仕組み”が走り出しているわけです。
未来のエネルギーは、単なる「電力」ではありません。暮らしや働き方そのものを変える“触媒”のようなもの。次に就職する会社、これから住む街、週末に出かける温泉──。そうした選択肢のなかに“水素”が普通に入ってくる未来は、もうすぐそこに来ています。
「つくる」「届ける」「使う」までを描くサプライチェーン型のGX。まさに、“現地に行って、現物を見て、肌で感じる”というスパークスの現地現物主義にほかなりません。
さらにスパークスは「蓄電所ファンド」を立ち上げ、蓄電事業そのものを投資対象にしました。細かい仕組みはさておき、電気をためて出す仕組みをビジネスにする投資。そんな新しいファンドがすでに走り出しているのです。
GXフルコース、発電から蓄電まで全部のせ

札幌市では、2028年の稼働を目指して大規模な蓄電所の建設が進んでいます。敷地は東京ドームに迫る広さ、出力は100MW。完成すれば国内でもトップクラスの規模です。
蓄電所の役割はシンプル。太陽光や風力など、再エネが「つくれるとき」と「使いたいとき」のズレを埋めて、電気を安定して届けること。要するに、でこぼこする再エネをフラットに整える仕組みと考えればわかりやすいでしょう。ちなみに、この札幌のプロジェクトは「GX推進税制」の第1号案件として認定され、街ぐるみで進めるGXの象徴にもなっています。
ところで、スパークスは北海道だけでなく、東北から九州に至る全国300ヵ所以上の再生可能エネルギー発電所を展開。私たちの日常に溶け込むかたちで再エネを育てています。
発電、蓄電、そして供給まで。GXをフルコースで描く同社の取り組みは、投資の未来像そのもの。こんな投資運用会社があったということに驚きです。
“推せる”投資
地域の「相棒」みたいな存在
スパークスは、資金を投じて終わりではありません。人の暮らしに価値を届ける運用と運営を追求しています。出資というかたちで預けられたアセットを、丁寧に育てて価値を高めていく──それこそが同社のミッションのひとつ。
単なる資金提供者ではなく、地域の「相棒(パートナー)」としての一面も伺えます。現場をつくり、運営し、ときには授業も行うのですから。
エネルギー事業は、地域の景色や日常の風景を大きく変える力を持っています。だからこそスパークスは、「原風景を変えてしまう責任」を担う立場として、単なる啓発ではなく、暮らしと事業の接点を丁寧に伝える必要があると考えています。
実際、「こどもエネルギーサミット」と題した出張授業では、再エネの仕組みや背景を地元の子どもたちに直接伝えることで、現場での理解と共感を育んでいます。
Z世代が共感する企業には、必ずと言っていいほど「人との向き合い方」があります。スパークスはその真ん中にいるのかもしれません。投資を通じて社会に寄り添い、技術・制度・人をつなぐ。そして新しい選択肢を提示する。
そんな投資のあり方って、ちょっと“推せる”と思いませんか?
GXは未来のキーワードじゃない!
じつは“コンビニレベル”の話

いかがでしょう。どこか遠い未来の話のように思えていたGXも、じつは私たちが暮らしている日常から始まっていることに気がついたはず。
再エネで電気をつくり、ためて、届けて、使う──。その一連の流れを暮らしのレベルから組み直す視点。それは、単なる電力インフラの刷新ではなく、「日常を支える仕組み」をアップデートする挑戦です。
スパークスが描いているのは、技術も制度も人も地域も巻き込んだ“エネルギーの未来図”。そしてその未来図は「誰かがやってくれるもの」ではなく、「自分も関わっていい」と思えるような挑戦を含んでいます。
次の休日に訪れる温泉や、街角のコンビニで使う電気。その裏側で、新しいエネルギーの仕組みがすでに動き始めているかもしれません。この未来に、あなたはどう関わりますか?
投資って、じつは社会や暮らしの仕組みにタッチできる方法のひとつだった。そう考えると、GXを“自分ゴト”に変える入り口も、案外すぐ近くにあるのかもしれませんね。
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