叫び声はセラピーの一種。ロンドンに広がる「スクリームクラブ」
ロンドンのハイドパークに集まった若者たちが、カウントダウンを合図に一斉に叫び声を上げる。
一見奇妙なこの光景は、「ロンドン・スクリーム・クラブ」と呼ばれる集まりの一幕。溜め込んだ感情を解放する手段として、公共の場で共に叫ぶというこの活動が、英国の若者たちの間で広がりを見せている。
溜め込んだエネルギーを解放する場
『The Guardian』の報道によれば、このクラブをロンドンで立ち上げたのは、23歳のShania Barnes氏。
彼女は、仕事や日々の生活で溜め込んだ「鬱屈したエネルギー」を解放するために、この活動を始めたという。
しかし、参加者たちが求めるのは、単なるストレス発散だけではない。
「ロンドンのような都市では、人々は常にストレスに晒されています。一緒にエネルギーを解放できるのは素晴らしいことです」とBarnes氏が語るように、そこには他者との「つながり」を求める切実な想いがある。
かつては孤独に悩み、友人を作るのに苦労したという彼女自身の経験も、このクラブを始める大きな動機となった。
お金のかからない「第3の場所」
スクリームクラブが若者たちを惹きつけるもう一つの理由は、それがお金のかからない「第3の場所」として機能している点にある。
今日の若者にとって、飲酒や消費を伴わずに他者と出会える空間は、驚くほど少ない。
公園で集まり、ただ叫ぶ。
その行為は、経済的な負担なく、社会的なつながりと精神的な解放感の両方を提供してくれる、貴重な機会となっているようだ。
メンタルヘルスケアの代替としての役割
参加者の中には、この活動が現代社会におけるメンタルヘルスケアへのアクセスの難しさを反映していると指摘する声もある。
公的な医療サービスの待機時間は長く、民間のカウンセリングは高価だ。
そうした状況下で、スクリームクラブは、たとえ根本的な解決にはならなくとも、一時的ながら心の負担を軽減するための、実践的で無料の代替手段として機能しているのかもしれない。
主催者も参加者も、これが万能薬だとは考えていない。しかし、ジャッジされることなく感情を吐き出せる安全な空間が、多くの若者にとってささやかな救いとなっていることは、間違いないようだ。






