なぜZ世代は“非効率”を選んだのか?タイパの先にあった、「文字で通話する」という発明

効率化を至上とする「タイパ」という言葉の裏側で、Z世代がコミュニケーションに求めている真の価値とは何か。最新の調査が示したのは、速さの先にある“非効率”──リアルタイムで文字が生まれる過程そのものが生む、「気配」という情緒的なつながりだった。

タイパ重視のZ世代
そのイメージは本当に正しいのか

©Fiom合同会社
©Fiom合同会社

Z-SOZOKEN(Z世代創造性研究所/運営:Fiom合同会社)が2025年10月に実施した調査によると、Z世代(18〜24歳・n=300)の**82.4%が、新感覚コミュニケーションアプリ「Jiffcy(ジフシー)」の「入力中の文字がリアルタイムで見える」機能について、「感情が伝わる」と回答している。さらに80.3%**が、「相手との心理的な距離が縮まる(関係が深まる)」と感じているという。

この結果は、Z世代が単純に「効率」や「即時性」だけを追い求めているわけではないことを明確に示している。

一般にZ世代は、「タイムパフォーマンス(タイパ)」を重視する世代として語られてきた。無駄を省き、短時間で成果を得る。メッセージは簡潔に、レスポンスは速く──そうした合理性こそが、彼らのコミュニケーションスタイルだと理解されてきた。

しかし、この調査結果から浮かび上がるのは、そうしたステレオタイプとは異なる姿である。

「入力中の文字が見える」という
一見“非効率”な仕組み

Jiffcyの最大の特徴は、相手が入力している途中の文字がリアルタイムで表示される点にある。完成された文章だけが届く従来のチャットとは異なり、打ち始め、書き直し、ためらい、迷いといったプロセスそのものが共有される。

この仕組みについて、Z世代の82.4%が「従来のチャットより感情が伝わりやすい」と回答した。そこにあるのは、情報量の多さではない。むしろ、言葉になる前の「間」や「揺れ」が可視化されることで、相手の存在や気配をよりリアルに感じられる点に価値が置かれている。

一見すると、このリアルタイム入力は非効率だ。文章を整える時間が露呈し、会話はスムーズさを欠く。しかしZ世代は、その非効率の中にこそ、コミュニケーションの“豊かさ”を見出している。

「声なき通話」が成立する生活シーン

©Fiom合同会社

調査では、Jiffcyの利用シーンについても明確な傾向が示された。
利用の76%は「声が出せない環境」で行われており、内訳は「電車やバスなどの公共交通機関」が39.4%、「家族がいるリビングなど声を出しにくい自宅」が36.6%となっている。

注目すべきは、Z世代の55.7%が「電話そのものに苦手意識はない」と回答している点だ。つまり、彼らは「電話が嫌い」なのではない。声を出せない、あるいは出したくない状況においても、通話に近い密度のコミュニケーションを求めているのである。

Jiffcyは、そのニーズに対し「テキスト通話」という形で応答している。

短文チャットではない、深い対話の時間

さらに、1回あたりの利用時間を見ると、「30分以上」と回答したユーザーは**45.8%**にのぼる(30分〜1時間未満:27.5%、1時間以上:18.3%)。これは、Jiffcyが単なる短文のやり取りではなく、友人同士が腰を据えて会話する場として使われていることを示している。

実際、現ユーザーの**54.2%が「週1回以上」利用しており、「ほぼ毎日」使うユーザーも19%**存在する。即席の連絡手段ではなく、日常的なコミュニケーションチャネルとして定着していることが分かる。

タイパの先にある
「気配」を求める感性

この調査が示すのは、Z世代が効率を否定しているわけではない、という点だ。即時性もテンポも重要である。しかし同時に、彼らは「微妙なニュアンス」や「感情の揺らぎ」が削ぎ落とされることにも強い違和感を抱いている。

入力中の文字が見えるという、非効率に見える仕組みは、相手の思考や感情の動きを感じ取るための装置だ。声は出さなくても、そこには確かに相手の“気配”がある。

Z世代のコミュニケーションは、もはや「速いか、遅いか」では測れない。
効率の先で、どれだけ情緒的に繋がれるか──その問いに対する一つの答えが、リアルタイム・テキスト通話という形で現れている。

タイパ世代が選び取ったのは、効率の否定ではなく、意味のある非効率だったのかもしれない。

Top image: © iStock.com / Frazao Studio Latino
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。