Tinder新機能「Double Date」は、なぜZ世代に支持されるのか?
世界最大級のマッチングアプリ「Tinder」が、新機能「Double Date」を発表。どうやら、単なる機能追加という言葉だけでは片付けられない、大きな可能性を秘めているようだ。
1人より2人がいい。半数以上が望む
「グループデート」というリアル
Tinderが新たに打ち出した「Double Date」は、その名の通り、友だちと2人1組でプロフィールを作成し、同じく2人組の相手を探すことができる機能。目的のため、自分ともう1名の「プラスワン」を招待し、共にプロフィールを編集。あとは、気の合いそうなペアを探してスワイプするだけ。1対1の出会いがもたらす独特の緊張感とは、少し趣が違うようだ。
この機能は、決して突飛なアイデアから生まれたわけではない。Tinder Japanが実施した調査によれば、18歳から25歳の若者のうち56%が過去1年以内にダブルデートやグループデートの経験ありと回答。さらに70%が「機会があれば参加したい」と考えているという。1人での出会いよりも、友人と一緒のほうが心強いと感じるのは、ごく自然な感覚だろう。
同社は常にユーザー体験のアップデートを試みている。実際に、同機能のテスト段階では、利用したプロフィールの約90%が29歳以下のユーザーだったという事実は、この新しい出会いのスタイルが、特に若い世代の心をつかんでいる証左といえる。
「恋愛は面倒」でも「繋がりは欲しい」
Z世代のジレンマを解くカギ
では、なぜ今、これほどまでに「友だちと一緒」の出会いが求められるのか。その背景を探ると、現代の若者、特にZ世代が抱える複雑な心境が見えてくる。
「株式会社マイナビ」の調査によると、18歳から24歳の若者で「恋人探しや婚活を行っている」と答えたのは33.6%に過ぎず、3人に2人は積極的な活動をしていないのが現状だ。さらに、「株式会社ネクストレベル」の調査では、Z世代の6割以上が「恋愛は面倒」と感じているというデータもある。この「恋愛疲れ」ともいえる感覚は、恋愛至上主義からの脱却や、趣味・推し活といった恋愛以外の楽しみが多様化した現代ならではの価値観の表れかもしれない。
しかし、彼らが人との繋がりを完全に拒絶しているわけではないはずだ。恋愛は少し重いが、新しい誰かとの繋がりは欲しい……。このジレンマこそが、彼らの本音ではないだろうか。
ここに「Double Date」がもたらす価値がある。
1対1の真剣な出会いの場がもたらすプレッシャーから解放され、友人との「コト消費」の一環として、もっと気軽に人と繋がれる。時間を効率的に使いたいタイムパフォーマンス(タイパ)を重視し、「ガチの恋愛はハードルが高い」と感じる層にとって、まさに求めていた出会いの形なのかもしれない。
友人というフィルターを通すことで、心理的なセーフティネットが機能し、より自然体で相手と向き合える。これこそが、新しい関係性を育むための、心地よい第一歩となるのではないだろうか。
恋愛や結婚というゴールだけを目指すのではなく、まずは友人関係を築いたり、共通の体験を楽しんだりする場へ。Tinderのこの一手は、私たちの「出会い」という言葉の定義そのものを、静かに、しかし確実にアップデートしていくのかもしれない。