日本ベッド×隈研吾の新しい眠り。ベッドは、身体を守る「巣」になる
日本ベッド製造が、2026年の創業100周年を記念するフラッグシップコレクションを発表しました。デザイン監修を手がけたのは、建築家・隈研吾氏。驚くのは、そのコンセプトです。日本初のベッドメーカーが1世紀の節目に掲げたのは、最新テクノロジーでも睡眠データでもなく、「森の動物が巣をつくる営み」でした。
洋式寝具を日本に広めたメーカーが
100年後、「木組み」に回帰した

新作ベッドフレーム「ウッドネスト」は、その名のとおり「巣(nest)」です。隈氏は「単なる眠るための道具ではなく、森の中に身を置くようなプリミティブな体験を目指した」と語っています。
構造のモチーフになっているのは、日本の伝統建築に受け継がれてきた「木組み」の技術。角材を緻密に組み合わせ、接合部の美しさそのものをデザインにしています。
主材には国産のナラ材が使われていて、使い込むほどに木目や色合いが変化していく仕様。脚部をマットレスの外側に配置することで、フレーム全体がふわりと宙に浮いているような軽やかさも生まれています。
ここで面白いのは、1926年に「日本羽根工業社」として洋式寝具を日本に持ち込んだメーカーが、100年の時を経て日本古来の木組みに回帰したという円環構造です。西洋から始まった物語が、和の技術で閉じる。その巡り合わせに、ちょっとした感動を覚えます。
眠りの「道具」から、身体を守る「空間」へ
近年、睡眠の質への関心はかつてないほど高まっています。マットレスの硬さ、素材、体圧分散──スペックの比較は尽きません。
でも隈氏が提案しているのは、そうした数値の競争とはまったく別の軸です。発表会のトークショーで同氏は「よく眠ることは仕事のパフォーマンスを支える才能」と述べたうえで、暗い寝室の中で人を守り包み込む「小さな建築」としてベッドを設計したと説明しました。
さらに興味深いのは、将来的にはAIや医療が睡眠に統合され、ベッドが健康ケアの拠点になるという未来予測にまで話が及んだこと。「巣」という原始的なイメージと、テクノロジーが融合する未来像。その両端を同時に見据えている点に、このプロジェクトの射程の長さを感じます。
同時に発表された最上級マットレス「シルキーレーヌ」も、思想が一貫しています。最高級綿として知られるシーアイランドコットンを100%使用した表地に、カシミヤと国産ウールの中わた。接着剤に頼らず糸で締める「ブラインドタフティング」という職人技で、素材本来の柔らかさを引き出す設計です。
寝室は「聖域」になれるか
正直なところ、ベッドフレームに60万〜80万円(税別)、マットレスに80万〜130万円(税別)という価格帯には驚きます。
けれど、隈氏の「巣」という言葉を聞いたとき、ふと考えさせられました。私たちは寝室に何を求めているのだろう、と。
スマートウォッチが睡眠スコアを測り、アプリが入眠音楽を流してくれる時代。それでもなお、ベッドに横たわった瞬間の「ここにいていいんだ」という安心感だけは、データでは設計できません。
住空間が限られた日本の暮らしの中で、寝室を「ただ寝る場所」から「自分を守る巣」へと捉え直すこと。それは高級ベッドを買う・買わないの話ではなく、眠る場所に対する意識の小さな転換なのかもしれません。
ウッドネスト(ベッドフレーム)/シルキーレーヌ(マットレス)
【デザイン監修】隈研吾建築都市設計事務所(KKAA)
【発売時期】2026年9月中旬
【価格(税別)】ウッドネスト S 600,000円〜K 800,000円/シルキーレーヌ S 800,000円〜K 1,300,000円
【公式サイト】日本ベッド製造






