「友人3人で暮らす」が難しい日本。賃貸の“当たり前”を変える一軒家
友人と暮らしたい。ただそれだけのことが、日本の賃貸市場ではなぜか「断られる」選択肢になっている。不動産企業・Livmoが2026年8月に発表したのは、東京・世田谷区の築古一軒家を「友人同士の3人暮らし」に特化してリノベーションした賃貸物件。第一号の入居者がすでに暮らし始めているといいます。

「ご家族ですか?」で空気が変わる
友人入居を阻む暗黙の前提
友人同士で部屋を借りようとしたことがある人なら、あの独特の気まずさに覚えがあるかもしれません。
不動産会社の窓口で「ご家族ですか?」と聞かれ、「いえ、友人です」と答えた瞬間に空気が変わる——。
Livmoによれば、友人同士の入居が断られる理由は大きく3つ。ひとつは、誰かが抜けたときに残った人が家賃を払いきれなくなるリスク。
ふたつめは、生活リズムの違いによる騒音など近隣トラブルへの懸念。そして3つめが、「代表契約者を誰にするか」といった契約形態の複雑さです。
どれもオーナーや管理会社の立場からすれば合理的な判断ではあります。でも、裏を返せば「家族なら問題ない」という前提が暗黙のうちに組み込まれているということでもあります。
血縁や婚姻関係があれば審査を通るのに、友人だと通らない。その線引きは、本当に「暮らしの質」と関係があるのでしょうか。
駅徒歩18分が「余白の時間」に変わる
築古の味を残すリノベの発想


この物件、最寄り駅から徒歩18分。不動産の常識では明らかに不利な立地です。
けれどLivmoの創業者・源侑輝氏は、学生時代の寮生活での原体験から「駅からの距離や最新設備といったスペックより、同じ屋根の下に流れる空気感や関係性のほうが、暮らしを豊かにする」と考えたそうです。
実際、第一号入居者の3人——北海道・石川・静岡からそれぞれ上京し、同じ劇団で活動する20代——は、この「18分」をむしろ楽しんでいます。
「帰り道の18分、みんなでおしゃべりできる時間が楽しみ」。駅からの距離が、3人だからこそ「余白の時間」に変わるわけです。
リノベーションも興味深い。状態のよかった和室はあえて残して畳を張り替え、水回りは社員が自らDIYで塗装。レトロな丸いドアノブを活かした玄関は、内見時に「映画や絵本の世界みたい」と一番好評だったといいます。
築古の「味」を消さずに、3人の暮らしに合わせて手を入れる。新築のピカピカとは真逆のアプローチです。
「単身かファミリーか」の二択から
こぼれ落ちる暮らしのかたち
入居者のひとりは「Livmoがこのプロジェクトを立ち上げてくれなかったら、ルームシェアを諦めていた」と語っています。
「些細な日常も3倍の面白さになる」という言葉も印象的でした。一人暮らしでは予算的に届かない物件に、気を遣わない関係のまま住める。それは単なるコスト分担ではなく、暮らしそのものの質が変わるということです。
日本の賃貸市場は長らく「単身」か「ファミリー」かの二択で設計されてきました。でも現実の人間関係は、もっとグラデーションがあるはずです。
友人、恋人未満のパートナー、元同僚、趣味仲間——。「誰と住むか」を自分で選べることが、これからの不動産の価値になっていくのかもしれません。
世田谷の一軒家は、その小さな第一歩です。






