公道カート「ステルス車庫」問題。住宅街で広がる新たな観光公害
外国人観光客がコスプレ姿で都心を走り抜ける公道カート。危ないな、と思ったことがある人は多いはずです。
でも、問題の本質は「走っている最中」ではなく、もっと手前にあるかもしれません。
観光公害は「観光地」から
「住宅街の裏通り」へ

物語的シンクタンク「ニッポンモンダイ」が2026年9月に公開した調査が、意外な角度から公道カート問題を照らしています。注目したのは、カートが出発し、戻ってくる場所——つまり「車庫」です。
同団体によれば、公道カートの車庫は観光地そのものではなく、その周辺の住宅街に設けられるケースが少なくありません。車庫の隣が保育園だったり、目の前が児童公園だったりする事例もあるといいます。
さらに、カートの運転に慣れるための講習ルート——つまり練習コースとして、住民が日常的に使う生活道路が使われている実態も指摘されています。
これまで公道カートの議論は「走行マナー」や「ヘルメット着用」など、走っている最中の安全対策に集中してきました。しかし「どこから出発するか」は、制度の盲点になっていたのです。
同団体はこの問題を「#ステルス車庫」と名づけました。観光客の目には映らず、住民だけが知っている場所に、観光インフラが静かに入り込んでくる構造です。
「条件付きなら可」の内実は
ほぼ「不安」だった


東京都・大阪府の15〜89歳の男女300名を対象にしたインターネット調査(Freeasy、2026年5月実施)では、自宅の近くに車庫ができた場合の印象を尋ねています。
「危険だと思う」が43.3%、「やや不安」が39.0%。合わせて8割超が否定的な反応を示しました。
興味深いのは、「条件付きなら受け入れられる」と答えた人たちの本音です。この層のうち約9割が、同時に「危険」または「不安」と回答していました。
つまり「条件付きなら可」は、容認のサインではありません。「条件が整わない限り、受け入れられない」という慎重な姿勢の裏返しです。
また、事故が起きない限り警察が対応しにくい現状については、「事故前に規制すべき」(46.7%)と「条件付きで規制すべき」(41.3%)を合わせ、約9割が事前対応を求めています。
「自分の家の隣」で考える
オーバーツーリズム
オーバーツーリズムと聞くと、京都の路地や渋谷のスクランブル交差点を思い浮かべがちです。でもこの調査が示しているのは、観光公害が「観光地」の外へ静かに染み出しているという現実です。
数年前、民泊が住宅街に突然現れて騒音トラブルが相次いだとき、日本は法整備で対応しました。公道カートの車庫問題も、構造としてはよく似ています。住民の生活圏に、合意なく観光施設が入り込んでくるという点で。
ニッポンモンダイは「解決よりも、問い続けることに価値がある」と掲げる団体です。今回の調査も、答えを出すためではなく、まだ名前のなかった問題に輪郭を与えるために行われたものでしょう。
明日、自分の家の隣にカートの車庫ができるかもしれない。そう想像したとき、この問題は一気に「自分ごと」になります。






