勝ちたければ、ギャンブルするな―プロギャンブラーのぶき

「ギャンブラー」とGoogleで検索すれば、上位をほぼ独占する日本人がいる。カジノ勝負で生計を立てながら世界各地を飛び回る、誰もが憧れてしまうようなワイルドな旅人。「プロギャンブラーはギャンブルしない」と断言する彼の目に世界はどのように写るのだろうか?

001.
『Playing Black Jack As a Business』

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athlete_head_q ギャンブラーになろうと思ったきっかけは何ですか?

Answer

現役で大卒し入社した仲間がブラック企業に潰された。「会社って、当たり外れがある。けど入社しないと分からない」。ならば、僕は起業しよう。学友が就活しているなか、バイトを最大4つ掛け持つ。卒業の翌年で独立資金1000万円が貯まりました。

「起業したら経営が軌道に乗るまで3〜5年はかかる」と学んでいました。ならば「3~5年休みたくない仕事を選べば」起業は成功しやすくなる。僕がいつも書き貯めているメモには、やりたい仕事の候補が100個くらいあったのですが、どれも正月は休みたい。

大学卒業後、ビジネスチャンスを探しにアメリカを周遊し、タイトル買いした本がありました。『Playing Black Jack As a Business』。ギャンブルはむしろ嫌いだったけど、ラスベガスで「賢いならお金を稼げるよ」と教わった。

ギャンブルは確率と統計なはず。数学なら欧米相手に勝負できる。プロギャンブラーとして世界中を旅できれば、休みが欲しいとは感じない。【これなら本気になれる!】と思い、自分でもありえない選択し【プロギャンブラー】を目指し始めました。

002. 来月どこで何をしているかが分からない「ギャンブル旅」

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ギャンブルで稼ぎながら世界を周る、という現在のスタイルに至った経緯を伺わせてください。

Answer

プロを目指したとはいえ、本当にプロが居るのか分からぬまま、がむしゃらに毎日10時間は勉強し修練しました。2年かかってようやく勝てるスキルまで到達したので、勝負し始めたら、勝ち続けて追い出されました。

ブラックジャックとは、カジノと戦うトランプゲーム。数学的にずっと勝ち続ける人はカジノにとって不利益なので、追い出されちゃうのです。これがプロの証でもあるんです。

初めて追い出されたのは、アメリカのニューオーリンズ近郊にあるカジノ。それからは次の狙いのカジノに行っては、勝って追い出される繰り返し。そうすると毎年勝てるカジノである職場が減っていきます。

2年後、ブラックジャックを辞めてポーカーへ転職を試みました。ポーカーは対人ゲームなので、カジノから追い出されない。洋書の専門書で半年ほど勉強してからいざ勝負へ。初日からポーカーで稼げるようになれました。

ブラックジャックだと各カジノでルールが異なり、アメリカでしか勝てなかった。それに対しポーカーは、世界中で流行っている上に、ルールが世界共通。だからポーカーのプロは世界中どこへ行っても稼げる。

昔から世界視野が欲しかったし、世界で住みたい国を探したかった。なので、勝負で勝ったお金で旅し続けるのは、世界最高峰に楽しすぎる! なぜみんなは「こんな最高な旅できる仕事を選ばないのか、意味がわからないです(笑)」。

僕は観光ビザにて入国するので、国を転々とせざるを得ない。勝てる波が来るか来ないかで、稼げる金額は全然違うので「来月どこで何をしているかが常に一切不明」です。こっちが聞きたいくらい(笑)。

003. ギャンブルするからこそわかる、その国の真の姿

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ギャンブルしながら旅するからこそ、わかったことは何でしょうか?

Answer

ギャンブルしているときって、誰もが自分自身をさらけだします。相手がポーカーフェイスしていようが、プロは多くを読み抜けます。プレイや振る舞いからさらけ出された性格を読み取ることで、その国ごとの国民性が手に取るようにわかります。特に僕がやるポーカーは、相手の人格や思考レベル、考え方、性格などすべてを読み抜きますから。

また、カジノという共通のツールを使うことで、同じフィルターを通して世界を比較できます。世界各国ですることがバラバラだと、把握することが難しい。

ほとんどのカジノって、地元民に溶け込んでいるのです。観光地にあるわけではない。カジノを探し歩くだけで、日本人が通ったこともないオリジナルな旅になる。

例えばスロベニアとイタリアの国境にあるゴリラって街のカジノタウンとか、ガイドブックに町名すら載っていない旅先。たどり着くことすら、スリリング。そして、勝負しながら地元ギャンブラーと会話できる。

例えば、ヨーロッパのオーストリアのギャンブラーは勝負中の悪運にキレて、カードを破り出したのです。とんでもないマナー違反。カジノ内にはハエもいました。オーストリアはとてもいい国だけど、こういう一面もあるのだなって。

それに対して、オセアニアのオーストラリアの主要都市・シドニーやメルボルンの夏は、町中にハエが飛んでいるのに、カジノはものすごく清潔だなとか。

004. 旅とは『決められた時間を賭け、何を感じられるか?』

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旅とギャンブルの共通点は何でしょうか?

Answer

どちらも、お金と時間を賭けて、自分の目標を達成してくところです。先に必要な情報収集して、なにが得られそうかをイメージし、プラニングしていく。現地では行動力をフル活用し、臨機応変に瞬時選択して、目標達成率をあげてく。そして運というファクターも結果に反映してくるところも共通です。

旅の目標も「自分はなにを感じたいのか?」きっちり見据えてから旅することをお勧めします。目標なき勝負は、ポジティブ思考の人なら勝っても負けても「良かったよ」と自分へ言い聞かせて終える。それは単に自己肯定です。

プロギャンブラーの勝ち方とは、いま生じている事象を瞬時に数値で捕えていきます。勝率、賭け金、敵の思考回路と視点、軍資金とのバランスなど。

直感が来ても、『きっちり理論付けできる直感なのか?』を裏付けしていく。そして同じことを10回やったら一番利益性の出る最善策を導き出す。勝負に勝ちたければ、ギャンブルするな。つまり、プロギャンブラーはギャンブルしないです。

旅も同様です。僕は『地球の歩き方』をくまなく読んで、旅先の全体像を下調べします。「なにがそこにあるのか?」の情報を仕入れず、見たいシーンを素通りしたり、ありがちな詐欺や強盗にあったりしても、それは勉強不足で自分のミス。情報収集することで、自分のしたい旅の勝率を積み上げていくのです。

特にリスク管理が大切です。プロギャンブラーは運が悪いほうの部分をミニマム化し、勝率の低いとこを削ってくことで、最低勝率を底上げしてく。

旅はお遊びじゃない。『決められた時間と言う命を賭けて、何を感じれるか?』そんな自分との真剣勝負です。旅先での貴重な時間を真剣に費やしてく。こころで、身体で、全身全霊で旅先を感じるんです。

そこまでキッチリと旅のプラニングしても、旅にトラブルは付き物。不確定要素に満ち溢れています。毎日どころか、一歩一歩がドキドキワクワク。そして、リスク管理した情報があるから、危険ギリギリのところまで旅先を感じられるんです。ブラジルのリオに深夜到着してオールで遊んだり、移動中に終電が終わったから駅で寝たり。そういう情報判断がオリジナルな深い旅を生む。

愛する旅をし続けるためには、安全というリターンを追及しています。帰ってこそ旅。だからこそ、危ない目に遭ったことがない。その結果、15年間も旅し続けてしまったんです。(笑)

005. 『ハッピー思考』それが人生の勝ち

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世界のカジノに行っていて、感じることは何ですか?

Answer

海外の人たちは楽しむ思考回路を持っています。 ラスベガスのカジノに行ったら、叫び声が毎日のように聞こえてくる。「I got money!! I got money!! I got money!!」

すぐに人だかりができて、みんなで「How much?」って聞くんです。すると、振り向きざまにドヤ顔で 「20 dollar」。

はっ!! たった2000円?それでこんな大騒ぎ??(笑)。その人は、それまでに5万円負けているかもしれない。それなのに、30円で2000円だけ勝ったその瞬間のみへスポットを集中して大喜びする。日本人って細かすぎるんです。100円単位で勝ち負けを把握してる。

そうじゃない。まずは楽しむこと。それが人生の勝ちです。過去のイマイチな負け分など忘れ、小さなハッピーを大きなハッピーへしていく。ハッピーの拡大解釈。僕の命名ですけど、ポジティブ思考をはるかに超え行く思考スタイル 「ハッピー思考」。

日本人はもっと海外に出て、たった2000円勝っただけでも喜びを爆発させられる姿を見て学ぶべきです。そして、見たあとはそのハッピー思考を自分へ採り入れていく。ハッピーのカケラをおおげさに演じ続けてください。そしたら日本ってすごく楽しくていい国になります。

世界を15年も周り続け、住みたい国を探した旅バカが保証します。 「日本は最高な国だよ」と。「それはあなたのこころの持ち方しだいで感じられるよ」と。

【動画】TED風ギャンブラーのぶき【世界から学ぶ幸せのヒント@旅のから騒ぎ【Facebook】プロギャンブラーのぶきさんのfacebookフォローはこちらから!【著書】「勝率9割の選択」
プロギャンブラーのぶき/ProGambler Nobuki

15年間旅し続け、地球規模で6周、世界82ヶ国をさすらう。全荷物はバックパックひとつ。旅の資金繰りはすべて旅先でのカジノ勝負。カジノから追い出され続け、ブラックリストに載る。自己ベストの年間勝率9割は、ギャンブル界で「神の領域」と称されている。2014年には著書『勝率9割の選択』が重版され好評発売中。2015年6月は幻冬舎から旅本を出版予定。

TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。