世界で通用する「馬鹿」になるために、大切なコト

keisuke_matsushima_profile松嶋 啓介 シェフ20歳で渡仏。25歳の誕生日にニースに自身の店「Restaurant Kei's Passion」(現「KEISUKE MATSUSHIMA」)をオープン。3年後には、外国人シェフ最年少でミシュラン一つ星を獲得。その後、渋谷区にオープンした「Restaurant-I」(現「KEISUKE MATSUSHIMA」)でも一つ星を獲得する。2010年にはフランス政府より、日本人シェフとして初の「フランス芸術文化勲章」を授与される。

僕は20歳で日本を飛び出し、25歳には現在の店をオープンさせ、その3年後にはミシュランから外国人シェフとしては最年少で1つ星をいただいた。
20代そこそこの無名シェフが短時間で、しかもフランスという異国で評価を得ることができたのは、きっと数々の失敗を重ねながらも、ただ一心不乱に、愚直に挑戦し続けたからだと思っている。
これを「馬鹿」と言わずして、何と言うべきか。この馬鹿の能力を、僕なりにもっと肯定してみたい―ーそんな思いから、僕は雑誌連載やイベントというかたちでトークセッション「馬鹿塾」を発信してきた。
ここで紹介するのは、そんな「馬鹿塾の五訓」だ。

「馬鹿塾の五訓」

その一.
ひとり世界に立ち向かえる馬鹿者たれ。

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「ひとりで世界に立ち向かう」なんて、言葉だけ拾えば完全に馬鹿。でも、日本を一歩出たら、そんなこと言ってられないでしょう? 僕自身も経験したことだけれど、日本人が自分以外にいない場面では、自分が日本代表となる。世界に立ち向かわざる得なくなる。
それは大変なことでもあるんだけど、その馬鹿な自意識を持てればしめたもの。「日本ってどうなる?」なんて海外の人から聞かれるたびに、自国を俯瞰してみることができるし、それが癖になってくる。「俺って意外と日本のこと知らないな」と感じたり、「日本ってこんなにいいところがあったんだ!」という気づきをを得られたり。
これは学生でもビジネスマンでも同じ。世界に飛びなすなら、馬鹿になれ! そのほうが楽しいし、新たな発見があるはずだ。

その二.
無謀な挑戦を自ら買って出る馬鹿者たれ

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この訓戒の真意は「他人の声なんて気にするな」ということ。“無謀な挑戦”なんていうのは、あくまで他人が決めることであって、当事者からみれば、それは単なる“挑戦”でしかない。
挫折や失敗を恐れずに突っ走る人って、一見無謀に見えるけれど、その裏にちゃんと自信がある。その自信には、ちゃんと裏付けあるんだけど、他人には見えないだけ。
僕が出会ってきた多くの馬鹿者たちは、みんなそういった自信があった。傍からみると、めちゃくちゃなことをしているように見えて、本人たちは「自分ならやれる」という確信を持っている人ばかりだった。
僕自身、海外に出た時に無謀だとか言われた。でも、ゴールは見えているから、なにも怖くなかった。怖がらない馬鹿は、無謀なんじゃなくて、ちゃんと強い意思を持っているのだ。

その三.
どんな相手でも酒を酌み交わす馬鹿者たれ。

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自分だけの常識で生きていても、せいぜい知れている。それよりも他人の文化や言語に合わせてみることが大事だ。自分のフィールドではない場所に飛び込むことで、視野も思考も広がる。
なにも大袈裟なことじゃない。酒を酌み交わすだけでいい。そもそも一緒に酒を飲むっていうのは、底辺の話ができるっていうことに他ならない。失敗談もするだろうし、間抜けな発言もあるだろう。自分の殻を破って他人とコミュニケーションが取れるわけだ。
異なる常識や異文化に触れて、視座を上げるーーなんだか難しいことに感じるかもしれないが、とても簡単なのだ。

その四.
常に新しい物事を妄想する馬鹿者たれ。

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妄想という言葉には、ネガティブなイメージがつきまとう。でも、そうかな? 妄想するっていうことは、発想力を持って常におもしろいことを探している証拠じゃないかな?
妄想する力があれば、好奇心が湧いてくるし、いろいろなチャレンジができる。すると、自然と出会いが多くなり、また好奇心が湧いてくる。そんな良い循環が生まれる。
実際、僕がそうだ。僕は自分の職業とまったく関係ないコミュニティの友人が多い。彼らから日々、新しい栄養をもらって、生きている。
じつは生きるっていうことは、そういうことじゃないかって思う。決められた枠の中で生きるんじゃなくて、妄想を武器にどんどん外に出ていくことが、生きる楽しみなんじゃないかな。

その五.
根拠のない自信を貫ける馬鹿者たれ。

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例えば、ベンチャー企業のトップなんていうのは、こういった馬鹿者が多いように思う。根拠なんてなくても、自信に満ち溢れているタイプ。
でも、彼らはちゃんと裏で勉強をしているし、なによりも修正能力が高い。とりあえずやってみて、駄目だって気づいた瞬間に軌道修正ができる。ちゃんと思いとか目標とかがあって、その上で行動している。ゴールが見えているから、ただの自信過剰じゃないんだ。その過程での擦り傷なんて、馬鹿者は気にしない。たとえ骨折しても、そのまま歩き出す。
最初から、完全な計画なんて立てられるわけがない。ビジネスでもなんでも、自分の物差しではかれないからこそ、馬鹿者になって、走りながら考えればいいんだ。

 

TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。