欧米で「木造」高層タワーの建設ラッシュがはじまった
近年、欧米では環境持続性の観点から木造建築が見直されているといいます。温暖化防止のひとつの策として、鉄筋コンクリート(RC造)から木造化へという動きも。でもこれ、一般家屋や低層階の集合住宅に限った話ではないんです。なぜなら、高層ビルまで木造だっていうんだから。
木材でも高層ビルが建つ!?
高層ビルの建材に「木材」を使用する。これまで現実不可能に思えた工法に、いま世界の建築業界が熱視線を注いでいます。
実のところ、すでに欧州では地上高30mを超える木造タワーが建ちはじめ、「鉄筋コンクリートから木材へ」の流れは着実にパラダイムシフトを生み、いよいよこれを高層化させる取り組みが現実のものに、というのが正確なところ。
コンクリートに匹敵する強度
集合素材「CLT」
これを可能にしたのが、1990年代のオーストリアで開発された集合素材「CLT(クロス・ラミネイティッド・ティンバー)」。ざっくり言えば、板の層を張り合わせた厚型パネルです。
従来の集合材が繊維を並行にしていたのに対し、CLTは繊維方向が直交。これがコンクリートに匹敵する強度と、柱や梁にも使える厚み、耐久性も格段にUPでき、そして軽い。木造高層タワーの実現は、このCLTなくしてありなかったわけです。
「木造高層タワー」が、
都市建築のスタンダードになる
欧州各国でCLTを用いた高層タワー計画がつぎつぎと発表されるのも、決して絵空事ではありません。
たとえば、今年ケンブリッジ大学と2つの建築デザイン事務所による共同チームが、ロンドンのバービガン・エステートに地上80階、高さ300mの木造ビルの建築計画を市に提案。
再生可能な資材を用いるメリットだけでなく、コストを抑え、鉄筋コンクリート造の約1/4の重量で仕上がる試算から、「社交的で創造的な21世紀の都市型生活のベースになる」と自信をのぞかせています。
また、アムステルダムでも、2017年4月より21階建の木造マンションが建設予定。シカゴでも再開発中のリバーサイドに木造タワーのプロジェクトが進行中だそう。
省エネ設計の
木造マンションも
こちらはバンクーバーのブリティッシュコロンビア大学内に現在建設中の学生寮。地上18階建て。床、梁、壁にCLTを全面に活用し、ツーバイフォー(2×4)形式でパネルをはめ込んでいく様子がうかがえます。
そうそう、CLTは熱にも強い。もともと木は鉄筋やコンクリートと比べても断熱性に優れているんだとか。こうした特性を生かした省エネ設計が、21世紀型の都市構造の基盤をなす。RC構造に取ってかわる日は近いのかもしれませんね。