オーガニックの果てにあった「生きた泥」をLAで一杯

健康のために、変わったモノを摂取するブームは、昔から話に事欠かない。日本が誇るレジェンド・オーガニックドリンク「青汁」。様々な「酢」を飲むブーム。昨今では青臭さにシトラスが混じったようなテイストのものが、LAやNYの街角で販売されている。

また、お世辞にもおいしいとは言えないホームメイドの野菜ジュースのようなものが、おしゃれな包装をされて8ドルを下回らない。

これら不可解な味のフレッシュジュースも、ビギナーは柑橘系のいわゆる搾りたてジュースからはじまり、段々とセロリやキューカムバーが入った変わり種へと到達する。ジンジャーや、ターメリック、ガーリックのショットが、スターバックスよろしく並ぶ。そして、たどりついたもののひとつが「泥」だった。

ごくり。ショットグラスで提供される「泥」を一気飲み。

90年代は治安の悪さから歩けないと言われていた、LAのファッションディストリクトから少し離れたところにある「THE SPRINGS」。ここで提供されるリビング・クレイは、ショットグラスで出てくる。

「リビング・クレイ、ワンショットプリーズ!」

が、正しいオーダーの仕方だろうか。店員も、あまりクレイのことをおいしいとは思っていない。どんな味がするのか、という問いに「No Tastes(味なんてない)」とひと言。ぐびっと飲み干せと、からかわれる。

試しになめてみると、想像以上に泥だ。泥を飲んだことがある人は少ないだろうが、明らかにそれは泥だとわかる。目隠しされて、情報を与えられないままに飲んでも、おそらく泥だと思えるだろう。味は無い。においも無い。砂のざらっとした感触がある。これを、スコッチのように一気にのどに流し込む。

おいしい、わけがない。

泥が「生きている」とは?

リビング・クレイ、直訳すると「生きている泥」になるが、もちろん泥自体が生きているのではなく、泥に含まれる微生物のことを指している。この「THE SPRINGS」では、泥自体の有用性よりも、微生物を飲むことによって胃腸をはじめとした、体の調子を良くすることを売りにしているという。

実際、この泥を渡米後すぐに飲むことによって、ジェットラグで調子を狂わせていた僕の胃腸が動き出したのは確かだ。睡眠不足でたまる不快なガスが頻繁に排出されるようになり、滞在中のトイレ事情が安心になる。

店員によれば、1週間に1度くらい飲用するのがベストだそうだ。

「THE SPRINGS」も、とくにリビング・クレイが飲用できることで有名なわけではなく、ファッションディストリクト、ダウンタウンからほど近い立地で、キッチン&ジュースバーと、ヨガなどのフィットネスを融合しているのが特徴的。倉庫をリノベーションした居心地のいい空間で、たとえ泥を飲むずとも健康になれそうだ。

LAに行ったらカフェ巡りも楽しいが、ウェルネス系を攻めてみるのもなかなかいい。

Photo by 稲垣正倫
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。