スウェーデン×東京。「ONIBUS」のコーヒーカッピングへ。
世界で1番コーヒーがよく飲まれていると言われる「北欧」。私の住むシアトルは、冬場は朝9時過ぎにやっと明るくなったかと思うと夕方4時には暗くなるのですが、北欧の冬はその上を行く暗黒だと聞いていました。なんでも上には上がいるものです。そりゃコーヒー飲まないとやってられないよね、北欧の住人たちよ。
そういう気候だとコーヒーがよりおいしく感じるのかもしれません。現に私はシアトルの冬、雨が降るグレーな日に飲む熱いコーヒーが大好きです。そんなチラチラ気になっていた北欧のデンマーク、スウェーデン、フィンランドへコーヒーの旅に2年ほど前に行って来ました。
北欧はシアトルで飲まれている濃いめのコーヒーとは違い、フルーティな香りのする軽めのコーヒーが好まれていました。それもまたおいしくって。
また行きたいなと思いつつ、なかなか行けずにいたら、なんと向こうから来てくれました。スウェーデンのロースター「Koppi」が来日して、東京の「ONIBUS COFFEE」と一緒にカッピング・トークセッションをするというじゃないですか。
ONIBUSは
「公共バス」という意味
ずっと気になっていた「ONIBUS COFFEE」。そのオーナーでバリスタでもある坂尾篤史さんに先月初めてお会いする機会がありました。「ONIBUS」という名前はポルトガル語で「公共バス」という意味で、人と人を繋ぎたいという想いで名付けたと伺い、ブラジルの人々の温かさに触れてきたばかりの私は、その命名理由でさっそく心を掴まれました。
そして、どうやって数年でこんなに世界中から人がやってくるカフェに成長したのかを私がズケズケと質問しまくると、坂尾さんが穏やかにお話を聞かせてくれました。その語り口からは、生産者、バリスタ、そして日々我々が口にする物への理解や透明性を大切にする坂尾さんの強い想いがありました。
大切なのは、下を向いて
グラム数を計ることじゃない。
そしてKoppiは、2007年にスウェーデンでAnne LunellさんとCharles Nystrandさんがオープンしたカフェ。なんとふたりともスウェーデンの歴代バリスタ・チャンピオン。会うと本当に優しい雰囲気で、とにかくおいしいコーヒーをたくさんの人に届けたいという思いと信念を持ってやっていたら、お店が有名になっていったのだとか。
Charlesさんは、こう話してくれました。
「バリスタは良いコーヒーを淹れるために、正確なグラム数を計るのに下を向いて一生懸命になりがちだけど、お客さんにとって少しのグラム数の違いは重要なことじゃないんです。お客さんにとって大切なのは、バリスタが笑顔で挨拶してくれたり、話してくれたりとか、おいしいコーヒーを良い気持ちで飲むことなんです」
そういう、人と人との関わりを1番に考えるフィロソフィーを持っているのが「Koppi」のおふたりなんです。
みなさんの話を聞きながら、この2つのロースターが国も言語も人種も超えて、同じ方向を向き、同じ想いと、人との繋がりを大切にする心を持って進んでいる人たちだと感じて、こっそりウルウルしていたことは…内緒です。
そんな、同じ波長と雰囲気を持つ2つのロースターのコーヒーカッピングが開始。いい予感しかしません。約50名くらいの参加がありました。
カッピングはスプーンを持って「ジュルッ」と淹れたてのコーヒーを吸い込んで風味を評価するんですが、こんなにたくさんの人とカッピングするのは初めてです。私のような素人からカッピング用のノートを持ったプロの人までいて、それもまたコーヒー好きを分け隔てなく繋いでいる感じがして好きでした。
カッピングの仕方を初めての人でもわかるように坂尾さんが説明しながら、参加者に味の感想を聞いていきます。どのコーヒーも飲みやすくフルーティな味わいでした。私の鈍感な舌ではあまりわからなかったんですが、ひと口にフルーティと言っても白桃や林檎など、コーヒー豆によって色んなフルーツの味が感じられるそうです。
まるで友人を紹介するみたいに
コーヒー豆を語る
最後にとても印象的だったことがあります。
ONIBUSの方もKoppiの方も、カッピングで使用した何種類もあるコーヒー豆を紹介するとき、まるで親しい友人を紹介するかのように、そのコーヒー農家さんの名前、農園はどんな場所にあって、どんな種類のコーヒーで、どんな味がするのか、をスラスラと話すのです。
彼らにとって、自分たちの豆を仕入れている農園は、まさに親しい友だちであり仲間なんだと感じました。誰が・どこで・どうやって・どんな想いで育てたのかまで知っているからこそ、そのコーヒーの持つ最大の味を引き出しているのが、この人たちの素晴らしいところなんだな、と。
最近は歳なのか、こういう純粋な情熱を感じるとすぐにじんわりと涙が出てきてしまうのですが、それはトークを聞きながら、コーヒーをズズっとすすって隠しました。