Amazonの新たなインフルエンサー・マーケティングが見せる未来は、明るい?それとも…

今や誰でも一夜、時には一瞬にして有名人になれる時代。ユーチューバーや人気ブロガー、読者モデル、ネットアイドル、ツイッタラー…顔を出そうが出さまいが、そこらじゅう、様々なジャンルに「インフルエンサー」があふれる世界がやってきました。

「Inc.」に寄稿されたNicolas Coleさんの記事によると、これを利用してAmazonは新しい事業分野に足を踏み出そうとしているのだとか。

Amazonがひっそりと検討している新たなプランは、今までのものより遥かにターゲットを絞った、そしてよりよく機能するバージョンの商法。これはインフルエンサーに特化して設計されたもので、彼らを巧みに活用して物を売る、「インフルエンサー・マーケティング」の新形態だ。

これを利用すればインフルエンサーもAmazonもお互いWin-Winの関係になるというのですが、果たして?

インフルエンサーの悩みは
「影響力」でどうお金を稼ぐか

有名人になったら「自分の影響力を利用してお金を稼げないか」と多くの人が考えるはず。例えばあなたのTwitterにフォロワーが100万人いたら、かなりパワフルなインフルエンサー。何処かの会社に頼まれて、「このドリンク、美味しいし健康にいいし最高。毎日飲んでます」などど呟いてリンクを貼ればお金をもらえたりもします。

今の時代、パワフルなインフルエンサーが直面する一番大きな問題は、自らの影響力でどのようにお金を稼ぐか、ということだ。

そしてあるインフルエンサーは会社と契約して商品を自分のファンに勧めたり、またある人は自ら起業してブランドや製品をつくるようになります。前者はユーチューバー、後者は読者モデルなどをイメージすればわかりやすいかもしれません。

でも、そこにはリスクや手間がいつもつきまといます。自分で契約を確保しないといけないし、失敗する危険や、商品開発のお金も問題。実はこれがAmazonが目をつけた点なのだそう。

Amazonでお店を持てば
リスクを背負う必要がない

Amazonは以前から人気ブロガーのWEBサイトなどに宣伝やリンク、商品紹介を置き、そこからリンクを踏んで買い物をした顧客の売り上げの数パーセントをブロガーたちに還元するというビジネスをしてきました。それをよりインフルエンサーに特化したものとして、彼らにAmazonストアを与えることを検討中なのだとか。

つまり、Amazonと契約したインフルエンサーはオンライン上でAmazonストアを持ち、大きなリスクも無く簡単に自分のセレクトショップを開くことができるということ。

彼らは他のインフルエンサーがしなきゃならないような、自分の店やWEBサイトを始めるとか、自分の製品を作るとかいう手間を全て省くことができる。

そしてインフルエンサーの支持者たちはオンラインで彼らのおすすめの製品をチェックし、自由に買い物をします。その売り上げの一部をインフルエンサーが受け取れるというわけです。

欲しいのは、お金?安全?

ただし、やはり世の中、美味しいだけの話なんてそうそうありません。この契約をしたインフルエンサーは、売り上げの大部分をAmazonに渡すことになります。自身に返ってくる稼ぎはほんの数パーセントというのもあり得ます。

とはいえ、起業して失敗するリスクや手間、ショップを始めるまでのお金を考えれば、安心・安全からこのプランを選ぶインフルエンサーの数も多くなることは間違いないでしょう。

契約するインフルエンサーは、売り上げの大半を犠牲にすることで、あらゆるリスクから逃れられるのだ。

リスクを冒して全ての利益を手に入れるか、安全をとって一定の搾取を甘受するか、なのです。

「信用できる人」から勧めさせ
確実な収益アップを狙う

ところで、どうしてAmazonはインフルエンサーに目をつけたのでしょう?Nicolasさんはこのように分析しています。

Amazonはリンクバックや広告収入による収益で一定の成果を得た。そのため、この新しい取り組みは論理的に言っても妥当な第2のステップと言える。しかし大切なのは、もっと大きなポイントが今までのビジネスで浮き彫りになったということだ。

そしてこの、もっと大きなポイントというのが人は信用できる人の言葉を受けてものを買う」ということ。

一見当たり前のことに思えるかもしれませんが、逆にいえば、Amazonが自身の製品やサービスを広告を出してわざわざ勧めなくても、インフルエンサーにショップを開かせればある程度確実に物が売れるということなのです。インフルエンサーは、言うなれば生きたブランドであり、広告。ファン層もはっきりしている分ターゲットも絞りやすいので、時にはそれ以上の力を持って自分の支持者の購買意欲を左右します。そのパワーを最大限利用するのが検討中のこのプランなのです。

あなたも気づかないうちに
支配される日がくるかも?

このプランはあくまでまだ検討段階だが、どのように花開いていくのかは大いに注目に値する。

とNicolasさんは言います。

そのうち、自分は「信用できる人が勧めてる」ものを、心からいいなと思って自分の意思で買ってるように思っていても、裏では企業がその「インフルエンサー」を操作して需要を調整している…という未来もあり得るかもしれませんね。SNSなどで消費者間の交流が激しくなって、「口コミ」の影響力がどんどん大きくなってきた今の時代を逆手に取った巧みな発想と言えるでしょう。

この強大なパワーを企業はどう利用していくのか、そしてその果てにはどんな変化が待ち受けているのか。SFみたいな本当の話にゾッとしつつも胸が躍ります。

Licensed material used with permission by Nicolas Cole
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。