【大国のパラダイムシフト】いま中国の若者は、「農村」に未来を描いている
都会に住むおしゃれな人たちだけが発信する時代はもう終わり?
いま、中国では農村を舞台に活躍するインフルエンサーが熱い注目を集めている。彼らが発信するのは、飾らない農村の日常や、自然と共存する丁寧な暮らし。どこか懐かしく、そして新しい世界観に多くの若者が共感を寄せている。
「素朴な暮らし」が億越え再生!
農村系インフルエンサー旋風
農村に暮らすインフルエンサー急増のニュースを報じたのは、メディア「The Conversation」。彼らは、「Douyin」や「Weibo」などのプラットフォームを通して、農作業風景や伝統料理、手作りの工芸品といった、ありのままの農村の暮らしを発信し、人気を集めているという。
たとえば、2300万人以上のフォロワーを持つSister Yuは、中国東北部の農村で暮らす女性。野菜を漬けたり、温かい家庭料理を作ったりする様子を配信し、多くのファンを獲得している。また、福建省に住む農家のPeng_Chuanmingは、伝統的なお茶の製法や、築100年の家を自ら改修する様子を発信し、人気を博している。
なぜ、農村が再注目されているのか?
農村系インフルエンサーの台頭は、単なる一過性のブームではない。そこには、現代中国が抱える社会問題や、人々の価値観の変容が色濃く反映されている。
同記事によると、中国の農村世帯の平均年間可処分所得は、都市部の約40%に留まっており、都市部との経済格差は深刻だ。いっぽう、都市部では経済発展のひずみとも言える競争社会の激化や、物質主義的な価値観に疲弊する若者が増加。行き過ぎた資本主義への反動として、人間本来のあり方や、自然との調和を求める動きが強まっている。
農村系インフルエンサーが体現するスローライフや、素朴な暮らしは、そんな現代人の疲弊した心に癒しを与え、新たな価値観を提供していると言えるのかもしれない。
中国政府も後押し
「農村振興戦略」の切り札
興味深いのは、中国政府がこの動きを積極的に後押ししている点。習近平国家主席が掲げる「農村振興戦略」では、農村地域の経済活性化と生活水準の向上が国家的な重要課題として位置づけられている。農村系インフルエンサーは、農産物のオンライン販売や、観光客誘致による経済効果が期待できる存在として、政府からも熱い視線が注がれている。
事実、農村地域のeコマースプラットフォーム「淘宝村(Taobao Villages)」の売上高は、2020年には1693億6000万ドル(1兆2000億円)に達しており、農村経済の潜在力は計り知れない。
インフルエンサーが繋ぐ
都市と農村の未来
農村系インフルエンサーの活動は、単に美しい農村の風景を映し出すことだけが目的ではない。情報発信を通じて都市部と農村部の橋渡しとなり、経済格差や文化の違いを超えた相互理解を促進する役割を担っているのではないだろうか。さらに、伝統文化の継承や、環境問題への意識向上など、現代社会が直面するさまざまな課題に対する新たな視点を提示している点も見逃せない。
もちろん、インフルエンサーによる情報発信には、美化や誇張といった側面があることも否めない。しかし、彼らの活動が農村の現状や魅力を多くの人に知らしめ、都市と農村が共存する未来を創造する可能性を秘めていることは間違いないだろう。
あなたは、農村系インフルエンサーの活動を見て、どんな未来を描く?
👀GenZ's Eye👀
農村の人からすると何気ない日常が、都市生活者の心を癒やしていたり、億単位のお金を生み出しているなんて、想像もつかない話だろう。
インフルエンサーたちは農村の外に向けて発信をしているけど、彼らの発信によって地元民がこれまで気が付かなかった、その土地の魅力や可能性に気がつくこともできそう。経済的にも、精神的にも、“内”への還元があることを願います!