ひとりの青年のアイデアが難民たちの「暮らし」に安心をもたらした
気象の変動が激しいサハラ砂漠では、意外にも豪雨が続くことも多いそうです。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の報告では、この水害により難民キャンプ用に設置された仮設住居が崩壊した例も少なくないそうです。
こうした環境のなか、被害が一番少なかった住居が何で建てられていたと思いますか?この話を聞いたとき、『三匹の子ぶた』を思い出しました。童話のなかで三男の建てたレンガの家よりも、現実世界でさらに強かった素材。難民たちを最後まで守ったのは、テントでもレンガでもなく、私たちの身近にあるモノ。
あらゆる災害に強い素材は
意外なモノだった。
写真の青年は、アルジェリア出身のTateh Lehbib Breicaさん。大学生の頃に再生可能エネルギーに関して学んでいて、いつかその経験を活かしたいと思っていたそうです。
そんな折、彼のおばあちゃんが砂嵐の被害にあって大怪我。事なきを得たそうですが、嵐から祖母の命を守るため、彼は「ペットボトルハウス」を建てたそうです。
ペットボトルが建築資材という意外性、詳しく見て行きましょう。
これまで、難民キャンプの建物は、泥やセメントで固めたレンガの家で造られたものがほとんど。ただ、長期的に降る雨に耐えきれず、その多くは崩壊していったそうです。そこで Breicaさんのアイデア。耐水性のあるペットボトルは、そういった問題を解決へと導きました。
「埋め立てる」替わりに、
「埋め込む」というアイデア
彼が目をつけたのは、すべてはゴミとして捨てられたもの。本来ならばそのまま埋め立てられる予定のペットボトルにワラと砂を詰めて強度を持たせ、1つずつ並べてセメントで塗り固めていきます。円形に積み重ねていくこの設計も暴風の抵抗を最小限に抑える工夫です。
何百年たっても分解されないというプラスチックのネガティブな特性を逆手にとって、耐久性にすぐれた家に仕上げる。Breicaさんのアイデアは、5つの難民キャンプで計25個のペットボトルハウス建築に役立てられているそうです。
雨風に強いだけでなくゴミ問題の改善につながる、一人の青年の発想があらゆる面で難民たちを救っているというストーリーを紹介しました。