オーストラリアのBBQ文化が、想像を超える奥深さだった。

「国民的な食べ物」について、オーストラリア人のフラットメイトに尋ねたことがあります。答えは「間違いなくバーベキューね!」というもの。意外すぎて「えっ?」と拍子抜けしてしまったのを覚えています。

ちなみにオーストラリアでは、バーベキューのことをバービー(Barbie)と言うのですが、このコラムには、バービーに対する彼らの並々ならぬ思いが凝縮されています。少し長いけれど、特有の文化がたくさん織り交ぜられているので、楽しんで読めること間違いなし。

人生の一部であり魂

バービーほどオーストラリアを代表するものはない。今まで旅してきた中で、オーストラリア人ほどバーベキューを楽しむ文化はなかった。バービーに向いた天候、くだけた文化、フレンドリーな国民性が理由としてあげられる。オーストラリア人のライフスタイルの一部であり、国中がバービーを楽しんでいる。金持ち、貧乏なんて関係なく、本当に誰もが。

ここで彼らのバービーガイドについて説明しようと思う。運よくどこかで招待された時のために、振る舞い方も一緒に。

一般的なバービーの流れは以下の通り。

1. ビールをGET
2. バービーを始める
3. 肉を焼く
4. サラダをGET(任意)
5. 飲んで、焼いて、食べてを繰り返す

そう、たったこれだけ。

「バービー」を味わうと
バーベキューには戻れない

ビールがなければバービーは成り立たない。不運なことに、このサイトのライターのひとりは過去に一度、仕事関係でカナダ人が計画した「バーベキュー」に招待されたそう。しばらくバービーに行っていなかった彼は、この機会をとても楽しみにしていた。

が、残念なことにそのカナダ人たちはアルコール無しのバーベキューを至極当然の事だと思っていたようで。彼が激怒したのも当然のこと。こんなことオーストラリアでは絶対にあり得ないのだから。

さらに言うと、そのカナダ人たちはバーベキューに肉が無くても良いと思い、肉の代わりとなるものを用意していたんだとか。つまり、この「カナダ流バーベキュー」では社員が偽物の肉を囲み、カナダでいう「ポップ」(ソフトドリンクの総称)を飲んでいたそうだ。

このような社内イベントをオーストラリアで開いたら、社員に対する冒涜だとみなされて逆効果になるだろう。

持ち込む場所によって
ビールを変える

話をビールに戻そう。オーストラリア人は昔からバービーでラガーを飲む。どのラガービールを選ぶかは住んでいる地域によって変わる。クイーンズランド州のスローター・フォールズ(Slaughter Falls)で行われているバービーでは「XXXX」ビールが何箱もあるのを目にするだろう(もちろんクーラーボックスに入っているだろう)。

でも、シドニーのクッジーでは「Toohey’s New」を見ることの方が多いだろう。どこへ行っても波風立てたくなければ「VB」をオススメする。文句を言う人はそんなにいないはずだ。

公共のバーベキューコンロは
無料で使える

次はバービー(バーベキューコンロ)について。オーストラリアの素晴らしいところは、そこらじゅうにバービーがあること。公園やビーチ、キャンプ場にまで。そのほとんどは公共のもの。まるでバービーに飢えているオーストラリア人のためにあるようだ。炭火を使うものもあり、その場合は自分で火をおこさなければならない。

多くのバービーは無料、もしくは数ドルで使えるガスのもの。また、ほとんどの家庭は専用のコンロを持っていて、友達を招待しておこなう。広いスペース、美しい景色、そして良好な天候があるのだからバービーはもってこいだ。オーストラリアにパブ文化が広まっていない原因かも。家で友人とソーセージを焼きながら楽しい時間を過ごしていれば十分だからだろう。

バービーに話を戻す。

世界の中には土がついているような不潔な調理場所を嫌う文化がある。何年間も放っておいたような、錆びて油まみれでばい菌がわいているような道具も使わないだろう。が、そんな考えはオーストラリアにはない。

バービーの第一歩は掃除と殺菌。一般的な方法だとまず汚れを落として、古い油をなくすためにとにかくバービーを熱くする。洗浄液の代わりにビールが使われることもある。

トングを渡されたら
気をつけろ!

家事に関して、オーストラリア人の男性は一般的に怠け者。料理や掃除は女性に任せっきりだ。彼らにエプロンを着せて料理をするよう促した日には、手が飛んでくるかもしれない。

でもバービーになれば、彼らは皮肉にもエプロンをして、キッチンで料理だってする。

バービーで料理をするのは必ず男性。女性はサラダ担当。それが常識。バービーで肉を焼くというのは男性の誇りなのだ。初心者から見れば、熱した鉄板に肉をたたきつけて黒くなるまで待つだけに見えるかもしれない。でも実は、とても繊細で高い技術が必要な“アート”なのだ。

彼らは料理中にバービーを取り囲んでビールを飲み、焼き方について具体的なアドバイスを交わし合う。料理をしている人が、カチンとくればその相手にトングを渡す、なんてことも。それはまさに、脱いだ手袋でその人の顔を叩くのと同じくらい攻撃的な行動だ。トングを渡された人は、返答に慎重にならなければならない。トングを受け取るということは、最高の料理をするということ、そして誰かに渡さない限りはバービーを見届ける覚悟があるということだから。君がまだ若ければ、自信がない限りトングを丁重に断ることをオススメする。

このような事があるため、3~4人の男性が1回のバービーに関わるということはよくある。

玉ねぎは
「優秀な引き立て役」

基本に戻ってしまうが、玉ねぎはバービーではとても重要。たくさん用意した方がいい。焼くと玉ねぎは信じられないくらい少なくなってしまうから。みんな食べるしね。もし女性陣がサラダを作っているとしたらきっと玉ねぎを切ってくれるだろう。が、自分で切らなければいけなくっても、涙を流すだけの価値はある。

玉ねぎは一番時間がかかるので最初に焼くこと。焼けたら鉄板からおろして、最後にもう一度熱を通してもいい。そこは個人の自由。真っ黒な玉ねぎが好きな人もいるが、バービーの達人は受けつけないだろう。

玉ねぎ、ステーキ、串焼き、鶏肉、何を焼いていようと役に立つコツが一つある。ビールをかけるということ。バービーを囲む男は皆、必ず食べ物にビールをこぼすもの。このコツであれば、料理している人にも失礼はないだろう。

みんなに愛されるソーセージ
その魅力は奥深い

玉ねぎがある程度できたら、ソーセージの番。ソーセージの数を数える時、バービーとは何時間もビールを飲み続けるイベントであることを忘れずに。つまり、バービーが終わった後でもソーセージを食べる必要があるということ。料理をしている最中や食後にみんながつまむだろう。もちろん子どもたちも。

コスパがいいのもソーセージの魅力。玉ねぎと同じで多ければ多いほど良い。また、ソーセージには料理する人のスタイルが出る。一気に焼こうとする人は初心者であると経験者にはバレてしまうもの。

出来上がったらステーキやチョップを投入しよう。これまでに比べて焼くのに時間はかからないが、ここまでくればもう本物のオーストラリアバービーをたらふく味わっていることだろう。

Licensed material used with permission by AustralianBeers
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