異文化からのインスパイアに潜む「文化盗用」とは?

日本の文化を愛する外国人が浴衣を着てくれていたら、多くの日本人は「日本の文化を愛してくれてありがとう」「日本の文化を広めてくれてありがとう」となんだか誇らしい気持ちになるものです。

しかし、ときに外国文化の触れ方やインスパイアのされ方を間違うと、大きなトラブルにつながることがあります。

そのトラブルというのが「文化の盗用」です。

そしてこれは、決してビジネスの世界だけの話ではなく、すぐ身近に潜んでいる問題。この記事では、「文化の盗用」の意味や事例を紹介していきます。

「文化の盗用」とは?

「文化の盗用」は文化的盗用と表現されることもあり、英語ではCultural Apropriation(カルチュアルアプロプリエーション)と呼ばれています。Cambrigde Dictionaryでは、Cultural Apropriationについて以下のように定義しています。

the act of taking or using things from a culture that is not your own, especially without showing that you understand or respect this culture

これを訳すと「文化の盗用」とは、他の文化圏のについてよく理解せず、敬意を示さないで、その要素を流用する行為のこと。自分の文化ではない髪型、衣服、話し方、運動の種類(たとえば、ヨガ)などを採用したときに起こる場合もあります。特にそれを商業化したときにおきることが多いようです。

「文化の盗用」の線引きは?

では、海外で現地の方が寿司屋を開き、日本の寿司にインスパイアされて、日本では販売されていないようなオリジナルの寿司を販売することは文化の盗用であるといえるのでしょうか?

その答えは、「盗用される国の捉え方次第」であると考えられます。海外に行ってみると、日本人からしたらびっくりするような寿司も販売されていますが、日本人はこれを「文化の盗用」であると大きく問題視していないようです。しかし、当事国は「文化の盗用」であると認識していなくても、直接関係はない国々から避難を集め、問題となる場合もあるようです。

また、「盗用される国の捉え方」には、盗用する国と盗用される国の歴史や政治が影響します。植民地になったり差別を受けていたりした歴史がある場合や政治的に不安定な状況にある国家間の場合によく起こるようです。

よくある「文化の盗用」の事例は、「ファッションブランドがある国の文化を盗用した」という構図。ただ、「文化の盗用」はVSビジネスだけでなく、VS個人でも起こりうります。SNSの発展によって誰しもが、不特定多数に対して自分を表現できるようになりました。欧米圏の白人女性がプロムでチャイナドレスを着てSNSにアップしたところ、「文化の盗用」であると大きな非難を浴びた事例があります。一個人も「文化の盗用」を意識しなくてはならない時代なのです。

「文化の盗用」が問題になった事例

下着ブランド「KIMONO」

2019年夏、米のセレブタレント、キム・カーダシアンが立ち上げた下着ブランドが「文化の盗用」にあたるという理由で炎上した。その理由は、下着ブランドの名前が「KIMONO」で、そしてそれを商標申請しようとしていたから。

これに対して、日本では着物デザイナーなどを中心に非難の声が集まりました。その後、日本の伝統的な着物という言葉を下着ブランドの名前に使うべきでないと署名活動が開始。その結果、キム・カーダシアンはブランド名の「KIMONO」を変更し、商標申請も放棄しました。彼女の下着ブランドは、新しい名前「SKIMS」となって現在人気を集めているようです。

米・野球チーム「クリーブランドインディアンス」

2019年シーズンから、アメリカの野球チーム・クリーブランド・インディアンスは球団ロゴの使用を中止しました。その理由は先住民族であるネイティブアメリカンをモチーフにした球団ロゴが「文化の盗用」に当たるのではないかと非難を受けていたから。現在は、チーム名の頭文字「C」をモチーフにしたロゴがチームのユニフォームには付けられています。また、現在チーム名の変更についても検討されているようです。

まとめ

異文化触れるということは、ポジティブな側面がある一方、ネガティブな側面もあります。ビジネスにおいては、大きなトラブルに発展する可能性も。いつだって忘れてはいけないことは、異文化に対してしっかりと敬意を持つことなのです。

Top image: © iStock.com/Satoshi-K

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