人間のための「巣」をつくり続けて40余年。
「なんで巣が好きか?さぁ、気づいた時には好きだった。鳥の巣を見つけると、なんだかハッピーになるだろう。そんな感じさ」。
“人間の巣”をつくり続ける職人、Jayson Fann。
制作へと突き動かすのは、いつでもシンプルな「好き」らしい。その衝動を抑えきれなくなったのは、小学生のとき。
クローゼットの扉を全部取り外して、ふかふかの布団を敷き詰め、巣に見立てて寝床にした。それだけじゃ満足できなくなり、家のありとあらゆるモノを使っては、鳥の巣を再現することに夢中になっていた。
美術や音楽といったアート志向の強い両親のもとで育ったわけでもない、けれど巣を見た時から、彼の人生は一転してしまったワケだ。
胸いっぱいの「好き」を
ただ抱いて生きる。
風を感じて、光を浴びて、「巣の中にいると魂が蘇ってくる」。そう語る彼の作品は、いつからかアートとしても、遊び場としても、広く注目されるようになっていた。
彼の“至福スペース”はオーダーされるようになり、これまでアメリカ国内でつくってきた巣の数は、じつに50以上。カリフォルニア州には『Big Sur Spirit Garden』と呼ばれる、彼のつくった様々な巣が販売されている場所もある。
使っている木材は、すべてユーカリの木。成長速度が早く、増えすぎてしまわないように、カリフォルニア沿岸の自生しているものを伐採してきている。
これをカットして形を整え、パズルのように組み立ててひとつの巣をつくりあげていくそうだ。製作にかかる時間は約1ヶ月。時には先生になりながら、子ども達と一緒に自然学習を行なっている。
気づいたら、仕事になってたんだよ(笑)。
好きだけでは食べていけない。というセリフをよく聞くけれど、本気で“遊び”を極めたら、仕事に変わっていくものだ。
今や「巣の職人」として名を轟かせ、彼の生き方や哲学は、人の心を育み続けている。